「SaaSの職種なんて、正直ひとつも知りませんでした」。元GEの現場人間が、泥臭く見出した「Value Engineering」という答え
▼この記事のまとめ
- メーカーで「現場×リーン×デジタル」を経験し、その延長線上でCelonisの Value Engineering (VE) というロールに出会い、腑に落ちたキャリアの話です。
- VEは、プロセスデータを使って「構想で終わらせず、成果まで」お客様に伴走する職種であり、私が目指す Trusted Advisor(信頼できる助言者) への道そのものでした。
- 今はVEマネージャーとして、「個人の経験と勘」だけに頼らず、共通の“呼吸”をつくり、Trusted Advisorとして成長できるチームをつくろうとしています。
こんにちは。
Celonis Japanで Value Engineering(VE)マネージャーをしている寺田です。
正直に言うと、転職当時の僕はSaaSの「プリセールス」や「カスタマーサクセス」といったロールをほとんど理解していませんでした。 「営業とコンサルとエンジニアの間…みたいな仕事?」という、かなり曖昧な認識です。
それでも今は、「Value Engineeringという仕事が自分にいちばんしっくりきている」と自信を持って言えます。
なぜそう感じるようになったのか。これまでのキャリアとあわせて、僕がこの仕事を通じて「Trusted Advisor」を志すようになった経緯をお話しさせてください。
1. GE時代:現場の改善文化を「地図」に描き直す
キャリアの起点は、GEヘルスケアのサプライチェーンでした。 医療機器の生産・調達・品質・出荷が緻密に連動する、精緻で複雑な現場です。
そこには、強い改善文化が根付いていました。
- ホワイトボードでの生産計画共有
- Excelの工夫によるきめ細かな調整
- 基幹システムのデータを読み解いて判断する文化
これらは「アナログだから悪い」のではありません。複雑な現場を回すための「知恵の結晶」だと、今でも思っています。
一方で、工程同士の結び目が増えるほど、「どの調整が、本当に全体最適に効いているのか?」は見えづらくなっていきます。 そこで私たちは、リーンの定石に沿って VSM(Value Stream Mapping) で現状のプロセスを整理し、関係者みんなで プロセスの“地図” を描きました。
ポストイットが増えるほど、現場の文脈が立ち上がってきます。 「なぜそのExcel加工が必要だったのか」 「ある承認タイミングが“自然なバッファ”として機能していたこと」 「暗黙の引き継ぎが品質を守っていたこと」
その“地図”をもとに、グローバルのデジタルチームとダッシュボードを共同開発し、属人的な加工をロジック化していく——。
このときに掴んだのが、「現場の知恵を、デジタルに“翻訳”する」という感覚です。 振り返ってみると、これが今のValue Engineeringの仕事の、最初の原点だったと思います。
2. Value Engineeringへ:「プロセスのレントゲン」に出会って腑に落ちた
そんな中で出会ったのが、Celonis でした。 当時の私は、「SaaSってなんとなくカッコよさそうだけど、自分がどこにフィットするのか?」という不安がありました。
ただ、Celonis の Process Mining(プロセスの“レントゲン”) に触れた瞬間、状況が一気に変わります。 GE時代に壁一面に描いていた「地図(VSM)」が、「データで、全工程で、リアルタイムに見える」世界 に置き換わったのです。
- どのオーダーが、どの工程で、なぜ滞っているのか
- どのパターンが、在庫やリードタイムの悪化に効いているのか
- もしルールを少し変えたら、どれくらい改善し得るのか
これらが、データとして一望できる。 GEでやっていたことが、ダイレクトに“プロセス×データの仕事”としてつながった感覚がありました。
そこから腹落ちしたのが、Value Engineeringという役割です。 「売る前から意思決定を一緒につくり、売れた後も成果が定着するまで伴走する人」
SaaSのロールを詳しく知らなかった自分にも、現場・データ・プロセスの延長線上に自然にこの仕事があったからこそ、深く納得できたのだと思います。
3. Trusted Advisor:構想で終わらせず、「成果」まで一緒にやり切る
Celonis Japan のミッションは、日本企業のDXを「構想」で終わらせず、「本物の成果」につなげること。 Value Engineeringは、その中心で「Trusted Advisor(信頼できる助言者)」を目指して動きます。
私たちが目指すのは、きれいな戦略を描くだけのコンサルティングではありません。 お客様の隣で悩み、事実(データ)を共通言語に、現場の変革を最後までやり切る仕事です。
具体的には、次の3フェーズを一気通貫でリードします。
① 課題発見と価値の試算(プリセールス) お客様の経営課題やKPIを整理し、Process Intelligence(プロセスデータ)で現状を“レントゲン”のように可視化します。 遅延や手戻りの真因を特定し、「もし改善できたら、どれくらいのインパクトがあるか」を数字とフローの両面から整理。お客様と「同じ地図」を見ながら、価値仮説を形にしていきます。
② 業務改善と実行支援(ポストセールス) 合意した仮説を、現場のオペレーション変革に落とし込みます。
- 業務ルールのチューニング
- アクションを促すダッシュボードやアラートの設計
- どこまで自動化し、どこから先はHuman-in-the-Loop(人の最終判断)を残すか
分析で終わらせず、「現場がやり切れる設計」をお客様と一緒に作り込むフェーズです
③ 成功の横展開(拡大と内製化支援) さらに、「点」の成功を「面」へと広げます。 再現可能なプレイブックの作成や、CoE(センター・オブ・エクセレンス)を通じた内製化支援を行い、お客様自身がDXを回していける状態を目指します。
4. 「分析で終わらせない」ための Agentic AI
最近のVEの面白さは、具体的な「打ち手」まで設計できる点です。その一つが Agentic AI(目的特化型エージェント) です。
これは、遅延や例外を検知して担当者に知らせ、次のアクション候補を提示する「実行の手助け」役。 AIはあくまで道具箱の一つであり、主役は人の合意と運用設計です。 「意思決定を軽くし、やり切れる設計を支えるための補助線」として、AIを活用していきます。
5. VEマネージャーとして:Trusted Advisorを“増やす”ための3つの土台
ここからは、マネージャーとしての話です。 僕が一番大事にしているのは、「個人の経験と勘」だけに頼るのではなく、「Trusted Advisorが増えていく土台」を作ること。
そのために、3つの柱でチームを運営しています。
① 共通の「呼吸」をつくる —— 同じ地図・同じ判断基準で動く
案件は違っても、価値が出る進め方には共通する“呼吸”があります。 可視化からアクションまでの流れや、合意形成のタイミング。これらをチームで共有し、属人的なスキルに頼りすぎない再現性をつくります。
② 学びの循環を回す —— 伴走 → 共創 → 自走
座学よりも、実戦の中で育つ仕事です。 「先輩の案件に伴走して呼吸を知る」→「一部を共創する」→「自走する」というステップを踏みます。 案件ごとの短い振り返りで、「なぜその優先順位だったか」「どの言葉が刺さったか」を言語化し、チームの共有知として循環させています。
③ 伸び方を選べる —— 深めるか、広げるか
特定領域の「エキスパート」になるか、再現性を広げる「マネージャー」になるか。 どちらも正解です。評価の軸はシンプルに「結果(Value)× 再現性(Playbook)× 波及(Impact)」。 研究領域との連携や対外発信など、視座を上げる機会も作っていきたいと考えています。
6. さいごに:Value Engineeringというキャリアを、もっと“開かれた”ものに
これからWantedlyでは、VEの具体的な1日の動きや、チームの工夫などを発信していく予定です。 改めて、最初にお伝えしたいのはこの一言です。
SaaSのロールを知らなかった自分でも、Value Engineeringは腑に落ちた。
それは、現場 × データ × プロセス の延長線上に、「お客様と一緒に成果をつくる仕事」があったからです。
メーカー、コンサル、SIer、データサイエンス、研究室…。 どんなバックグラウンドでも、「プロセスとデータで、人の意思決定を軽くしたい」 という気持ちがあれば、きっとハマるロールだと思っています。
少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ一度、カジュアルにお話ししましょう。 あなたの経験の中に、どんな Value Engineering の“芽”があるのか。 一緒に「地図」を描きながら、考えていけたらうれしいです。
📢 連載予告:Celonis VEの「リアル」を解剖する全5回
今回のキャリア編を皮切りに、チームづくり、技術、実践、そして若手メンバーの日常まで、Value Engineeringの奥深さを多角的に発信していきます。
- Vol.1:キャリア編(今回の記事)
- 元GEの現場人間が、泥臭く見出した「Value Engineering」という答え
- Vol.2:チーム・カルチャー編
- 「個人の勘」から「チームの呼吸」へ
- Vol.3:テクノロジー解剖編
- OCPMなどプロセスインテリジェンスの技術的優位性を深掘り
- Vol.4:実践ソリューション編
- Agentic AI活用とHuman-in-the-Loop
- Vol.5:密着!VEの1日 編
- 若手メンバーの1日に密着
▼ 次回(Vol.2)は… 個人の力だけに頼るのではなく、チーム全体で同じ「呼吸」をするように成果を出す。そんなチーム・カルチャーの作り方についてお話しします。お楽しみに!