CVCコミュニティを運営していると、ある場面に何度も出くわします。
「同じ悩みを抱えている人が、こんなにいたとは思わなかった」
初めて顔を合わせた鉄道会社のCVC担当者と航空会社のCVC担当者が、互いの葛藤を打ち明け合う。
ファッション企業の事業開発担当が「社内でAI活用が承認されない」と口にした瞬間、他の参加者が大きくうなずく。
エネルギー系CVCの担当者が「出資を目的にしすぎていた気がする」と振り返るとき、場の空気が変わる。
こうした瞬間を積み重ねてきた中で、私たちが確信したことがあります。
業界の中にいる人ほど、業界の外に話せる場を持っていない。
「とりあえず開催する」イベントには限界がある
BASECAMPはこれまで、CVC・スタートアップ・VCが集うコミュニティとして、500社以上のCVCと接点を持ってきました。その中で見えてきたのは、「出会いの場」そのものは増えているのに、「成果につながる出会い」はまだ少ない、という現実です。
大規模なカンファレンスに出席したとしても、名刺交換で終わる。業界横断のイベントに参加しても、自社との接点が見つからないまま帰路につく。そういった経験をしている担当者が、決して少なくありません。
問題は、参加者の質ではありません。設計の問題です。
「業界別FORUM」は、そうした課題意識から生まれました。
同じ文脈を持つ人たちが、本音で話せる場
業界別FORUMの出発点にあるのは、シンプルな問いです。
「同じ文脈を持つ人同士が、安心して本音を話せる場があれば、対話の質は変わるのではないか」
鉄道・航空、ファッション、エネルギー・脱炭素。これまで複数の業界でFORUMを開催してきましたが、毎回共通して起きることがあります。それは、「課題を打ち明けることへの安心感」です。
完全招待制という設計がその土台になっています。競合他社の目を気にせず、成功事例だけでなく失敗や葛藤も共有できる。「CVCをやらないという立場だった」という告白も、「社内説得の壁がどうしても越えられない」という本音も、この場では自然に出てきます。
同業他社が「同じことで悩んでいた」と知るだけで、次の一手が見えることがある。そういう化学反応が、各回のFORUMで生まれています。
単一のイベントではなく、プラットフォームとして
業界別FORUMは、「一回開催したら終わり」の企画ではありません。
各業界で継続的に開催し、参加者が回を重ねるごとに関係を深め、議論が積み上がっていく。そういう設計を意図しています。
初回のFORUMで「お互いの立場の違い」を整理し、次回で「共通の課題への取り組み方」を議論し、その先では「具体的な協業の可能性」を検討する──そういうステップが自然に生まれていく場をつくりたいと考えています。
さらに、業界をまたいだ対話も重要です。ファッション業界が抱えるサステナビリティの問題を、エネルギー系CVCが別角度から見ることで、予想外の接点が生まれることがあります。単一業界の深掘りと、業界を越えた横断対話。その両方が揃ったとき、FORUMは「コミュニティのインフラ」として機能し始めます。
「問いを持ち寄る場」であり続けること
BASECAMPがFORUMを通じて目指しているのは、「答えを提供すること」ではありません。
移動インフラを担う企業が次の100年をどう描くか。ファッション業界が環境価値と経済合理性をどう両立させるか。エネルギーの脱炭素化をビジネスとして持続させるには何が必要か。これらの問いに、今すぐ答えは出ません。
でも、同じ問いを抱える人たちが定期的に集まり、安心して話し合える場があることで、少しずつ前に進める。その積み重ねが、業界全体のオープンイノベーションを動かしていくと信じています。
業界別FORUMは、私たちにとって「コンテンツ」ではなく「インフラ」です。
そのインフラをつくり続けることが、BASECAMPの役割だと考えています。