目次
■ 1. 違和感のある「空席」
■ 2. 無関心と好奇心
■ 3. 何も起きない違和感
■ 4. 見えない誰かの存在
■ 5. 語られなかった過去
■ 6. 危機の中での行動
■ 7. 小さなきっかけ
■ 8. 残された言葉
■ 9. 継承される意思
■ 10. 気づく人間
■ 11. 行動の連鎖
■ 12. 本質
■ 13. 結論
■ 1. 違和感のある「空席」
その会社には、ひとつだけ、いつも空いている席があった。
誰のものでもない。
けれど、誰も座ろうとしない席だった。
理由を聞いても、皆少しだけ言葉を濁す。
「なんとなく」
「昔からそうだから」
ただ一つ確かなのは、
その席の前だけ、なぜか毎朝きれいに整えられているということだった。
■ 2. 無関心と好奇心
ある日、新しく入った一人の社員が、その席に目を止めた。
「なんで誰も座らないんですか?」
誰もはっきり答えない。
彼は少し笑って言った。
「空いてるなら、いいですよね」
■ 3. 何も起きない違和感
彼はその席に座った。
一日、何も起きなかった。
周囲が気にしていたほどのことは、何も。
「ほら、大丈夫じゃないですか」
彼は軽くそう言った。
■ 4. 見えない誰かの存在
次の日。
その席は、また綺麗に整えられていた。
昨日彼が置いたペンも、書類も、すべて消えていた。
まるで、
誰も座っていなかったかのように。
■ 5. 語られなかった過去
彼は古くからいる社員に尋ねた。
「あの席、なんなんですか?」
少しの沈黙のあと、その人は話し始めた。
■ 6. 危機の中での行動
「昔、あそこに座ってた人がいた」
誰よりも早く来て、
誰よりも遅くまで残っていた人。
目立たず、文句も言わず、
ただ仕事をしていた。
ある年、会社は大きな危機に陥った。
誰もが少しずつ諦め始めていた。
その時、その人だけが言った。
「まだ、やれることがあります」
■ 7. 小さなきっかけ
彼は、誰にも頼まれていない仕事を始めた。
見えないところで、
評価されない作業を続けた。
資料を整え、
数字を見直し、
可能性を一つずつ拾い上げた。
そしてある日、一本の電話が来た。
「御社の提案、もう一度詳しく聞かせてください」
その一件が、会社を救った。
■ 8. 残された言葉
だが、その人は、まもなく会社を去った。
理由は誰も知らない。
ただ、最後にこう言った。
「この会社は大丈夫です。
誰も見ていなくても、やる人がいる限り続きます」
■ 9. 継承される意思
それ以来、その席は空いたままになった。
誰も座らない。
けれど、誰かが毎日整えている。
■ 10. 気づく人間
「誰がやってるんですか?」
彼が尋ねると、その人は少し笑った。
「気づいた人がやるんだよ」
■ 11. 行動の連鎖
次の日。
彼は少し早く会社に来た。
誰もいない静かなフロア。
あの席の前に立つ。
少しだけ迷い、
そして、椅子に手をかけた。
机の隅に、小さな傷があった。
長く使われた跡。
彼は何も言わず、
椅子を整え、机を拭いた。
■ 12. 本質
その日から、その席は空いたままだった。
けれど、もう「誰のものでもない席」ではなかった。
誰かが見ているわけじゃない。
評価されるわけでもない。
それでも、誰かが続けている。
■ 13. 結論
人は残らない。
けれど、意思は残る。
その会社には今日も、
誰も座らない席がある。
そしてそこには確かに、
「人の意思」が、座っている。