「PoC墓場」という言葉が、業界の共通語になりつつあります。
オープンイノベーションに取り組む大手企業の担当者と話すと、「スタートアップと複数のPoCを進めているが、どれも本格展開に至っていない」という声が、業種を問わず繰り返し出てきます。
PoC自体は成功している。技術的には証明できた。でも、事業化に進まない。
なぜ、「PoCの先」に進めないのか。この問いは、オープンイノベーションに関わる多くの担当者が抱える、共通の課題です。
問題は、技術ではなく「最初の出会い方」にある
PoCが事業化に繋がらない理由を、多くの担当者は「社内説得が難しい」「予算が取れない」「事業部が動かない」と語ります。
でも、根本を辿ると、答えはもっとシンプルです。
「評価するための出会い」から始まったから。
スタートアップとの最初の接点が「技術検証」であれば、ゴールも自然と「技術の有効性を確かめること」になる。PoCが成功した瞬間、そのプロジェクトは「完了」になってしまいます。
事業化できる会社はどこが違うか。彼らは、「事業の課題を解決するために、誰と組むべきか」を問いの出発点にしています。技術から入るのではなく、課題から入る。その順番の違いが、ゴールの設定を根本から変えます。
「担当者の熱量」だけでは、壁を越えられない
もう一つ、見逃されやすい問題があります。
PoCを推進している担当者は、往々にして「その会社のスタートアップへの熱量を一人で背負っている」状態にあります。担当者が動いているうちはPoCが進む。でも、事業化の判断が必要な段階で、「それは経営が決めること」「事業部長の承認が必要」という壁が現れる。
そのとき、担当者一人では越えられません。
事業化できる会社には、必ずと言っていいほど「事業部側に、この取り組みを自分ごととして引き受ける人間」がいます。経営層でなくても構わない。でも、CVC担当者とは別に、事業側の誰かが「これを前に進める理由」を持っている必要があります。
この構造が生まれるかどうかは、スタートアップの技術力でも、PoCの結果でもない。どんな場で出会い、どんな文脈で関係を積み上げてきたかで、ほぼ決まります。
BASECAMPが設計していること
私たちFIRST CVCが運営するコミュニティ「BASECAMP」は、この問題に対して一つの答えを出そうとしています。
鉄道・航空、エネルギー、ファッションなど、業界別のFORUMを重ねる中で、参加する事業部の担当者は、スタートアップと「評価する・される関係」ではなく、「同じ課題に向き合う関係」として出会います。
他社CVCの葛藤を聞き、スタートアップの事業観を知り、「この会社となら何かできる」という感触が先に生まれる。PoCはその感触を確認するプロセスになる。だから、成功したあとに「ではどう進めるか」という議論に、自然と入っていける。
出会いの設計が変われば、PoCの意味が変わります。
「検証を終わらせる」のではなく、「関係を前に進める」
CATALYSTのAIマッチングが「どの会社と組むべきか」の候補を絞り込む一方で、私たちが大切にしているのは、その先の「どう関係を育てていくか」です。
AIが数千社のスタートアップデータを解析して候補を出す。BASECAMPのFORUMで、その候補と事業部の人間が直接対話する。対話の中で、双方が課題の深さを理解し合う。
このプロセスを経てはじめて、PoCは「技術検証」ではなく「事業連携の入り口」になります。
PoCで終わる会社と、事業化できる会社の分かれ目は、能力や予算の問題ではありません。「出会いに至るまでの設計」が、そもそも違うのです。
その設計を変えることに、私たちは取り組んでいます。
BASECAMPで積み上げてきた580社・2,000名のコミュニティと、CATALYSTが生み出すデータの精度が揃ったいま、オープンイノベーションの成果を「PoC止まり」で終わらせない仕組みが、ようやく形になってきたと感じています。
PoCを「技術検証の終着点」ではなく「事業連携の起点」に変える仕組みを、私たちと一緒につくりませんか。