【入社エントリ】20代でサイバー子会社役員、海外経験も経た執行役員が語る。HR業界の不合理を仕組みで変革し、「キャリアセンターのDX化」に挑む理由。
新卒でサイバーエージェントに入社し、子会社の取締役に20代で就任。その後、フリーランスとして海外移住も経験し、前職では執行役員として事業を牽引──。華々しいキャリアを歩んできた鈴木さんが次なる挑戦の場として選んだのは、3名のスタートアップ、Spiristarでした。
人材業界が抱える根深い課題。多くの企業が学生獲得競争に疲弊する中、彼はSpiristarのビジネスモデルに「業界の構造そのものを変えうる可能性」を見出したと言います。
一貫して「人の可能性」に向き合い続けてきた彼が、キャリアの集大成としてSpiristarを選んだ理由とは。その決断の裏にあった独自の哲学、そして「キャリアセンターのDX化」によって実現したい未来について、深く伺いました。
鈴木 拓 / 執行役員
東京工業大学を卒業後、2013年に新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。半年後、子会社である株式会社CA Tech Kidsに出向し、小学生向けプログラミング教育事業の立ち上げに参画。1年目にして執行役員、後に取締役に就任し、6年半にわたり事業創造から組織拡大までを牽引した。30歳を機に退職し、フリーランスとしてエストニア、長崎など国内外を移住しながら活動。その後、人材業界に強い関心を抱き、株式会社Cheer(チアキャリア)に執行役員としてジョイン。2024年6月よりSpiristarに参画し、「キャリアセンターのDX化」をミッションとした新規事業開発を担う。
宇宙飛行士を夢見た学生が「人のスイッチを押す」と決めた原体験
宇宙飛行士を目指していた時代の一枚
ーーまずは、鈴木さんのこれまでのキャリアについてお伺いしたいです。新卒でサイバーエージェントに入社されていますが、もともとIT業界や「働く」ことへの関心が強かったのでしょうか?
いえ、実は大学時代、もともとは宇宙飛行士を目指していたんです。そのために一浪して東京工業大学の地球惑星科学科に入ったのですが、いざ勉強を始めてみると、想像していた宇宙のロマンとは程遠く、正直まったく面白く感じられなくて。目標を見失い、一時期はバイトとサークルだけの日々を送る、いわゆる“堕落した大学生”になっていました。
ーーそこから、どのようにしてキャリアへの意識が芽生えたのですか?
転機になったのは、ある日Twitter(現X)で宇宙飛行士選抜試験のファイナリストだった方を見つけたことでした。その方が「JAXAの一般公開日に、宇宙好きで集まって飲みませんか?」とツイートしているのを見て、勇気を出して参加してみたんです。
その日、知らない土地へ行って、JAXAの職員さんやファイナリストの方、同じ志を持つ人々と話した経験は、僕の人生を180度変えました。それまでゴロゴロしていた日常から一歩踏み出しただけで、情報、人脈、そして新しいチャンスまで、信じられないほど多くのリターンがありました。「ちょっと行動するだけで、こんなに世界って広がるんだ!」と、まさに人生のスイッチが入った瞬間でしたね。
その日を境に、僕は人が「イキイキと輝く瞬間」に強い関心を持つようになりました。僕自身がそうだったように、何かのきっかけで人のスイッチは入る。そして、僕が自分の活動をSNSで発信すると、それに刺激を受けて「自分も動いてみようと思った」と言ってくれる友人が現れて。それが本当に嬉しかったんです。
この原体験から、「人が目を輝かせながらイキイキと働く、その“スイッチを押す”きっかけをサービスとして作りたい」と考えるようになり、それが実現できそうな環境として、当時から新規事業に積極的だったサイバーエージェントを選びました。
0→1の熱狂、そして理想と現実の乖離。自分だけの「幸せの物差し」を見つけるまで
小学生向けプログラミング教育事業での一枚
ーーサイバーエージェント入社後は、すぐに子会社で事業の立ち上げを経験されたそうですね。
はい、入社半年で「小学生向けのプログラミング教育事業を立ち上げるから、やらないか」と声をかけてもらい、3人ほどの小さな組織に出向しました。そこでは事業計画からカリキュラム開発、先生の採用・育成、拠点展開まで、文字通りゼロから事業を創り上げる経験をさせてもらいました。
無我夢中で働き、サイバーエージェントで新人賞をいただいたり、1年目の終わりには執行役員という肩書もいただきました。何もないところからサービスが形になり、世の中に価値を提供していく。そのプロセスは本当にチャレンジングで楽しかったです。
ーー順風満帆なキャリアに見えますが、なぜその環境を離れる決断を?
事業が安定し、運用フェーズに入ったとき、ふと「自分は今、幸せだと言えるだろうか?」と違和感を覚えたんです。0→1のチャレンジングな環境にやりがいを感じていた僕にとって、運用業務は少し物足りなく感じていました。
同時に、20代後半になり、周りと同じように良い家に住み、良いものを食べるといった、いわゆる“ランク”を上げていくような生き方にも疑問を感じ始めました。この延長線上に、僕が本当に望む未来はないかもしれない。そう感じ、約7年お世話になった会社を辞めることにしました。
ーーその後、フリーランスとしてエストニアに移住されるという、大きなキャリアチェンジをされていますね。
会社を辞めたものの、次に何をしたいかは全く決まっていませんでした。ただ、自分の力を試したいという思いと、海外で暮らしてみたいという憧れだけがあった。そんな時、知人の起業家から「エストニアとか行ってみたら?」と冗談半分で勧められ、「行ってみたらなにか変わるかもしれない!」とほとんど勢いで移住を決めました。
エストニアでの生活は、僕の価値観を根底から変えました。物価が安かったこともあり、月15万円もあれば十分に幸せに暮らせたんです。東京でがむしゃらに働いていた頃とは対照的に、心に余裕が生まれ、「幸せってお金や地位じゃないんだ」と心から思えました。この経験を通じて、お金への執着がなくなり、改めて「自分は何をしたいんだっけ?」と向き合う時間ができました。
エストニア時代のお写真
ーーその後のキャリアで、いよいよ人材業界へと足を踏み入れます。
フリーランスとして様々な生き方をする人々と出会う中で、やはり自分の関心は「人のキャリア」にあると再認識しました。そして、よりど真ん中でキャリア支援に携わりたいと考え、前職の株式会社Cheerにジョインしました。
そこでは執行役員として、学生と企業を繋ぐ事業に深く関わりました。初めて本格的に人材業界に飛び込み、その面白さと同時に、業界全体が抱える構造的な課題について深く考えるきっかけを得ました。
ーー具体的には、どのような気づきがあったのでしょうか?
人材業界で働く中で、ある種のジレンマに気づいたんです。多くの人材紹介サービスでは、事業として売上を追求する以上、どうしても自社が契約している企業へ学生さんを紹介することがゴールになりがちです。そうなると、時に「一人ひとりの学生に最適な選択肢を」という本来の目的から外れ、利益を優先しなければならない場面があるのではないか、と。
また、これは企業や個人の想いで解決できる問題というよりも、業界が抱えるビジネスモデル上の構造的な課題なのだと感じました。僕自身が大切にしている「関わる人すべてが幸せになる“Win-Win-Win”」の状態を心から実現するには、この構造そのものにアプローチする必要がある。そう強く考えるようになり、新しい挑戦の道を探し始めました。
答えは「仕組み」にあった。人材業界の構造的欠陥を乗り越えるSpiristarの慧眼
前職で就活支援してきた方々とのお写真
ーーそして、Spiristarと出会うんですね。入社の決め手はどこにあったのでしょうか。
Spiristarのビジネスモデルを知った時、純粋に「すごいな」と感動したんです。僕が前職での経験を通じて感じていた業界の構造的な課題を、根本から解決しうる可能性を秘めていると感じました。
一番のポイントは、大学のキャリアセンターと深く連携している点です。Spiristarでは、キャリアセンターにご紹介いただいた学生“のみ”支援をしているんです。
ーー大学と深く連携していると、なぜ本質的な支援に繋がるのでしょう?
キャリアセンターからご紹介いただいた学生のみに支援を限定しているため、私たちの活動は常に大学側の目に触れ、透明性の高い状態にあります。そうすると学生に対して不義理なことを行えば、すぐに信頼を失い、事業が成り立たなくなります。この良い意味での緊張感が、私たちの想いを純粋な形で学生に届け続けることを、構造的に後押ししてくれるのです。
根本、Spiristarには「学生一人ひとりに、本気で向き合いたい」という強い想いがあります。その想いをビジネスとして成立させ、決してブレさせないための仕組みが、この大学との協力関係なんです。
ーーなるほど。「人の善意」ではなく「仕組み」で誠実さを担保している、と。
まさにその通りです。「性弱説」という考え方が好きなのですが、これは「性善説」でも「性悪説」でもなく、「そもそも人間は弱い生き物だ」という考え方です。財布が忘れ物として落ちているときに盗んでしまう人がいるのは、その人が悪いのではなく、財布を忘れてしまう「設計」「構造」「仕組み」が悪いのだ、と。
人材業界も同じで、「想いを持った人を集めよう」だけでは限界がある。働く人が悪いのではなく、無理なKPIや利益追求に走らざるを得ない仕組み自体に問題がある。Spiristarは、その「仕組み」自体を、大学との連携によってクリーンなものに変えようとしている。僕がずっとやりたかったけれど、どうすればいいか分からなかったことの答えが、ここにありました。
誠実さこそが、最強の戦略。仲間と描く「キャリアセンターDX」の未来
ーー現在、Spiristarでは「キャリアセンターのDX化」を進める事業を担われています。この事業で何を目指しているのでしょうか?
僕らが目指しているのは、直接学生にアプローチすることではなく、「キャリアセンターの底力を上げること」です。就職活動を一人でうまく進められる学生がいる一方で、誰かのサポートがないと動けない学生も大勢います。世の中の人材サービスは、どうしても前者の優秀な学生ばかりを狙いがちです。
僕らは、後者の、本当にサポートを必要としている学生たちにこそ価値を届けたい。そのために最も効果的なのは、学生にとって一番身近な相談相手であるキャリアセンターの機能を進化させることだと考えています。僕らが持つ知見やネットワークをシステムを通じて提供し、キャリアセンターの職員の方々と一緒になって、学生の就活体験をより良いものにしていく。それが「キャリアセンターDX」の目指す世界です。
ーー事業を進める上で、大切にしていることはありますか?
「急がないこと」ですね。この事業の主役は、あくまでもキャリアセンターの方々です。僕らが「良いものを作ったから導入してください」と押し付けるのではなく、彼らが本当に抱えている課題を洗い出し、一緒に解決策を考えていく。そのプロセスには時間がかかりますが、信頼関係なくしては成り立たない事業なので、その「誠実さ」を何よりも大切にしています。下手に急いでしまえば、一瞬で信頼は崩れてしまう。この慎重な歩みこそが、僕らの最大の戦略だと思っています。
ーー最後に、この記事を読んでいる未来の仲間にメッセージをお願いします。
Spiristarがやろうとしていることは、自分たちの利益のためだけに動いた瞬間に崩れてしまう、非常に繊細なビジネスモデルです。だからこそ、心から「人の役に立ちたい」という利他的な想いを持った方と一緒に働きたいと思っています。
また、僕らは血みどろのレッドオーシャンで戦うのではなく、新しい市場、新しいルールを創っていく会社です。競争ではなく、共創。差別化ではなく、全く新しい価値の創造。そんなチャレンジにワクワクする方にとって、最高の環境だと思います。
Spiristarはまだ小規模な組織です。だからこそ、一人ひとりの強みを活かし、全員がイキイキと働ける会社を、これからみんなで作っていきたい。僕らのビジョンに共感し、一緒に未来を創ってくれる仲間に出会えることを、心から楽しみにしています。