子どもの頃、テレビでアニメを見て、心を揺さぶられた経験はありませんか? 毎週の放送を心待ちにし、キャラクターの活躍に一喜一憂したり、美しい映像に感動したり…。株式会社CompTownでアニメーター、キャラクターデザイナー、総作画監督として活躍する西畑あゆみさんも、そんな原体験を持つ一人です。『美少女戦士セーラームーン』のエンディングテロップで作り手の名前を追いかけていた少女は、厳しいと言われるアニメ業界でフリーランスとして実力を磨き、数々の作品に携わってきました。そんな彼女が、なぜ今、CompTownでチームの一員として働くことを選んだのか。そのキャリアストーリーには、作品への深い愛情と誠実さ、そして業界の未来を見据えた強い意志が貫かれていました。この記事を読めば、CompTownの制作文化、チームで働く意義、そして西畑さん自身のクリエイターとしての魅力に触れることができるはずです。
プロフィール
- 氏名: 西畑 あゆみ(にしはた あゆみ)
- 所属: 株式会社CompTown
- 役職: アニメーター / キャラクターデザイナー / 総作画監督
- 経歴: 東京都練馬区出身。幼少期よりアニメに親しみ、特に『美少女戦士セーラームーン』『カウボーイビバップ』に影響を受けアニメーターを志す。東京アニメーター学院を卒業後、ノーマッド株式会社を経てフリーランスとして活動。プロダクション I.G、P.A.WORKSなどの作品に参加し、実力を磨く。CompTownでは『ミギとダリ』『サラリーマンが異世界に言ったら四天王になった話』などの作品でキャラクターデザイン・総作画監督を務める。
目次
プロフィール
「好き」を仕事に、原点は少女時代の熱狂
試練と成長の日々:厳しさの中で見つけた「誠実さ」という芯
個からチームへ:CompTownで見つけた「同じ方向を向く仲間」と描く未来
「やり逃げはしない」文化を創る:CompTownが目指すクリエイター育成と制作環境
生涯現役クリエイターとして:進化し続けるための原動力と次世代への想い
CompTownで、共に「いい作品」を創りませんか?
「好き」を仕事に、原点は少女時代の熱狂
ーー西畑さんがアニメーションの世界に興味を持たれた、最初のきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは本当に幼少期ですね。テレビで放送されていたアニメを見て育って、特に小学生の頃に始まった『美少女戦士セーラームーン』に夢中になりました。漫画とアニメがほぼ同時に始まって、毎週食い入るように見ていましたね。
ちょっと変わってるかもしれないんですけど、その頃からエンディングで流れるアニメーターさんの名前を見るのが好きだったんです。「今週はこの人が作画監督なんだ」「この人の絵、好きだな」って。テロップの名前をチェックして、好きなアニメーターさんを見つけては「この回もいいな」って楽しんでいました。
ーーキャラクターになりたい、とかではなくて、作り手の名前を見ていたんですね!珍しい視点ですね。
そうですね(笑)。もちろんセーラームーンに変身したい願望はありましたけど、それよりも「誰が描いているんだろう?」という視点が強かったかもしれません。昔のアニメって、今よりもアニメーターさんの個性が絵に強く反映されていたんですよ。だから、「この人の絵だと、この話数は特にいいな」とか、そういう感覚で見ていました。
特に憧れたのは、当時キャラクターデザインや総作画監督をされていた只野和子さんや伊藤郁子さんといった女性アニメーターの方々です。すごく可愛くてキラキラした絵を描かれていて、「私もこんな風にキャラクターを魅力的に描ける人になりたい」 と強く思うようになりました。
ーーそこから本格的にアニメーターを目指そうと思われたのは?
中学生の時ですね。『カウボーイビバップ』という作品に出会って、衝撃を受けました。まるで映画のようなクオリティで、キャラクターたちが生き生きと動いている。それを見て、「キャラクターを動かす仕事って、なんてかっこいいんだろう!」って。
元々、絵を描く仕事には漠然と憧れがありました。アニメはキャラクターを「動かす」、つまり「演じさせる」仕事ですよね。私、中学時代は演劇部に入っていたくらい、演じることも好きだったんです。絵を描くことと、演じることが融合しているのがアニメーターだ、と感じて、本格的に目指すようになりました。尊敬するアニメーターの方々も「アニメーターは役者だ」とおっしゃっていて、キャラクターの心情を読み解いて、どう表現するかを考える。そこにすごく魅力を感じたんです。
試練と成長の日々:厳しさの中で見つけた「誠実さ」という芯
ーー専門学校を卒業されて、最初に入られたのがノーマッドさんですね。当時はどのような環境だったのでしょうか?
そうですね、専門学校の同級生と一緒に入社しました。ただ、私たちが入った時、ノーマッドは動画(※アニメの動きの中割りを描く工程)のスタッフを採るのが初めてだったみたいで、しっかりした教育体制というのは正直あまり整っていませんでした。
当時は今でいうパワハラみたいなこともありましたし、労働環境も厳しかったですね。入社したとはいえ業務委託扱いだったため、給料も完全出来高制でやった分しかもらえない。私の初任給、2万円だったんですよ(笑)。これはもう笑い話にしたいんですけど。
ーー2万円ですか!それは厳しい…。生活も大変だったのでは?
本当に大変でした。「続けたいけど、どうしよう…」って、いつも悩んでいましたね。当時は、今のように「後輩を育てよう」という土台がある会社は少なくて、「辛ければ辞めれば?」という雰囲気も強かったです。理不尽なことを言われて、悔しくて泣きながら自転車で帰ったこともありました。「絶対あいつらより上手くなってやる!」って思いながら(笑)。
気が強かったので何とか続けられましたけど、やっぱり給料の低さや環境の辛さで辞めてしまう同期も多かったです。私たちは、そういう時代を経験してきた世代なんです。
ーーその後、フリーランスとして活動されるようになったのですね。
はい、ノーマッド時代から実質的にはフリーランス(業務委託)でした。ノーマッドでお世話になった方もいましたが、やはり環境の辛さもあって…。そんな時、他社の仕事を手伝った際に「丁寧な仕事で助かりました」と名刺をくださった方がいたんです。それがプロダクション I.Gの方で『テニスの王子様』のキャラクターデザイナー・総作画監督をご担当されていたスーパーアニメーターでした。そのご縁でI.Gの仕事をするようになり、その後もP.A.WORKSさんなど、様々な会社の作品に参加させていただきました。
若い頃は、「『何者でもない自分』から何者かになりたくて」、とにかく名前を知ってもらいたくて必死でしたね。だから、特定の会社に所属するのではなく、作品ごとに色々な現場を経験したいという気持ちが強かったです。多くの人が抱くかもしれない、この「何者かになりたい」という渇望が、私を突き動かす原動力の一つでした。
ーー様々な現場を経験される中で、西畑さんが仕事をする上で大切にされてきたこと、信念のようなものはありますか?
「誠実に、その作品に向き合うこと」 ですかね。私は結構真面目な性格なので、中途半端が嫌なんです。メインスタッフとして関わる作品には最後まで責任を持ちたいし、妥協したくない。
特に原作がある作品の場合は、「原作者さんが生み出した大切な子供を預かっているんだ」 という気持ちで取り組むようにしています。自分の承認欲求のためだけに仕事をして、「私すごいでしょ?」みたいになるのだけは絶対に嫌で。原作の世界観やキャラクターを尊重し、どうすればアニメとして最大限に魅力を引き出せるか、それを常に考えています。
あとは、アニメ制作は多くの人が関わる仕事なので、コミュニケーションや協調性もすごく大事だと思っています。「自分が自分が」とならないように、常に意識していますね。
個からチームへ:CompTownで見つけた「同じ方向を向く仲間」と描く未来
ーーフリーランスとして活躍されていた西畑さんが、CompTownに社員としてジョインされた経緯を教えていただけますか?
きっかけは、CompTownも制作に関わっていた『裏世界ピクニック』という作品に、キャラクターデザイナーとして参加したことです。その時に、代表の山村と出会いました。
その後、山村さんから「西畑さんの絵の方向性に合っていると思う」と、『ミギとダリ』という作品のキャラクターデザインのお話をいただいたんです。フリーランス時代、もちろん良い出会いもありましたが、結局はある程度のポジションで頭打ちになってしまう感覚もありました。そんな中で、私の絵の特性をちゃんと見て、考えて、仕事を任せてくれた。それがすごく嬉しかったんです。
ーーそれがCompTownへの入社の決め手になったのでしょうか?フリーランスで続ける選択肢もあったかと思いますが。
そうですね。最初は社員になることまで考えていなかったんですが、山村さんから「西畑さんのライン(チーム)を作りたい」という話があって。
フリーランスって、自由なようでいて、実は限界もあると感じていました。山村さんも私も、「チームを組んで、みんなでより高いステージに行きたい」という想いが共通していたんです。
それに、フリーランスの中には、もちろん全員じゃないですが、正直言って責任感に欠けるというか、“やり逃げ”のような仕事をする人も沢山いるんです。そういう人たちと仕事をするのは辛いし、自分もいつかそうなってしまうかもしれないという怖さもありました。「同じ方向を向いて、誠実に作品作りに向き合える仲間と、腰を据えて仕事がしたい」。そう強く思うようになって、CompTownに社員として入ることを決めました。自分の拠点を作りたかったし、若手を育てながら、チームで良い作品を作っていく。その方が、クリエイターとしてもっと成長できるし、より大きなことができるんじゃないかと思ったんです。
「やり逃げはしない」文化を創る:CompTownが目指すクリエイター育成と制作環境
ーーCompTownの制作現場は、今どのような雰囲気ですか?
若手が多いので、和気あいあいとしていますよ。学校みたいな雰囲気もあります(笑)。でも、根底には山村が常に言っている「フリーランスの問題点」や「チームでやることの意義」が浸透してきていると思います。
私たちは、若い子たちに、私たちが経験したような業界の理不尽さや厳しさ(※低賃金、長時間労働、育成放棄など)を経験させたくないんです。安心して、純粋に「いい作品を作りたい」という気持ちに集中できる環境を作りたい。
ーー「若手を育てる」という点について、西畑さんご自身はどのように関わっていらっしゃるのでしょうか?
私が何か特別なカリキュラムで教えているわけではないんです。アニメ業界って、手取り足取り教えれば伸びるというものでもなくて。一番大事なのは、「上手い人の仕事を間近で見て、いつでも質問できる環境にいること」 だと思っています。あとは本人の自助努力ですね。
だから私は、同じ空間で一緒に仕事をしながら、彼らが分からないことや困ったことがあった時に、いつでもアドバイスできる存在でいたいと思っています。幸い、私の知り合いの実力のあるアニメーターも、今はCompTownで後輩の指導に関わってくれています。
私自身、若い頃はキャラクターデザイナーになりたいと思っても、なかなかチャンスをもらえませんでした。だからこそ、今の若い子たちには、「将来どうなりたいのか」をちゃんと聞いてあげて、その目標に向かって進めるようにサポートしてあげたい。そういう気持ちが強いですね。
ーーCompTownが目指しているのは、フリーランスに依存せず、社内で一貫して質の高い作品を作り、クリエイターを育てていく体制ということですね。
まさにその通りです。フリーランスという働き方自体が悪いわけではないのですが、今の業界構造には問題が多いと感じています。特に、リモートワークが増えたことで、十分な実力がないままフリーになったり、実力があってもコミュニケーション不足から作品の意図とズレたものを納品して、結果“やり逃げ”してしまったりするケースが増えています。
結局、そのしわ寄せは、社内で頑張っている作画監督や他のスタッフにいくんです。ひどい上がり(※質の低い原画や動画)を修正するのは本当に辛い作業ですし、モチベーションも下がります。本来、作画監督は上がってきたもののクオリティを「上げる」仕事なのに、今は土台から作り直しなければならないことが多い。これは健全ではありません。
私たちは、そういう“やり逃げ”を許さない、最後まで責任を持って誠実に作品に向き合うチームを作りたい。 同じフロアで、顔を見ながらコミュニケーションを取り、認識のズレがあればすぐに修正できる。そういう環境こそが、本当に良い作品を生み出す土台になるし、若手が健全に成長できる場所だと信じています。
ーーそれは、業界全体にとっても重要な課題ですね。
そう思います。幸い、今のアニメ業界の中には、社内育成に力を入れて素晴らしい結果を出している制作会社も出てきています。私たちも今はまだ走り出したばかりで全然で、時間はかかるかもしれませんが、そういう会社を目指したい。CompTownというチームで、関わる人みんなが疲弊せず、誇りを持って「いい作品を作った」と言えるような仕事をしていきたいですね。
生涯現役クリエイターとして:進化し続けるための原動力と次世代への想い
ーー日々多くの修正作業など、大変なこともあるかと思いますが、西畑さんのモチベーションの源泉は何でしょうか?
やっぱり「いい作品」を見ることですね。辛くなった時は、素晴らしい映画や、好きなミュージカル(特に『キャッツ』が好きです!)を見に行ったりします。あとは、自分が昔ハマっていたアニメを見返したり。そうすると、「私も頑張ろう!」って、また気持ちが上がってきます。
あとは、若い頃に自分が影響を受けた作品のように、誰かの心を動かすような、魅力的なキャラクターを生み出し続けたいという気持ちが常にあります。そのためには、自分自身がクリエイターとして停滞せず、常に新しい感覚を取り入れて進化し続けていかなければいけないと思っています。
ーー西畑さんご自身の、今後の目標やチャレンジしてみたいことはありますか?
個人としては、キャラクターデザイナーとして、もっともっと魅力的なキャラクターを描けるようになりたいです。そして、アニメーターとしても日々成長し続けたい。停滞はしたくないですね。
チームとしては、先ほどもお話ししたように、今の若い子たちがちゃんと目標を持って成長していけるように、しっかりとサポートしていきたいです。彼らが次のCompTownを担うメインスタッフになった時に、さらにその下の世代が入ってきて…という良い循環を作っていきたいですね。私はその時、ちょっと上から「お、やってるな」って見守っていたい(笑)。でも、完全に現場から離れるつもりはなくて、若い子たちに負けないくらいの気持ちと熱量で、ずっと作品作りに関わっていたいです。絵柄も気持ちも、古くなりたくない。常に若々しくありたいですね。
ーー生涯現役、ですね!
そうですね。たぶん、最終目標というのはないのかもしれません。アニメーション自体が日々進化していくものですし、私たち作り手も常に新しいものを生み出し続けていく必要がありますから。私が尊敬するアニメーターさんが「絵を描きながら死んでいきたい」と話していたのが印象に残っているのですが、ある意味、それが理想かもしれません。死ぬ瞬間まで、何かを生み出そうとしている。そういうクリエイターであり続けたいです。
CompTownで、共に「いい作品」を創りませんか?
ーー最後に、CompTownに興味を持っている方、応募を考えている方へメッセージをお願いします。
CompTownが求めているのは、まず**「自分の仕事に誠実に向き合える人」** です。“やり逃げ”のような無責任な仕事をするのではなく、最後まで責任を持って、作品と向き合える方と一緒に働きたいです。
次に、「明確な目標を持ち、そのために日々努力を続けられる人」。「将来こうなりたい」というビジョンを持って、スキルアップのために努力を惜しまない方を歓迎します。
そして、「チームで働くことに価値を感じられる人」。個人の力には限界があります。仲間と協力し、コミュニケーションを取りながら、チームとしてより良いものを作り上げていくことに喜びを感じられる人が向いていると思います。
もちろん、入社後は私たちが全力でサポートします。安心してスキルアップに集中できる環境がありますし、皆さんの「なりたい姿」を実現できるよう、一緒にキャリアを考えていきたいと思っています。
アニメーターを目指すなら、普段から色々なものにアンテナを張っていてほしいですね。アニメだけでなく、映画、実写、舞台、自然、街行く人々…。日常のすべてが、表現のヒントになります。自分が生きてきたもの、見てきたものが、必ず絵に反映されますから。
CompTownは、まだまだこれからの会社です。でも、「誠実に、チームで、本当にいい作品を作る」 という熱い想いを持った仲間が集まっています。もし、私たちの考えに共感していただけるなら、ぜひ一緒に、未来のアニメーションを創っていきませんか?