近年の物流現場や製造工場で、ロボットの導入が急速に進んでいます。「AMRロボット」という言葉を耳にする機会も増えましたが、「従来のAGVと何が違うの?」「協働ロボットとはどう使い分けるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、AMRロボットの基本的な特徴から、特に混同されやすいAGVや協働ロボットとの違いを、分かりやすく解説します。
1. AMRロボット(自律走行搬送ロボット)とは?
AMRは「Autonomous Mobile Robot」の頭文字をとった言葉で、日本語では「自律走行搬送ロボット」と訳されます。
最大の特徴は、「自律的に判断し、行動する能力」を持っていることです。AMRは、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術を用いて、周囲の環境をリアルタイムで認識し、自己位置を把握します。これにより、あらかじめ設定されたルートがなくても、人や障害物を避けながら最適なルートを自ら判断して走行することができます。
工場や倉庫内を自在に動き回り、部品や資材、製品の搬送作業を担うことが主な役割です。
2. 従来の搬送ロボット「AGV」との決定的な違い
AMRと最も比較されるのが、「Automated Guided Vehicle」の略であるAGV(無人搬送車)です。同じ「モノを運ぶ」という目的を持つ両者ですが、その仕組みには大きな違いがあります。
項目
■AMR(自律走行搬送ロボット)
■AGV(無人搬送車)
走行方法
自律走行:内蔵されたセンサーで周囲を認識し、自分でルートを判断して走行。
誘導走行:床に貼られた磁気テープやレール、QRコードなどの「ガイド」に沿って走行。
ルート変更
ソフトウェア上で目的地を変更するだけで、柔軟なルート変更が可能。
ガイドを張り替えたり、物理的な工事が必要。ルート変更に手間とコストがかかる。
障害物対応
人やフォークリフトなどの障害物を検知すると、自動で回避ルートを再構築して走行を継続。
障害物を検知するとその場で停止し、障害物が取り除かれるまで動かない。
導入コスト
導入時の工事は不要だが、ロボット自体の価格は比較的高価。
ロボット本体は安価だが、ガイド設置や工事費用がかかる。
得意な現場
人やモノの移動が多い、レイアウト変更が頻繁にある現場。
決まったルートでの繰り返し作業が多い、定型的な現場。
この違いから分かるように、AGVは「決められた道を走る電車」に例えることができます。一方、AMRは「カーナビを使って最適な道を自分で見つけるタクシー」のようなイメージです。
人との共同作業が前提となる現場や、頻繁なレイアウト変更が予想される現場では、AMRの柔軟性が大きな強みとなります。
3. AMRと「協働ロボット」はどう違う?
AMRと並んで注目されているのが「協働ロボット」です。これもまた、人と一緒に働くことを前提としたロボットですが、AMRとは役割が大きく異なります。
項目
■AMR(自律走行搬送ロボット)
■協働ロボット(コボット)
主な役割
搬送・運搬:モノをある地点から別の地点へ移動させること。
アーム作業:組み立て、検査、ピッキング、溶接など、アームを使った繊細な作業。
設置場所
床面を移動するため、広い通路や作業スペースが必要。
アーム型が主流で、作業台の上などに設置されることが多い。
人との関わり
搬送中に人と接触しないよう、「人との共存」を前提に設計されている。
人の隣で一緒に作業を行う「人との協業」を前提に設計されている。
協働ロボットは、人の手の代わりとなって、単調な繰り返し作業や、重労働をサポートします。これにより、人はより付加価値の高い作業に集中できるようになります。
AMRが「運搬役」とすれば、協働ロボットは「作業者」といったところです。両者を組み合わせることで、物流や製造現場の効率は飛躍的に向上します。例えば、AMRが部品を作業台まで運び、そこで待機している協働ロボットがピッキング作業を行う、といった連携が可能です。
4. まとめ:なぜ今、AMRが注目されているのか
AMRがこれほど注目されている背景には、人手不足の深刻化や、多様化するニーズへの対応が挙げられます。
- 柔軟な運用:頻繁なレイアウト変更や多品種少量生産に対応できるため、現代の生産現場にマッチしている。
- 人との共存:安全機能を備え、人とロボットが同じ空間で効率的に働ける。
- 省人化と生産性向上:単純な搬送作業をロボットに任せることで、人はより創造的な業務に集中できる。
AGV、AMR、協働ロボットは、それぞれ異なる強みと役割を持っています。それぞれの特徴を理解し、自社の課題や目的に合わせて最適なロボットを選択することが、スマートな物流・製造現場を実現する鍵となります。
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