錢屋ギャラリーのことは以前にもお伝えしたと思いますが、カフェに併設しながら文化的・芸術的なものに気軽に触れていただける場として企画、運営されています。白い壁の一般的なギャラリーでない理由は、白いお皿に盛りつける西洋料理に対して、和食の盛り付けのように組み合わせの妙を楽しみながら、互いに呼応するように個性的で特徴的な展示をお楽しみいただきたいと考えたからです。
錢屋ギャラリーの目指すところをご理解いただける展示会のひとつが「この人のB面展」です。本業をA面とするならば、A面で輝く方々はB面もきっと豊かなのではないかと思い、A面を支え育んできたであろう別の側面をご紹介したいと考えました。いわば人の魅力の展示会です。その方のA面でのイベントの告知を兼ねたオンラインでの配信の形となりますが無料ですので気軽にお楽しみ頂けたらと思います。今までも朗読劇の前には作家の中野順哉さんや声優の玉山眞衣さんにお話を伺いましたし、能楽のワークショップの前には人間国宝で能楽師の大倉源次郎さんにお話を伺ってきました。
次回は4月5日の19時から天王寺楽所雅亮会の雅楽師の小野真龍さんにご登場いただきます。この方のB面は…それは聞いてのお楽しみとさせて頂きます。
多様性の時代と言われて
多様性の時代と言われて久しいですが、教育の根本は良くも悪くも変わっていないと思います。どういう基準で主と副が決まるのかわかりませんが、子供の頃から主教科と副教科といった分類で学び、やがて文系か理系かを選ぶことになり、何かの専門を選んで知識を深めます。「一芸に秀でる」ことをヨシとする価値観の中では教育の過程で細分化して深化させることは必要かもしれませんが、一方で「専門馬鹿」といった言葉で揶揄されることもあります。これらはA面での話です。地位、名誉、経済的豊かさはA面に関わることが多いのでしょうが、心の豊かさや幸せといったものは、むしろ「それだけ」では得られないということに多くの人は気がついているはずです。
多面体化のすすめ
「あの人は丸くなった」という言葉は、A面を通じてのものも含めてでしょうが、様々な経験を経て精神的に成長した人を表すと思います。若い頃はとんがっているのもカッコいいと思いますし、年をとっても…場合によっては(どんな場合かが肝心ですが)人から愛されるならばイイと思います。
錢屋本舗本館では活動を通じて、多面体化をお勧めしたいと思います。三角くらいだととんがった感じが残りますが、四角、五角、六角、八角…といったように思考の角が増え、さらに行動することで立体化して多面体化が進むと球に近づきます。色々な面を持つ人が、仕舞には丸くなれるのかと思います。
(月刊ZENIYA&LIFE 2022年4月号より)