はじめまして。佐藤carboと申します。
私は今、RPA(※)技術に携わって7年目を迎えましたが、その第一歩を踏み出した1年目は、今でも鮮明に記憶に残っています。
(※RPA:「Robotic Process Automation」の略語。パソコンで行っている様々な作業を自動化できるソフトウェアロボット技術)
私がRPAに出会ったのは、まさに新しい技術に挑戦することに恐れを抱いていた時期でした。
お客様先に初めて入った瞬間、目の前に広がる新しい環境に胸が高鳴る一方で、何も知らない自分に対する不安が押し寄せてきました。
これからのストーリーは、私がどのようにして新しい技術に挑戦し、苦労を重ねながら成長していったのか、その過程を振り返るものです。
メンバーのみんなやお客様と共に、多くの困難や失敗を乗り越えながら、少しずつ成長していく姿をお見せしたいと思います。
転職を考えている方や、新しい技術に対して不安を感じている方にとって、私の経験が何かのヒントになれば幸いです。
『やってしまった…』──真っ青になったある日の午後
皆さんは業務の中で、重大なミスに気づいた瞬間、全身の血の気が引いた経験はありますか?
私にとって、その瞬間は今でも鮮明に記憶に残っています。これは、私がRPAを使って最初に任された案件での失敗のエピソードです。
2017年7月、私は国内でも屈指の規模を誇る大手企業の経理業務効率化のため、立ち上がったばかりのRPA開発プロジェクトに参画することになりました。
当時はまだお客様も「RPAとはどんなものか」手探りな状態で、プロジェクトは私ともう1人のメンバー、そしてお客様1名の計3名という少人数で始まりましたが、その背景には多くの部署や関係者が関わっており、私たちには大きな責任がのしかかっていました。
環境の構築を終えたある日、早速初めての案件のご依頼を受けました。ある業務情報を取得し、指定日に対象の社員の方々に対してメールで確認や督促を行うという業務を自動化したい、というご依頼です。
この規模の企業だからこそ、1つのプロセスでも業務効率化の影響は非常に大きく、プロジェクトが始まった当初は、期待と不安が入り混じった気持ちでいっぱいでした。しかし、同時に「これを成功させれば、業務が大幅に効率化され、RPAの良さが浸透していく一歩となるはずだ」という希望もありました。
開発が進む中、私たちはテストを繰り返し、ようやく自動化の仕組みが完成に近づいてきました。ところが、その瞬間は訪れました。
──「あっ…!」
ある日の午後、私はその重大な失敗に気づいたのです。
RPAによる業務自動化の大事な最初の一歩。この案件の評価によって今後のRPA展開が決まっていくといっても過言ではない、そんな状況でのミス。
ミスの詳細は控えますが、それに気が付いた瞬間、全身から血の気がサッと引く感覚が走りました。息を飲む音さえも耳鳴りにかき消されるほど、その瞬間は長く、重く感じました。頭の中で、何が起きたのかを理解しようとするものの、ただ心臓が早鐘のように打ち鳴るばかりです。手元のマウスを握る手には、じっとりと汗が滲み、手のひらに伝わる感触が妙に鮮明に感じられました。
自分の失敗に気づいた私は、慌ててお客様に連絡を取り謝罪しました。お客様は、すぐに各部署に個別に電話して謝罪してくださり、なんとか事なきを得ましたが、そのときの焦りと申し訳なさは今でも忘れられません。
そんな苦労もあったものの、私たちはプロジェクトを続けました。お客様やもう1人のメンバーと共に改善点を洗い出し、コミュニケーションを重ねることで、最終的にはロボットを無事に完成させ、リリースを迎えることができました。リリースの日、私たちの努力が形になった瞬間は、喜びと達成感に満ちていました。
運用開始からしばらく経ったある日、お客様から嬉しい言葉をいただきました。実際に使用されているユーザー様が「このRPAがとても役に立っている」と言っていたとご連絡頂いたのです。そのお言葉は、私にとって何よりの励みになりました。あの失敗に気がついた瞬間の恐怖や、プロジェクトを通じての苦労も含めて、今の私を形成する大切な経験です。
このプロジェクトを通じて得た経験は、私のRPA開発に対する理解を深めただけでなく、チームとしての絆も強化されました。そして、リリースを迎えたその年の内に、さらに2つのロボットを作成する機会をいただきました。これらのプロジェクトでは、今回の失敗の経験を活かしつつ、新たな挑戦にも積極的に取り組むことができました。
結果として、1年目は6ヶ月で3つの業務を自動化することができ、「RPAとは何なのか」という手探り状態から立ち上がったプロジェクトでしたが、その中で確かな1歩を踏み出すことができたのです。
次回:「仲間との責任転嫁合戦──言い争いから見えた成長のカギ」
次回のエピソードでは、同時期に入った仲間との責任転嫁合戦についてお話しします。言い争いの中で、私たちがどのような苦労を経験し、そこから何を学んだのかを振り返ります。
2年目のエピソードもぜひお楽しみに。