堀川 笑里 | Emiri Horikawa
インテリアデザイナー
千葉県浦安市生まれ。
大学卒業後、幼い頃から興味を持っていた空間デザインを学ぶために1年制の専門学校に入学。在学中にたくさんの空間に足を運ぶ中で、ストーリー性を持ったデザインと、人と人との繋がりが生まれる空間に魅力を感じる。卒業後はホテルやオフィスを手掛けるインテリアデザインの設計事務所に在籍。以前より興味を持っていた地方創生と、物件引渡し後もサポートし続けられる空間づくりを実現したいと思い、Stapleに入社。
誰かの「旅先での忘れられない空間」をチームでつくることが今の夢です!
Stapleとの出会い
現在はStapleの設計チームで空間づくりに携わっています。もともと大学では設計とはまったく異なる分野を学んでいて、当時は勉強よりも部活のラクロスに夢中で、毎日グラウンドを走り回っていました。
就職活動のタイミングで興味のあることを仕事にしたいと思い、興味のあったインテリアデザインを学ぶために大学を卒業した後に1年間専門学校に通いました。
専門学校卒業後はアルバイトやインターンを経て、少人数の内装設計事務所に入社。アシスタントデザイナーとして2年弱の間に図面やプレゼン資料の作成、マテリアル収集など設計の基礎を教えてもらい、その経験が今の自分の土台になっていると感じています。
デスクに向かう時間が多い環境の中で、「もっとたくさんの人とチームで仕事がしたい」「自分が携わる空間を実際に使う人の声を間近で聞きたい」という想いが芽生え、転職を決意し、インターン時代にお世話になった伴さんとのご縁がきっかけで、Stapleに入社することになりました。
こんな1日を過ごしています
設計チームでは、コンセプトをもとに運営チームとの打ち合わせを重ねてプランを図面に起こし、マテリアルを選定し、業者さんや職人さんとやり取りをしながら、空間が少しずつ形になっていく過程に関わっています。
一日中パソコンに向かってデスクワークをする日もあれば、工事が始まると現場に張り付き、オフィスにほとんどいない日もあります。進行中の案件のフェーズによって1日の過ごし方はさまざまです。
Stapleの設計チームの魅力は、コンセプトを体現するために、設計業務を飛び越えて自分たちで手を動かしながら形にしていくところ。空間を”つくって終わり”ではなく、”育てていく”プロセスを間近で見れることが1番の醍醐味だと思っています。
SOILをモチーフに地層を表現した日本橋オフィスのサイン デザインから施工まで自分たちでつくり上げた、思い入れたっぷりな一作です!
図面の外で見つけた設計のあたたかさ
入社して最初に深く関わったのが、2025年9月1日に開業したSOIL Nihonbashi Hotel のプロジェクトです。設計は武田清明建築設計事務所さんが担当し、Stapleはインテリアのデザイン監修として、家具や備品の選定、サインデザインを担当しました。
私は途中からこのプロジェクトに加わったのですが、最初に参加した設計定例では、一つの議題に対して「お客様にとって最適なレイアウトは?」「どうしてその寸法でないといけないの?」といった問いが常に飛び交っていて、設計や施工といった職能の枠を超えてチーム全員が当事者意識を持って真剣に向き合う姿勢に圧倒されたことを今でも覚えています。
経験の浅い私の意見に対しても、どうすれば実現できるかを一緒に考えてくれる温かいチームの中でコミュニケーションを重ねながら、「ベターよりベストな空間づくり」を模索し続けました。
そんな中、毎日現場に通っていると嬉しい出来事もありました!
ホテルのサインを業者さんが納品してくださった際に、「図面には書いてなかったけど、堀川さんだったらこっちの方が良いって言うと思って先回りしておきましたよ!」と対応して頂きました。些細なことですが日頃の小さなやり取りから想いを汲み取ってくれた気がして、とても嬉しかった瞬間でした。
また日本橋の現場でも設計業務にとどまらず、実際に手をたくさん動かしました。宿泊者の安全を考慮して内装レンガの角を紙やすりで削ったり、フェンスの木材をハケで塗装したり。プロジェクトに直接関わりのない社内メンバーや、現場チームの皆さんが業務範囲を超えて手を貸してくれたことが、SOIL Nihonbashi Hotelのあたたかさに繋がっていると思います。
効率を優先して外注することもできたのですが、みんなで手を動かしながら、ホテルを”育てていく”過程を楽しむことで、より愛着が生まれたように感じます。
普段、現場に来ることが少ない社内メンバーも巻き込んで開催した、タイル削りワークショップ。お客様が触れても痛くないよう、全フロアのレンガタイルの角を手作業で削りました。
このプロジェクトを通して感じたのは、図面の精度やデザインのかっこよさだけでなく、「誰と、どうつくるか」という過程の大切さです。誰か1人でも欠けていたら、今のSOIL Nihonbashi Hotelは完成していなかったと思います。設計者や施工者、業者の方や職人さんなど、たくさんの人の想いが細部にまで詰まっています。現場で出会う人たちは本当にあたたかくて、みんなで少しずつ形を整えていくその時間が、何よりも学びになりました。
現場にて、出来上がっていく空間を実際に体感しながら、
お客様にとってベストな居心地の良さを検証
ご近所さんとつくったSOIL Nihonbashi Hotel
SOIL Nihonbashi Hotelのコンセプトは「路地裏園芸」。これは、人形町の路地に根付く園芸文化で、鉢を並べ、株分けし、季節ごとに姿を変える生活の延長線にある風景を指します。ホテル周辺を歩いてみると、100種類もの植物が人々の暮らしの中で育ち、路地裏には緑豊かな景色が広がっていました。
本来、ホテル建築は近隣の方々にとっては他人事になりがちですが、SOIL Nihonbashi Hotelでは、ご近所さんから路地裏園芸を少しずつお裾分けいただきながら、建築に絡ませるように配置することで、「まちとホテルの境界をほどいていく」ことを目指しました。
武田清明建築設計事務所さんによる日本橋に生息している”路地裏園芸”をリサーチした植物マップ
そのコンセプトを体現するために、武田事務所の武田さんと岡田さんと一緒に「植物集め」に注力しました。ホテルに飾る植物を集めるために、一軒ずつお宅を訪ねて、株分けをお願いして回りました。最初は「客室数と同じ14株を目標に」と決めていたのですが、気づけば何軒も回り、最終的には73株もの植物をいただくことができました。
ひとつひとつのお宅で、「このホテルがどんな場所になっていくのか」をお話ししながらいただいた植物は、どれも特別な思い出です。
正直、植物集めは地道で大変なことも多かったです。しかし、植物をくださった近隣の方とホテルの前で偶然お会いして、植物がきっかけで会話が生まれたとき、目指していた「まちとホテルのつながり」が少し形になった気がして、心がとてもあたたかくなりました。
photo : masaki hamada
photo : masaki hamada
SOIL Nihonbashi Hotel は、たくさんの人の手で丁寧につくられた場所です。これからはその想いを引き継ぎながら、ホテルからご近所の方々へ、少しずつ恩返しができたらと思っています。設計の武田事務所さん、施工の礎コラムさんをはじめ、このホテルに関わった皆さんとの関係も含めて、この場所で生まれたあたたかいつながりを次の場所へつなげていきたいです。
当初SOILにちなんで「黄土色」の外観だった。しかしホテル前十字路に立った時に全ての方角にレンガの建物があり地域になじむ色にもしている。またホテルそのものがレンガの花壇の要でもあるのでさび色になっています。 photo : masaki hamada
お客様を迎え入れるホテルの顔となるエントランスのサインは建築の一部に馴染むように計画。壁面と同じ素材で仕上げることで、周囲の空間に溶け込みながらも、訪れる方を静かに迎え入れられるように。 photo: masaki hamada
描きたい未来の景色
SOIL Nihonbashi Hotelの開業を通して、ひとつの場所を“育てていく”ということの難しさと面白さを知りました。デザインをして図面に起こし、現場でたくさんの人と関わりながら、まちに馴染んでいく。その過程そのものに、空間づくりの本質があると感じています。
パソコンの前で学べることもたくさんありますが、やっぱり現場で見て、触れて、感じて覚えることの方が、自分にとっては心に残ります。設計だけで終わるのではなく、運営の方々とも一緒に、その空間をどう育てていくかを考え続けられる人でありたいです。
そして、今後はいろいろな地域の物件に関わっていきたいです。その土地に自分の足で行って、空気を感じて、たくさんの人と会話をしながら、そこでしか生まれない空間を形にしていきたいです。これから広がっていくStapleのプロジェクトも、ぜひ楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
次は函館のまちへ。担当する来年オープン予定のホテルが現在進行中です。
こんな人、仲間になりましょう
“素敵な空間”はデザイナーだけでは成り立ちません。図面を形にしてくれる施工者や職人さんがいて、その空間を実際に使い、育ててくれる運営チームやお客様がいて、初めて完成するものだと思っています。
私自身、引き渡した後もそこで働く人や利用する人に寄り添いながら、心地よく使える空間に育てていくことを大切にしています。運営チームからの声を聞きながら、使い方の工夫や改善を一緒に考える。ただ、現場の声をそのまま受け入れるだけではなく、設計者・施工者・職人さんといった作り手の想いも同じように尊重したい。そのバランスを大切にしていきたいです。
だからこそ、両者に対してリスペクトを持てる方と一緒に働きたいなと思います。
また、SOIL Nihonbashi Hotelでは設計業務の範囲を超えて、現場管理や建材の手配、DIYなど幅広く関わってきました。少し遠回りに見えることもあるかもしれませんが(笑)、そうしたひと手間でもポジティブに変換して楽しんでもらえると嬉しいです!
photo : hayate tanaka
photo : masaki hamada