こんにちは、渡邊龍一です。大学在学中から飲食業界に携わり、店長としての経験を積んできました。その後、不動産デベロッパーのコロンビアワークス株式会社での営業や人事の経験を経て、京都のホテル支配人になり、2021年株式会社Nazunaに参画、2024年に代表取締役に就任しました。
京都のフレンドリーラグジュアリーな町屋旅館『Nazuna』を率い、5つ目となる旅館「Nazuna 京都 東本願寺」のオープンを控えています。私の目標は、星野リゾートの星野佳路さんを超える次世代のリーダーとなり、Nazunaの成功事例や宿泊業界における独自の取り組みを積極的に発信し、業界全体の革命を起こすことです。
連載第一弾の今回は、Nazuna流顧客理解ついてお話ししていきます。宿泊業界だけでなく、他の業界にも役立つような洞察を提供できればと思っています。どうぞお楽しみに!
顧客理解の革新—N1分析の重要性
現代の消費者は、多種多様な情報源から情報を収集し、自信の価値観や好みに合った宿泊施設を選びます。このような時代では、従来のマス向けマーケティングはもはや通用しません。個々の顧客のニーズを深く理解し、真にパーソナライズされたサービスを提供することが成功の鍵です。そこでNazunaが重視しているのが、N1分析という考え方です。
N1分析とは、1人のお客様を徹底的に分析し、その行動パターン、興味関心、価値観などを理解することです。例えば、お客様がどのような目的で旅行をするのか、どのような体験を期待するのか、どんな感動を求めているのか、どのような情報を参考に宿泊施設を選ぶのか、といった点を詳細に把握します。
当たり前ですがNazunaでは、ご宿泊いただいたお客様に対してアンケートをお送りし、そのフィードバックをサービスの向上に役立てています。
アンケート内容がかなり細かく、サービス、スタッフ対応をはじめとしてアメニティ、その他あれば嬉しい物、各項目のフリーコメントも設けております。多くのお客様が単なる「良かった」ではなく、詳細のお気持ちまで記載いただいておりますので、お客様を知れる貴重な機会となっています。
毎月、アンケートにお答えいただいた方の中から抽選でオリジナルの琥珀糖をプレゼントしており、お客様との関係を深めながら、そのニーズや期待をさらに詳しく理解するべく、活用させていただいております。
N1=me—心に響くサービスを創るために
Nazunaがもう一つ大切にしている考え方に、「N1=me」というものがあります。これは、私たちが「自分だったらどう感じるか」を軸に、サービスを設計するという理念です。
Nazunaの基本理念である「おせっかい」は、お客様が何を求めているかを徹底的に理解することから生まれますが、同時にスタッフ自身が「こんなことをされたら嬉しいな」「こういうサービスがあったら感動するな」という視点を常に持つことが求められています。
それをしっかりとサービスに落とし込むことで、与えられたサービスではなく、「自分事」での本質的なサービスとなり、お客様の感動へ繋がっていると思います。
例えば、そのためアメニティの変更を検討する時は必ず全スタッフに体験してもらいます。
最近では、新しいドライヤーを導入する際に、全スタッフに実際に試してもらった結果、個人的に購入するスタッフが出るほどの満足度が得られました。自分自身が心から感動するものを選ぶことで、お客様に提供するサービスも本物の感動を生み出します。
N1分析と福利厚生のシナジー—組織とマーケティングの一体化
このN1分析とN1=meの考え方が、Nazuna流のマーケティング戦略です。
社内の福利厚生にも強く影響しており、例えば、Nazunaには他のラグジュアリー施設での体験宿泊を行う福利厚生制度が設けられています。これはスタッフが実際に高品質なサービスを体験し、それを自社のサービスに反映させる機会になっています。
このような取り組みは、Nazunaのマーケティングと組織全体がしっかりと連携し、顧客体験の質を高めながら、従業員の成長にも繋がっているといえるでしょう。
次回は、Nazunaならではの視点から、マーケティングにおける『認知・コンバージョン・満足度』の3つの重要な要素について、お話していきます!