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大手部品メーカーの研究者がベンチャーでマーケティングを一から構築した方法

株式会社400Fの古見です。このnoteではこの1年間で私が株式会社400Fというスタートアップ企業で行ってきたマーケティング活動について紹介します。

実は、私は正式には400Fの社員ではなく、とある大手部品メーカーの研究開発部門に所属しています。大企業ではなかなか実現できない新規事業の立ち上げを実際に経験するべく、人材育成を目的として1年間の期間限定で400Fのメンバーとして活動をしてきました。

詳細はこちらから
https://loandeal.jp/case/10874

今回は、研究開発職の人間がその環境から飛び出し、スタートアップ企業という全く異なる環境で、全く経験のないマーケティングを一から構築してきた話をまとめています。

スタートアップ界隈や、新規事業の立ち上げでマーケティングに携わっている方の参考になれば幸いです。

◆ 400Fが提供するサービス「お金の健康診断」の紹介

マーケティングの話の前に、まずは400Fが提供するサービス「お金の健康診断」に関して簡単に紹介します。

「お金の健康診断」とは、お金に関する様々な悩みを抱えるユーザーがオンライン上でお金の専門家に無料で相談できるプラットフォームです。

家計状況や家族構成などの基本的な情報を入力することで、家計の健全度を診断することができます。その後、各個人の家計の問題点や悩みに対してお金の専門家からチャット上でアドバイスをもらうことができ、必要に応じてチャット上で専門家に相談することができます。お金の悩みを抱える人と、その悩みを解決できる専門家がマッチングできるWEBサービスになります。

お金の健康診断はこちら
https://okane-kenko.jp/

私が、400Fに移籍した当時(2020年3月)はまだお金の健康診断というサービスがリリースされて間もない頃で、本格的なユーザーの集客に関してはまだてがつけられていない状況でした。また、マーケティングを担当する組織や人材も全くいない状況で一から集客を担当することになりました。

◆ マーケティング活動としてやったこと

マーケティング部の目標は、「ユーザーにお金の健康診断を認知してもらい、サービスを利用して最適な専門家とマッチングしてもらうこと」です。

その目的のもと、マーケティング活動として主にこの1年リソースを使ったのは以下の2点です。

① オウンドメディアの運営、活用
② WEB広告の運用

他にもインフルエンサーとのタイアップ企画や、大企業との提携などもありますが、現在集客に大きく・継続的に貢献しているのは上記2つの施策であり、この2点がマーケティングの成長に大きく影響しています。

① オウンドメディアの活用

オウンドメディアとして、「オカネコ」というお金の専門メディアを立ち上げ、運用を開始しました。主に、提携するファイナンシャルプランナーの方に記事を書いていただき、それをこちらで編集するという体制で継続的に掲載を行ってきました。

https://mag.okane-kenko.jp/

当初はPV数が1日数件というレベルでしたが、現在では1日数千件〜数万レベルにまで成長しています。

開始直後はかなりのペースで記事を量産し投稿を続けていましたが、たまにSmartNewsで上位表示されるスマニュー砲によってPV数が爆発的に増えることはあっても、継続的なPV数は確保できませんでした。しかし、上記3点の影響に加えて、Googleが2020年5月に行った大幅なアップデートの影響がかなり良い方向に働き、検索の上位表示を多く取れるようになりました。

結果、自然検索でのPVも増えて安定した集客を実現するに至っています。


いわゆるYMYL領域と呼ばれる中で大きくメディアを成長させることができたのは、主に以下のような要因が大きかったと考察されます。

・提携するファイナンシャルプランナーに協力してもらい、専門性や権威性を高められたこと
・金融を専門とする事業会社が運営するメディアであったこと
・はてなブログなどで紹介されるなどの影響で、ドメインパワーが向上したこと
・SmartNewsに掲載されることで、一時的ではあるものの爆発的なPVを稼げたこと

一方で、メディアからお金の健康診断への誘導・導線設計に関しては、まだまだ改善の余地が多く残されている段階で、CVRの改善が今後の注力ポイントになると考えています。

② WEB広告運用の開始

WEB広告として、Googleの検索広告、動画広告(YouTube)、FaceBook/Insta広告(バナー画像、動画)、Twitter広告、Yahoo!検索広告、SmartNews広告など、多くの媒体を利用し配信を実施しました。

開始当初は広告への知見もなく、各媒体の特徴なども全く理解していませんでしたが、正直「やってみてから判断しよう」というようなスタンスでとりあえず全部配信してみたというやり方でした。

実際には、各媒体によって利用者の傾向が異なること、広告のクリックのしやすさやクリック単価、競合の強さ、などの特徴が存在し複雑に絡み合っているような状況ですが、それらを運用しながら学習し、徐々にCPAの良い広告内容や媒体を選定して行くといったやり方です。

現在は、Google検索、FaceBook/Instargam、SmartNewsに絞って配信を行っており、広告でのユーザー獲得単価は2000円/人程度にまで下がってきています。

※広告運用のインハウス化

一方、開始当初は広告代理店を通して運用を行ってきましたが、ある程度広告の方向性や運用方法が明確になってきた段階で、インハウス化(自社内のみでの運用)を検討し始めました。代理店へのマージンが将来的にかなり負担になることや、代理店に依存するメリットも薄くなっていく中で早めに決断する方が好ましいと考え、開始数ヶ月のタイミングで移行しています。

特にGoogle広告に関しては、Google社が特別にサポートするアカウントに選ばれたこともあり、定期的にGoogle担当者と相談できる環境をいただくことができました。そのため、代理店を通す理由が全くなくなってしまったこともインハウス化を開始する大きな要因であったと思います。

WEB広告配信の設定は現在かなり複雑で、初心者がすぐに使いこなせるようなものではありませんでしたが、今の時代WEBで調べれば情報は簡単に入手することができました。私自身も初めて配信設定を行う際には本で勉強して分からないことをWEBで調べるやり方を取りましたが、実際には本もほとんど必要なかったという印象です。

一方で、広告運用に関しては、提供するサービスの内容、メリット、強み、具体的導線など、プロダクトのことを細かく理解しておく必要があります。しかし、代理店の担当者ではプロダクトについては社内の人間よりも理解が薄いなという印象を受けました。とくにスタートアップのように、プロダクト自体も日々改善改良を推し進めている中で、その状況や改善の目的を随時確認するのは現実的に難しく、社内の人間が広告の運用も担当した方が効率が良いという判断に至ったことも大きい要因です。

インハウス化によって単純に代理店への費用が削減されたことも大きいですが、プロダクトの状況に合わせてタイムリーに広告配信を変更できたことも良い方向に働いたと考えています。

◆ マーケティングが成長し続けている理由

1年前と比較して、400Fのマーケティングが成長し続けている理由=お金の健康診断利用者が増え続けている理由は主に次の3点であると考えています。

・顧客の求める価値あるサービスを提供し続けた
・自社プロダクトと相性の良い広告媒体を選定した
・顕在層 → 潜在層へのアプローチがある程度機能し始めた

顧客の求める価値あるサービスを提供し続けた

お金の健康診断はおもに、20〜30代で特に女性の方に多く利用されています。世帯年収としてはいわゆる富裕層クラスといわれる人は少数で、一般的な収入・貯蓄額の方に多く利用されています。

お金の問題は家計を管理している人ならほぼ全員が抱える悩みです。しかし、お金に関することはかなりシビアな問題で親や友達などに気軽に相談しにくい側面もあり、悩みを抱えても相談できないケースが多く存在します。

また、お金のプロであるファイナンシャルプランナーへの相談となると、世間的にはなんとなく敷居が高いものに思われがちです。「貯金がないと相手にされないのでは」といった印象を持った方も多いでしょう。あるいは、「怪しい金融商品を売られるのでは」や「相談するだけでお金を取られる」といった懐疑的な意見も見られます。

「お金の健康診断」ではそんな敷居の高さ、相談しにくさの障壁をなるべく取り除き、気軽に相談できる環境を作ることを重視してきました。

具体的には、

・匿名で相談でき、かつオンラインなので対面する必要もなく、相談する段階で個人が特定される可能性がない環境
・ユーザー側は無料で相談できる事業体制(プランナー側のみ課金制)
・チャットという時間的制約が小さいツールで相談できる環境
・自分の家計状況を理解した上で、プランナー側から声かけをしてもらえる仕組み
・簡単なチャットでのやりとりから、自分と相性の良い、相談してみたいと思えるプランナーをユーザー側が選べる仕組み
などがあげられます。

実際、広告運用においてもこの辺りの内容を訴求するような広告で、かつ堅苦しくない気軽な印象を与えるものがユーザーの反応もよく、その結果がユーザー数の増加・獲得単価の減少に繋がったと考えられます。

また、広告のバナー画像においては、「オカネコ」という400Fオリジナルキャラクターを用いた漫画絵を中心とすることで、お金の相談という堅苦しい物とは真逆のフランクな印象を与えることで障壁を緩和する効果が得られたことも大きいと思われます。


お金の健康診断と相性の良い広告媒体を選定した

お金の健康診断は、上記のように一般的収入・貯蓄の方に広く利用されていますが、そのなかでも特に女性はお金に対するリテラシーの高い方が多い傾向にあることがわかりました。

また、結婚や出産、子供の就学など様々なイベントにおいてはお金が必要となることからお金に対する不安がより一層大きくなりがちですが、特に女性の方が敏感に反応する方が多いようです。

そのような方達に対して広告でアプローチする上で、最も効率が良かったのがInstagramでの広告配信でした。若い女性の方が多く利用しており、最近では情報収集として利用されることも多いようです。

様々な媒体での広告配信の結果、メインとなる女性の反応が最も良かったのがInstagramだったために、そこにフォーカスして広告費用も重点的に使用しています。

そのような形で各媒体での特徴をつかみつつ検証を繰り返した結果、現在では次のような広告運用が最も効率が良いと判断しており、各媒体での運用目的・ターゲットを使い分けています。

・Google検索広告:
お金の悩みがある程度顕在的、あるいはすでに相談訴求のある人を中心に、20~50代の男女へ幅広くアプローチ。また、ユーザーの質を若干高めるために一部広告は世帯年収で絞る、プランナーのマッチング状況に合わせて地域を限定するなど、状況に合わせてターゲティングを細かく調整。
・FaceBook/Instagram広告:
主に20 ~30代の女性をメインに、家計に関して興味がある人へ配信。お金に対する悩みに関してはまだ潜在的な人も多く含まれる。リマーケティングでの配信も利用し、認知活動とともに利用者が徐々に興味を持ってもらえるような配信も意識。
・SmartNews広告:
年齢・男女をあまり問わず、資産運用や投資、貯蓄に関して日常的に興味のある人向けに配信。
どの媒体でもある程度広告の型が決まるとあとは自動入札の改善が進んでいくので、放置していてもCPAが徐々に下がっていく状況になっています。

顕在層 → 潜在層へのアプローチがある程度機能し始めた

マーケティング開始当初は、ある程度お金のプロ(プランナー)に相談することを決意している人(悩みが顕在的な人)を中心に集客を行ってきました。そのような人には「オンライン」「無料相談」「匿名」という点を伝えるだけである程度の結果を出すことができました。

しかし、事業をスケールさせていく上では相談を決意していない(悩みが潜在的)なユーザー層へのアプローチが必要になりました。その中で、上記のようなフレーズだけでは相談に至らないユーザー群に対してアプローチするためには今までとは異なる訴求方法が必要となりました。

一般的にお金に対して漠然と悩みを抱える人は、「なんとなくお金が足りなくなりそうで不安」や「将来お金がかかるのはわかるけど、何して良いか分からなくて不安」といった人が多い印象を受けます。

そういった方に対しては、まず漠然とした不安を具体化すること、プロに相談することで解決方法が明瞭になるということを知ってもらい理解してもらうことが最も効果的でした。

広告の訴求内容・文面としては、「貯金」や「家計」といったどちらかというと身近なキーワードを中心に、

「あなたの家計は大丈夫?お金の健康診断で確認!」
「あなたの貯金額は十分足りてる?まずは診断で確認!」
「貯金が貯まらないのには理由があります」
「あなたの家計にプロがアドバイス」
このような訴求内容の広告が良好な反応を得られました。

広告で興味を引きつけた後、リンク先のLPでは

・お金の健康診断を受診すると、具体的な問題点を可視化できること
・あなたの家計に対してプロ側からアドバイスを送ってもらえること
・匿名や無料など気軽に利用できることを明確に伝えること

などに重きをおいた構成・内容とすることでCV数が大きく改善するに至っています。

ちなみに、「資産運用」や「保険」といったキーワード関連の広告は競合もかなり力を入れており、大企業のお金の力で勝ち目がほとんどない状況でしたが、「貯金」「家計」関連は競合があまり参入していなかったことも大きく関係したと思われます。

潜在層のユーザーをある程度確保できる見通しが立っており、広告費用を増額してもCPAをあまり高騰させることなくユーザーを獲得できる環境がある程度整ってきている点は、将来性を考えても大きい貢献だったのではないでしょうか。

◆ まとめ

マーケティング経験の全く無い人間が、スタートアップのマーケティングを一から作ってきた話を紹介しました。

1年経過し、ある程度数字が出て思うことは、「なんでも考える前にまずやってみろ」ということです。自分が考えて正しいと思ったことは実行してみるべきだなと感じます。たとえ、自分に知見や経験がなくてもそれは後からどうにでもなります。

今回でいえば、例えば広告運用のインハウス化ではヘタをすると運用を失敗しつつも代理店との関係性が切れるといった最悪な状況になる可能性も考えられましたが、代理店の存在意義に自分自身が疑問を感じていたために行動に移しました。

結果としては、得られたメリットの方が圧倒的に多く、将来継続的に発生するはずだった経費を削減したとなると効果金額もかなりの大きさとなります。やってみて初めてメリットを享受する権利を得られる。これって大切なんじゃないでしょうか。

新しくマーケティングを始めようと思っている方の参考になれば幸いです。

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