インフォバーンで働く社員へのインタビュー企画。今回は2019年に新卒入社して現在5年目、コミュニケーションデザイン第1事業部でコンテンツディレクターを務める丸山佑介さんです。サークル活動に明け暮れた学生時代のお話から、コンテンツディレクターに必要な心構えなどさまざまなことを伺いました。
無意味だったけど無価値ではなかった学生生活
ーー丸山さんは新卒でインフォバーンに入社されていますが、どんな学生時代を過ごしていたのでしょうか。
大学時代は仲間とスケボーサークルを設立して遊んでいました。
ーー今やスケボーはオリンピック競技ですから、だいぶ先見の明がありますね。高校時代からスケボーが好きだったのですか?
いいえ、全然。ほぼ乗ったことはないです。最初は学生課で「ゴミ拾いサークル」って書類に記入し、申請しました。とにかく人名のようなサークル名にしたくて『竹内剛(たけうちごう)』と名付けました。
▲卒業アルバムにもちゃんと載っていました。
ーーなぜゴミ拾いサークルにしたのですか?
当時のぼくは「ゴミ拾いサークルならなんでも容認されるはず」と根拠のない楽観的な考えをしていたんです。「街をキレイにしたいからです!」と主張しましたが、却下されました。学生課の職員さんはちゃんと人物を見ているんだなと感心しました。
ーーそこからどうリベンジしたんですか?
ゴミ拾いサークルが却下された一週間後、再び学生課に行きました。同一人物だとばれたらなんか怒られそうなので、とりあえず髪の毛を赤く染めて向かいました。
ーー100%バレますよね?
「スケボーサークル『竹内剛』です」と言ったら、「ん?あれ、この前も来ましたよね?」とあっさりバレました。ですがここで引き下がることなく「このキャンパスにはスケボーをするサークルがありません。せっかく最寄り駅にスケボーをしてもOKな公園があるのに!」と主張したら、なぜか審査に通りました。
ーーそれはよかったです。どんなサークルライフを過ごしていたのでしょうか。
気絶するまで何時間もスマブラしたり、お金もないので河原で石を拾ったり、たまにスケボーしたり。自由気ままに大学生活を謳歌していました。そうこうしているうちにあっという間に3年間が過ぎてしまいまして。あまりにも暇すぎたからなのか、唐突に何か形に残るものを作りたくなったんです。
ーー何を作ったのですか?
フリーペーパーです。たまたま学生フリーペーパーの祭典イベント「Student Freepaper Forum(以下SFF)」を見に行って、「自分ならここにあるフリーペーパーを超えるものが作れるはず」と思いました。
ーースケボーサークルなのに、謎の自信に満ちあふれてますね。
SFFは旅行やファッションなどのジャンルのフリーペーパーが多かったので、もっと自分たち大学生にしか作れないものでないとダメと思い、『大学喫煙所名鑑』というフリーペーパーを作りました。
ーーそれはどういったフリーペーパーだったのでしょうか?
地方国公立大学のキャンパスにある喫煙所を紹介するものです。原付きバイクで全国を回って取材したので制作に1年半もかかってしまいました。ですが、ありがたいことにそのフリーペーパーが評価されて、SFFで賞をいただき、メディアで紹介されたりしました。ラジオでピエール瀧さんに紹介していただいたり、それは嬉しかったですね。大学4年生の終わり頃の話です。(大学喫煙所名鑑ができる経緯はこちら)
ーーとても順風満帆ですね。
はい。当時は制作会社の内定も頂いていました。
ーーえ! ではなぜインフォバーンに来たんですか?
意外かもしれませんが、なんと自分……留年したんですよ!!
天下分け目の留年事変
ーーフリーペーパーづくりに熱中して留年してしまったんですね。
そういうことにしてください。留年して、さてこれから先どうしていこうかと悩んでいたところ、SFFのイベントに当時の新卒採用担当だった田汲さんが来ていたみたいで、X(旧Twitter)に「大学喫煙所名鑑がおもしろかった」とポストしていたのをふと思い出しました。
ーー偶然の出会いだったんですね。
過去のポストを辿ってみると、どうやらこの人はインフォバーンという会社で働いている採用担当者ということがわかりました。自分の作ったものをおもしろいと言ってくれるのなら、ひょっとするとこの会社で雇ってもらえるかもと淡い期待を抱きまして……。善は急げということでとりあえずDMを送りました。
▲採用担当に届いたDM。完全に社会人を舐めているのがよくわかる文面です。
ーーあの大物ルーキーが留年しましたよってノリなのでしょうか。普通の採用担当ならスルーしている気がします。ところで丸山さんは会社の代表だったんですか?
いえ、この会社は実在しません。フリーペーパーを作るにあたって勝手に名付けただけです。
ーーインフォバーンがどんなことをやっている会社かはわかったうえで連絡したのでしょうか?
いや、よくわかってなかったです。ただ、話を聞いていくうちに興味を持つようになりました。あと、内定を頂いてからわかったのですが、同期も学生時代に何かを作ることに打ち込んでいたという人が多かったので、きっとこの会社は自分に合っているんだろうなと思いました。
ーー同期はどんな人たちだったんですか?
ロンドンのデザイン会社でインターンをしていたカメラ好きのロン毛。食パンの袋を留めるアレ(バッグ・クロージャー)が青森県の形に似ていると気づき、3Dプリンタで青森県の形をしたバック・クロージャーを作った人。あとはマリオカートで世界ランクに入った人とか。※青森県の形をしたバック・クロージャーの紹介はこちら
ーーマリオカートで世界ランクに入るというのは特になにも作っていないですけどね。
とにかく、ものづくりを好きな人が多そうだったので、この会社は「なんとなくいいな」と思ったんです。
ーーその頃はコンテンツディレクターになるという意識はもちろんないですよね。
はい。総合職としての採用なので職種については特に考えていなかったです。ただ、自分はなにかを企画してそれを実際に形にする仕事をしてみたいとだけ漠然と考えていました。
ーー学生時代の話が長くなってしまいましたが、入社してから印象に残っているエピソードってありますか?
そうですね……。ぼくはインフォバーンに入社して最初に手掛けたのが「絆創膏」だったんです。
ーーあの傷に貼るやつで合ってますか?
はい。インフォバーンってアウトプットがデジタルのメディアであったり、場合によっては紙の冊子だったり、イベントだったり、動画だったり、さまざまですよね。ですが自分が最初に手掛けたのは、とあるメディアのノベルティとして作った絆創膏でした。イベントで配布する用途で3,000個ほど発注したんですよ。作ってもう4年以上経つのですが、そのときお世話になったノベルティ会社さんからはいまだにちょくちょく連絡が来ます。この前、担当者の引き継ぎの電話もありましたからね。一回しか発注していないのに。
ーー「この人は過去に絆創膏を大量発注したから大口顧客かもしれない。こまめに連絡しとこう」という認識なのかもしれませんね。
まわりの同期がメディアの記事を編集したり、Webサイトを制作しているなかで、「いま自分は絆創膏を作っているんだ」という感情は鮮烈に覚えていますね。
ーー絆創膏制作からスタートして今はどういった仕事をされているのですか。
担当しているのはBtoB系のメディアの編集業務が多いですね。ざっくり言うと、企業のまだこの世には出ていない情報や技術をわかりやすくユーザーに届けるということを日々やっています。
ーー丸山さんはなんとなくアイデア一発勝負みたいなイメージを抱いていましたが、ちょっと違うんですね。
どちらかというとBtoB系のメディアの仕事が自分には合っていると思います。前提として、僕はおもしろいコンテンツ=いいコンテンツという考えです。「おもしろい」には、笑えるものも、興味深いものも含まれます。そして、クライアントワークの場合、笑えるものってあまり依頼されないんです。だから、専門的な知識をインプットして、有識者の新鮮な視点に触れることができるBtoB系のコンテンツのほうが、僕の思う「おもしろい」に近い、というか。それまで調べても出てこなかったものが、調べたら出てくるようにするという行為が純粋におもしろいんですよね。BtoC系に比べると、キャッチーなコンテンツではないですけど。
ーーなるほど。「おもしろい」というのはメディアによっても、人によっても捉え方がさまざまだと思います。
何か制作して世の中に出すのであれば、やっぱりある程度、自分がいいと思ったものを出したいですよね。それが僕にとっては「おもしろい」なのかな、と。あと、社会人になって驚いたのが、みんなそんなに「おもしろい」ものが好きなわけではないということです。「おしゃれ」「かっこいい」「かわいい」のほうが人気かも。みんなが「おもしろい」ってことを重視しているわけではないということを知りました。
ーー丸山さんの考える"いいコンテンツ”とはなんでしょうか?
じゃ、説明しますのでちょっと外に石でも拾いに行きますか。
ーーは、はい。
急にわけのわからないこと言いやがってって思ってませんか?
ーー大丈夫です。
ーーで、石を拾うのといいコンテンツについて語るのは関係があるんですか?
学生時代にあまりにも暇すぎてサークルメンバーとよく石を拾っていたんですよ。そこで気づいたんですけど石選びってセンスが出るんですよね。
ーーたとえば?
同じ場所で石を拾うにしてもそれぞれのセンスがあらわれるんです。前に石拾いに行ったバックパッカーの友人は「持ちやすい石」を選んでいました。彼の中で”持ちやすさ”やともにいる”相棒感”が重要だったのかもしれませんね。
これは今日家から持ってきたんですけど、この石を選んだ友人は「ジブリみたいな田舎の風景に馴染む石」というのを考えて拾ったそうです。ノスタルジックなシチュエーションを好んだり、背景にあるストーリーみたいなものをいいと思ったのかもしれないですね。
ーーたしかにジブリっぽい気がしてきました。その時、丸山さんはどんな石を拾ったんですか?
これです。まるくてちょっと平べったくもある、色もグレーで「THE 石」という感じ。大きさも手のひらにちょうど収まるのがよいです。このような「石らしい石」を選んだ自分は“石”原理主義者だと思います。結局、王道でシンプルなものがいいと思ってる節があるのと、プラスして、ちょっとしたシュールさみたいなものも琴線に触れるのかもしれません。
ーー言わんとしていることはなんとなくわかります。
河原とか行くと、めっちゃたくさん石があるじゃないですか。膨大な数のなかで「さあここから選んでください!」と言われて選ぶと、その人なりのセンスや価値観が石に投影されるんです。みんな石を選ぶときに「なんとなくいいな」って思ったものを選ぶと思いませんか? 自分の「なんとなくいい」って感覚を知るのってけっこう難しいじゃないですか。それをわかりやすくしたのが石を拾うという行為だと思います。昔から「困ったら石を拾え」ってよく言うじゃないですか。
ーーすみません。「困ったら石を拾え」という格言は聞いたことがなかったです。
石って権威がないですし、拾うのもタダなんです。たとえば「好きな音楽は?」と聞いたときに「はっぴいえんどが好きです」って言われても、「そのバンドを挙げれば通(つう)っぽい」という権威で選んでいる可能性もあるなと疑ってしまうんですよね。本当にそのバンドが好きだったとしても、真意はわからないじゃないですか。石には、「この石を拾えば通っぽい」みたいなこと無いですから。権威がないので、好きな映画や音楽について尋ねるよりも、その人のセンスが純度高く現れると思います。また、他の人が拾った石のいい点を挙げてみると、意外とその人の意図とは違うことがあるんです。そうやって自身の視点を増やしていくのもいいと思います。
ーー自身のセンスを知り、他者の視点を獲得するための行動だったんですね。
ブランディングって突き詰めていくと、企業や商品を「なんとなくいい」って思うことな気がするんです。なんとなくいいと思ってこの服を買ったり、なんとなくいいと思ってお昼ごはんを選んだり。なんとなくいいって感覚は日常に溢れていますよね。ですが、仕事においてはその「なんとなくいい」をきちんと言語化しないといけません。そして言語化するためには日々膨大なインプットと適切なアウトプットをしないといけません。コンテンツディレクターの仕事は結局のところその繰り返しだと思うので、毎日石を拾ってその理由付けを考えているのと同じですよね。
ーー「なんとなくいい」を言語化するのがコンテンツディレクターってことですか?
はい。具体と抽象の行き来、みたいな。クライアントワークでは特に言語化は必須ですね、説明をする必要があるので。その前段として、とにかく僕は「なんとなくいい」という感覚を大切にしています。インフォバーンも「なんとなくいいな」と思ったから入社したわけですし。
ーー最後にこれを読んでいる方にメッセージを。インフォバーンにはどういう人に入社してもらいたいですか?
「こじつける人」ですね。やりたい企画とかを説明するために、あらゆる手段を想定できたり、自分の得意分野になりやすい趣味とか好きなものに無理矢理にでももっていくエネルギーのある人が良いんじゃないかと思います。
ーーそれはなにもコンテンツディレクターに限った話ではないかもしれませんね。ありがとうございました!
本人はダラダラと過ごしていたと語っていた学生時代ですが、サークルを立ち上げたり、フリーペーパーを作ったりと、ものづくりにこだわりを持って取り組んでいるのが印象的でした。その想いが社会人になってからもずっと続いているのかもしれませんね。石を拾って言語化してきた行為も今の仕事に活かされていると思うと、何事においても無駄なものはないのだなと感じました。これを読んでインフォバーンって「なんとなくいいな」と思った方、こじつけるのが得意だと思った方はぜひカジュアル面談のお申し込みをお願いします!
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