小さい頃、転んで泣いたとき
母はいつも同じことを言っていました。
「大丈夫、大丈夫」
何が大丈夫なのか、正直わかりませんでした。
膝は痛いし、涙は止まらないし、
全然大丈夫じゃなかった。
それでも、その言葉を聞くと
なぜか少しだけ安心しました。
大人になってから、
その言葉を思い出すことが増えました。
うまくいかない日や、
どうしようもなく落ち込んだとき。
誰かに「大丈夫」って言ってほしくなる。
でも、大人になると
誰も簡単には言ってくれません。
ある日、久しぶりに実家に帰りました。
特に何かあったわけじゃないけど、
なんとなく顔を見たくなって。
いつものようにご飯を食べて、
他愛もない話をして、
帰ろうとしたときでした。
玄関で靴を履いていると、
後ろから声が聞こえました。
「ちゃんとご飯食べてる?」
振り返ると、母が立っていました。
その一言だけで、
なぜか涙が出そうになりました。
何も話してないのに、
何も言ってないのに、
全部見透かされている気がしました。
うまくいってないことも、
強がっていることも、
全部。
結局、その日は何も言えずに
「うん、大丈夫」とだけ答えました。
本当は大丈夫じゃなかったのに。
帰り道、ふと思いました。
あのとき言われた「大丈夫」は、
「何があっても大丈夫」じゃなくて、
「あなたは一人じゃないよ」
って意味だったんじゃないかと。
だから今でも、
たまに思い出します。
あの何気ない一言を。
もし今、少ししんどいなら
誰かに言ってもらえなくてもいい。
心の中でいいから、
自分に言ってあげてください。
「大丈夫」って。
きっと、少しだけ楽になります。