巡回の途中で、
担当者が棚の前で立ち止まっていた。
何かを考えているようにも見えたし、
ただぼんやりしているだけにも見えた。
声をかけようか迷ったが、
その人は何も言わずに、
ゆっくりとその場を離れていった。
棚には、
向きの違う商品が一つだけ残っていた。
直すべきなのか、
そのままにしておくべきなのか、
判断がつかなかった。
その人が気づいていたのか、
気づいていなかったのか、
理由があったのか、
ただの偶然だったのか、
何も分からなかった。
結局、何もせずにその場を離れた。
その後、担当者と話す機会はあったが、
あの日のことは聞けなかった。
聞けばよかったのか、
聞かないほうがよかったのか、
今でも分からない。
棚のあの一つのズレは、
その後どうなったのか知らない。
ただ、あの日の空気だけが、
ずっと心のどこかに残っている。
意味があるのかどうかも分からないまま、
時々ふと思い出す。