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Frich代表インタビュー (後編)

前回はFrich創業の背景を語っていただきました。今回はビジネス面からFrichに迫ります。
*聞き手:フリーライター Ryo


Q ビジネス的にはいつからスタートしていますか?

2020年4月からです。
内閣府サンドボックス制度下において、まずはβ版の運用を始めています。
日本初で特例措置つきの採択をしていただきました。


Q 具体的な補償内容としては?

返品送料保険とスポーツ傷害保険、日常傷害保険から始めています。
個人間でグループをつくるP2P保険としては日本初の仕組みですから、補償内容はまず使いやすそうなものを優先し、スキームの有効性確認、ユーザーからのフィードバックを優先しています。


Q 今後はどんなことを考えていますか?

本当にやりたいことを実現するために長期戦略を立てています。事業戦略上、現時点で詳しいことは言えないのですが、今まで満足な補償を受けて来れなかった人たちをサポートしたいと思っています。


Q 一つくらい教えてもらえませんか?笑

東京都金融賞において既に公表している内容ではありますが、1つだけ。例えば、犬のペット保険があります。
犬は長年人間のパートナーであり、いまや家族同然の存在になっています。私の母もそうですが、犬のあの癒しはこれからの社会生活に欠かせないものだと思います。
一方、犬は犬種ごとにそれぞれ疾患が違うのですが、現在のペット保険では必ずしもその全てがカバーできるわけではありません。我々は犬種ごとに飼い主様が満足できるような補償内容を開発し、提供していきたいと思っています。
同じ犬種を飼う人々が普段からコミュニティで情報交換し、その日起きた楽しいことをシェアをしたり、困った時の相談をしたり、時には悲しいことを慰めあったり。理想をいうと、そんなふうに使ってもらえるコミュニティサービスをつくりたいです。
そしてそんな理念に共鳴してくださった事業連携パートナーにはrakanu(ラカヌ)さんがいます。


Q今まで何故そのようなサービスがなかったのですか?

保険には「大数の法則」*という大原則があります。特定の事柄にフォーカスすると、その母集団を正しく反映したとは言えず、保険料の算出をすることが出来ません。したがって特定分野に特化した保険が無かった、あるいは少なかったのは至極当然のことだと思います。
一方、我々は、テクノロジーが高度に発達した今日においては、その技術を活用することである特定のエリアにフォーカスしても助け合いが成立するのではないかと考えています。
したがって、月並みな結論とはなりますが、テクノロジーが進化したことがその理由ではないかと思います。
*大数の法則とは、数件のサンプルではなく、より多くのサンプルを収集・分析することによって見えてくる一定の発生確率や法則のこと


Q Frichが目指すビジネスとは具体的にはどのようなものですか?

よくAmazonのロングテールのコンセプトと比較してもらいます。Amazonが登場する前、本は、ベストセラーで人気のある本なら近所の本屋で容易に買えました。しかし、お店に無い本や専門書は、取り寄せしたり、神田や神保町の古本屋街で買っていたわけです。
Amazon以前は、ほとんどの書店にとって、古本屋街にあるような専門書やニッチ本に棚をさくのは非効率であり、売れ筋を前だした方が効率的であったわけです。
しかしAmazon登場以降は、プラットフォームに商品を掲載するだけでよくなり、古本屋街が取り扱うようなロングテール商品がビジネスに乗ってくるようになった。
プラットフォーマーであるAmazonからしてみても、ロングテール商品の一つ一つは小さな小さな利益しか産まないが、全てを合算すると、実は売れ筋商品中心の売上よりも大きな金額であることに気づいたわけです。
Frichのプラットフォームの真髄は、まさにこのAmazon型のロングテールを狙うということに尽きます。
クリス・アンダーソン氏によってロングテールの概念が出たのが2006年、今から14年も前です。保険についても遂にそこに辿り着いたのかなと思います。


Q ロングテールですか、なるほど。どんな技術が必要だとお考えですか?

ロングテールを支えるのはビッグデータ、AIです。既に弊社にはそのプロもいます。ということで詳しくはまだちょっと、、、笑


Q もう少しだけ。

あははは、、笑笑
プロダクトは順次アップデートしますので、そちらでご確認いただければと思います。


Q ではFrichプラットフォームの技術的な特徴は?

P2P保険はもともと行動経済学をベースに作られた仕組みです。
その肝はというと、それは予防、保険会社からするとロスプリベンションです。事故防止を図ることはすなわち保険金支払いの減少に直結し、保険会社の支出削減に貢献するわけです。そうすると、支払わなくて済んだ保険金分を原資として無事故時の割引も検討しやすい。そしてなによりユーザーにとっては、事故そのものを防止できるメリットがあります。


Q 大事なポイントだと思うので、もう少し詳しくお願いします。

従来、保険というものは、保険会社に対して不特定多数の加入者という構造でした。実際、弊社以外のP2P保険は、国内外問わず、保険会社やブローカーに対して加入者という構造がほとんどです。しかし弊社はあくまでプラットフォームにこだわっており、そのプラットフォーム上で既に繋がりのある個人と個人がグループをつくり、そのリスクを保険会社が引き受けるという構造になっています。
先程の犬のペット保険の例で言えば、フレンチブルドックの飼い主同士がグループをつくり、総じて疾患の多い我が子たちに対して、どんな症状のときは気をつけなきゃいけなくて、どんなことをしておくべきなのか、どんな状態になったら病院に行くべきかなどを共有することで、万一の事態を効果的・効率的に回避できるのだと思っています。


Q ノウハウを共有することで予防促進するということですね。

そうですね。


Q ノウハウを共有するインセンティブって何ですか?

無事故の場合、翌契約期間に保険料が割引になるという経済的インセンティブをおいています。しかし、そもそも社会的な繋がりをもつ仲間同士のグループなのだから、経済的なインセンティブを超えて、お互いの事故予防のために純粋に行動する方々が多いのではないかと推測しています。


Q みんなで予防すれば保険料が安くなる、と。僕も入ろうかな笑

とはいえ、極端な話、そのグループが1万人とか10万人とかになると、いかに社会的なつながりがあるとはいえ、そうしたロスプリベンションの仕組みはワークしないと考えています。また、Frichの場合、法的にも1,000人以上のグループは認められていません。
海外では10~15人程度のグループが最も有効であるとの実証結果が出ているようですが、我々としては、日本人の特性を加味すると、20-30人くらいが適切な人数なのかなと推測しています。


Q 海外ではブロックチェーンを使ったインシュアテックスタートアップもありますよね?Frichはいかがですか?

技術者はいますねー笑


Q またこのくだり笑

真面目な話をすると、ブロックチェーンありきでなく、ブロックチェーンが必要になるタイミングで必要なことをしたいと思っています。今はそのタイミングではないと思っていますけれども。


Q 保険APIはどうですか?

対応してはいます。


Q あ、これはすぐ笑。では保険APIで顧客獲得していくと?

保険会社観点で見ると確かにそうしたいところですが、いわゆる大企業の事業開発をしてきた経験からすると、結構ハードルが高いのではないかと考えています。その辺の話はまたこんど笑


Q では話を変えて。以前発表されたPlug and Play Japan (PnP)からの出資について、狙いや背景などを教えてください。

もともとPnPは弊社創業の地でした。そのご縁でアクセラレータープログラムBatch1に採択していただき、ありがたいことに、PnPにとっては日本初となる投資先に弊社を選んでいただきました。
弊社は創業以来いままで、法律面の整理とシステム開発に特化してきたわけですが、今後は事業連携を中心とした対外的な活動を本格化させていこうと思っています。
したがって、世界有数のアクセラレーターかつベンチャーキャピタルであり、大企業とのオープンイノベーションを得意するPnPは、まさにうってつけのパートナーであったわけです。
PnPの国内外の大企業ネットワークを通じ、事業面では、Frichというプロダクトの有する可能性に共感していただける方々と、今までにないワクワクするようなイノベーションを起こしていきたいと思っています。


Q 今後がとても楽しみですね。では最後にFrichに興味を持った方々へひとこと。

経済合理性だけでなく、保険というものが有する公益性を忘れずに、ユーザーにとって本当に必要なものとは何かを考えていきます。
我々のチャレンジはとても壮大で、ひょっとしたら時間がかかるかもしれません、しかしメンバー一同、高い志をもって取り組んでいきます。
そんな我々に、どんな形であれご興味をお持ちいただけましたら嬉しいです。また、ユーザーとしてであれ、提携先としてであれ、皆さまと何らかの形で関わることが出来るようでしたら嬉しいです。

今後ともご支援の程どうぞよろしくお願い致します。

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