誰にも気づかれないまま過ぎていった時間
Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash
巡回の帰り道、
いつも通る通路の端に、
小さな紙片が落ちていた。
拾うほどのものでもないと思って、
そのまま通り過ぎた。
翌日も、同じ場所に紙片があった。
昨日のものなのか、
新しく落ちたものなのかは分からなかった。
誰かが落としたのかもしれないし、
風で流れてきただけかもしれない。
気になったわけではない。
ただ、そこにあることだけは分かった。
三日目、紙片はなくなっていた。
誰かが拾ったのか、
風でどこかへ行ったのか、
掃除で消えたのか、
それも分からなかった。
なくなったことに気づいた瞬間、
なぜか少しだけ、
胸の奥が空いたような気がした。
紙片に意味なんてなかった。
自分に関係もなかった。
ただそこにあっただけのもの。
それなのに、
なくなったことだけが、
妙に心に残った。
理由は分からない。
説明もできない。
ただ、
“あったものがなくなる”ということが、
思っていたより静かに、
さみしかった。