エネルギー業界は今、静かに、しかし大きく変わろうとしています。
脱炭素・GX・水素・CCUSといった言葉が飛び交う一方で、 「本当に事業として成り立つのか」「社内で予算を取れるのか」という問いが、 多くの企業の現場担当者の頭の中にあり続けています。
5月21日、BASECAMP エネルギー・脱炭素フォーラムに、 エネルギー系CVC・事業開発担当者が集まり、 その問いをテーブルに乗せて、本音で語り合いました。
拡大から健全化へ
冒頭、FIRST CVCから投資市場の動向が共有されました。
コロナ禍の金融緩和を経て急拡大したエネルギー・気候テック領域への投資は、 その後の引き締めとともに大きく冷え込み、業界として傷が残る時期が続いています。
一方で、「技術とビジネスの両方を正しく評価できるプレイヤーだけが残った」という意味で、 市場は健全化に向かいつつあるとも言えます。
グローバルの機関投資家の日本への関心も高まっており、 この変化の中にチャンスを見出す動きも出ています。
技術より事業性
FIRST CVCから、実際の海外投資先を例に投資基準が紹介されました。
CCUSやEVモビリティといった領域の企業を取り上げながら、
「優れた技術があっても、需要側からビジネスを組み立てられているかどうか」を 最初の判断基準として重視している、という視点が共有されました。
地政学リスクや補助金依存の問題も話題に上がり、 「スケールできる事業かどうか」を段階的に見極めることの重要性が語られました。
現場の「本業との距離感」という壁
フォーラムの議論が深まるにつれ、参加者から共通の課題が浮かび上がってきました。
それは「本業とのシナジーの難しさ」です。
大規模なインフラや顧客基盤を持つ企業ほど、 「理論上は連携できるはずのアセットが、 実際には動かしにくい」 という壁にぶつかる、という声が複数挙がりました。
既存事業が高度に最適化されているがゆえに、 新しいプレイヤーを組み込む余地が小さい。 専属で動ける人材がいない。 インセンティブ設計が追いついていない。こうした組織的な課題が、 スタートアップとの連携を難しくしている実態が語られました。
また、本業の規模が大きい企業ほど、新規事業の成果が「小さく見えてしまう」という 社内の意義付けの問題も共通のテーマとして浮かび上がりました。
長期的な視点でCVC活動を続けていくために、 経営層を含めたコミットメントをどう設計するか ─ これは、エネルギー系企業に限らず、多くのCVC担当者が抱える問いです。
出資はゴールではない
議論の中で印象的だったのは、「出資しなくてもいい」という発言が複数あったことです。
「スタートアップとの連携を、出資という形式にこだわりすぎてきたかもしれない。 コミュニケーションをどう設計するかが本質であって、 そこに固執すると逆にデメリットが生まれることもある」
実際に出資なしでスタートアップの素材を活用し、 バイオ由来の保冷剤を大手食品トレーメーカーへ展開するという 事業連携の事例も紹介されました。 「出資せずに連携できた事例のほうが、むしろ動きが速かった」という声も。
出資は手段のひとつであり、目的ではない。 長期的なコミットメントを社内で維持するには、 戦略的なシナジーだけでなく、 財務的なリターンも示せる構造が必要である、 という認識が参加者の間で共有されていきました。
環境性と経済合理性の両立
脱炭素・サステナビリティ領域に共通する本質的な問いが、 フォーラムの後半に浮上しました。
「環境にいいものは、どうしてもコストが高い。 通常の2倍の価格では、どれだけSDGsに熱心な企業でも採用し続けられない。市場として本当に成立するためには、補助金に頼らない収益構造が必要だ」
水素サプライチェーンの構築を検討している企業からは、 「規制が多すぎて、新しい技術を取り入れるたびに膨大なインフラ整備が必要になる。 それが事業化を遅らせている」という課題感も共有されました。
また、「社会的な価値と消費者が実際に感じる価値のギャップ」も大きなテーマでした。 「環境価値がB2Bの取引には評価されても、 最終的な消費者に届かなければ、 ビジネスとして持続しない」 というリアルな問いが、参加者の共感を呼びました。
BASECAMPが生み出す「本音の対話」
このフォーラムで何度も繰り返されたのは、「同じ悩みを抱えているとは思わなかった」という声でした。
エネルギーという巨大な業界の中にいると、隣の会社が何を考えているかは見えにくい。 CVC活動の手応えも課題も、社外に語る機会がなかなかありません。
BASECAMPのフォーラムは、そうした「言えなかったこと」を安心して話せる場として機能しています。 成功事例だけでなく、失敗事例や葛藤も含めて共有されたこの日の対話は、 参加者それぞれが「次の一手」を考えるヒントになったはずです。
エネルギー・脱炭素領域のCVC活動は、まだ答えが出ていません。
それでも、問いを持ち寄って議論できる仲間がいる。
その価値を、BASECAMPは大切にしていきます。