【ヒトキワ活用事例】老舗温泉旅館が取り組んだ“観光活性化×グローバル人材採用”という新たな挑戦(白湯の宿 山田家様)
人気の観光地・箱根強羅にて、『白湯の宿 山田家』をはじめとした温泉宿泊施設3館を展開する有限会社山田家(以下「山田家」)様。
インバウンド観光需要が高まる中で、海外の知見を持つ様々な国のメンバーを迎え入れたい、という思いのもと、ヒトキワ経由で多国籍なグローバル人材の採用に成功されました。
今回は、代表・山田敏理様(以下「山田様」)と、『白湯の宿 山田家』様で実際に活躍しているグローバル人材・ガネシュ様より「グローバル人材採用において大切なこと」「長期就業を目指すための工夫」「ヒトキワの活用方法」についてお話を伺いました。
顧客層の変化に合わせて、伝統を大切にしながら変化していかなくてはいけない
ー 山田家様の事業内容を教えてください。
山田様:
箱根強羅にて、七十年の歴史を誇る温泉旅館『白湯の宿 山田家』、”和風モダニズム”を体現するハイクラス旅館『和の宿 華ごころ』、掛け流しの温泉とあたたかな暖炉が特徴の『ホテル 佳山水』、とコンセプトの異なる3つの宿泊施設を運営しております。
ー グローバル人材採用にご興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか。山田様:
箱根エリアは国内では古くから観光地として知られてきたエリアですが、近年ではインバウンド需要が急増しています。
現在では、当館にご宿泊いただく約7割のお客様が海外からお越しになった方なんですね。
お客様の層の変化に伴い、お客様が当館に求めるサービスの内容も大きく変化してきています。
伝統を守ったおもてなしは勿論大切ですが、それに加えて多言語・多文化に対応した柔軟なサービスを安定的に提供できる体制が当館の課題となっていました。
スタッフ派遣という選択肢もありましたが、2~3か月での短期雇用となってしまい、サービスレベルを安定させることが難しいと悩んでいる中で、「グローバル人材の採用」というアイディアが浮かびました。
はたして人が集まるのか、当館の受け入れ態勢をどう作るか、などクリアすべき問題はたくさんありました。
しかし、お客さまの変化に合わせて当館も変わっていかなくてはいけない、まずはチャレンジしてみたいと思い、グローバル人材採用を決めました。
ー 採用が始まる前、グローバル人材に対してどのようなイメージをお持ちでしたか。
山田様:
私自身、今までに異文化交流の経験がございますので、宗教や言語、文化の違いがある方々と一緒に行動する上でどのような課題があるかはある程度理解しておりました。そのため他の方よりも「外国人従業員の採用」に踏み切れたというところもありますね。
ただ一つは、「チャレンジ精神」を大切にしております。日本で働くという大きな決断をしてくれた一人ひとりに対して親愛の情を持って向き合いたい、ただ仕事をお願いするだけではなく、日本のビジネスパーソンとして大切に育てていきたい、と考えています。
誠意と人となりの大切さは万国共通
ー 人材採用にあたりヒトキワを選んでくださった一番の決め手は何でしたか。
山田様:
「担当者のホスピタリティ」と「母国語での採用者サポート」です。
ビジネスとは言え、人対人の向き合いですから、私は、どんなお取引先であっても担当者の方の人となりを大事にしてお任せしています。
ヒトキワさんの担当者は皆さん真面目で丁寧ですね。そして、何か相談したら必ずクイックに返答が返ってくる、信頼できる会社さんだなと思いました。
もう一つ、就業中の外国人スタッフに対して、母国語でサポートをしてくださる点も魅力でした。
どうしても当方のコミュニケーションは日本語になってしまうんですが、大事な部分のニュアンスなどは通じない場合もあります、そういった時に、ヒトキワさんであれば、ニュアンスを含めて本人に母国語でしっかり伝えてくださるんですね。これは本当にありがたいと思っております。
ー グローバル人材との面接の際に大切にしていることはありますか。
山田様:
日本の方でも外国籍の方でも変わらず、当館の採用においては、誠意と人となりが一番大切だと思っています。
観光の一部のような感覚で採用面接に来る方もいらっしゃいますが、「日本で本気で長期的に働きたい」という気持ちが伝わってくる方と一緒に仕事をしたいと考えています。
気持ちを読み取ることを最優先に、質問事項はある程度絞った上で本人にしっかり伝えて、一問一問を丁寧に回答してもらって、こちらも汲み取るというプロセスを踏むことが大切ですね。
母国語ではないので日本語スキルが完璧でないことは当館としても理解しています。しかし、日本語を学び続ける姿勢を持っているかは見極めていきたいです。
アニメを見る、漫画を読む、日本人と話す…やり方は何でも構わないのですが、どんどん日本語を習得する意欲がある人を採用したいですね。
経験上、母国語が同じグループで常に行動しているスタッフは日本語上達スピードは上がらないので、失敗してもいいから日本人に混ざって毎日日本語をがむしゃらに話す、そのような姿勢が大事なんじゃないかと思います。
ガネシュ様:
僕自身、6年前に山田家で面接をした時は、緊張していましたし日本語は今ほど話せませんでしたが、ヒトキワの兼松さんに同行してもらいながら一生懸命「日本で働きたい」ということをまっすぐに伝えたのを覚えています。
母国の特徴を理解し寄り添うのが長期就業の秘訣
ー グローバル人材採用後、定着のための工夫や苦労した点があったらおしえてください。
山田様:
入社直後よりも、入社からしばらく経って仕事に慣れて来た頃のマンネリ化打破が大切だと思います。
旅館での仕事は1日の流れが毎日同じなので、どうしても飽きが出てきてしまうスタッフも多いんですね。そんな時に当館がスタッフをどう教育し、何を与えられるか、逆にスタッフから何を引き出すか…なかなか難しいところがあります。
例えば、ヒトキワさんから最初に紹介いただいたのが(インタビューに同席している)ネパールから来たガネシュさんです。
彼はおもてなしに関する専門学校を出ているので日本語も所作も入社当時からとても丁寧でした。そして、人柄もとても素直なんですね。
そんなガネシュさんでも、仕事に慣れて来た頃は一つ一つの対応が流れ作業化していた時期がありました。そういった対応を目にした時には、毎回根気強く注意をしていました。
「ガネシュさんにとっては毎日同じ作業に思えるかもしれないが、お客様にとっては人生における大切な瞬間なんだから、気を抜いては駄目だよ」という風に。
そのような教育も実を結んだのか、ガネシュさんは今や当館の大きな戦力です!就労ビザも5年のものを取得しています。
ネパールから奥さんを日本に呼んで、今は家族仲良く家を借りて暮らしています。
車の免許も取って、プリウスを買ったんだよね。
ガネシュ様:
はい!いい車です、とても気に入っています。
山田様:
当館だと、他にも3人、既に自分の車を持っている外国人スタッフがいますよ。
また、雇用する側の環境も非常に大きな要素を占めると思いますね。
現在、20人ほどのグローバル人材が働いているんですが、ネパール、ミャンマー、パレスチナ、ベトナム、スリランカ…国籍により、やはり文化的な特徴は異なります。
だからこそ、一人ひとり違う習慣で生きてきた人材を理解しよう、可愛がろう、という姿勢を大切にしています。
可愛がろう、とは勿論「わがままを聞く」という意味ではありません。
例えば何か失敗をする、仕事の指示と異なることが起きる、そういった時に、頭ごなしに叱るのではなく、まずは本人たちの意見に耳を傾けたいと思っています。そして、傾聴し、考えた上で「君の国だとこうだけど、日本の習慣だとこれがスタンダードだから、ステップバイステップで覚えていこう」という形で寄り添った説得をするようにしています。
複数のグローバル人材を雇用すると、国ごとの特徴はだんだんわかってくるので、新規雇用の際は同じ国のスタッフの事例を参考にして対応するのが良いですね。
ー グローバル人材が増えたことで、サービスの品質やお客様の評判に何か変化はありましたか。
山田様:
サービス品質に関しては、当館が教育をしっかりするというだけの話ですので、元々心配はありませんでした。
お客様からの評判の面でも、「外国人だから」という理由でクレームをもらった例は一件もございません。これは嬉しかったですね。
特に、別館となる『和の宿 華ごころ』は、ハイクラス旅館として運営しておりますので、その分求められるサービスレベルも高くなります。
ここで責任者として活躍してくれているのが、6年前から当館で働く、ミャンマー国籍の女性スタッフです。
彼女は入社当初からとても向上心が強い子で、自室のテレビには「テレビ」、机には「机」、冷蔵庫には「冷蔵庫」といったように自分で書いた日本語の紙を貼り付けて、日本語を覚え、仕事以外の時も常にイヤホンで日本語を勉強していました。
努力の甲斐あってやはり日本語能力も抜群に上がっていきましたし、今では彼女は日本語で自動車免許を取り、自前で着物の着付けを全て行い、活け花も活けられるんです。勿論当館の代表としての所作もパーフェクトですね。
また、彼女はそういった高級旅館で必要となる作法を自ら習得した上で、他のスタッフたちに同じレベルで教育を行ってくれました。
現在、『和の宿 華ごころ』は、多国籍なスタッフで運営していますが、おかげさまで大変評判も良く、売り上げも年々上がっております。
ー 社内コミュニケーションでの課題やチームワークを高めるための取組があったら教えてください。
山田様:
国籍関係なく、人と人なんで相性は勿論あるとは思います。
ただ、日本人スタッフ側も様々な外国人スタッフと働く中で、ブロークンな日本語や文化の違いには慣れてきているので、そこまで大きな問題は起きていないですね。
先ほどもお伝えした通り、当館だと日本の運転免許を取得している外国人スタッフもおりますので、国籍問わずお互い、仕事終わりには車で家まで送ったりもしていますね。
文化や宗教面・食べてはいけないもの等があるスタッフもいるので、全社での大規模な食事会などは難しい面もありますが、出来る限りコミュニケーションの機会は増やすように心がけています。
ガネシュ様:
みんな仲良しですね。働く時間が同じ人とは国籍関係なくご飯に行ったりします。
山田様:
近所の中華料理屋さんの料理がおいしいとスタッフからは人気ですね。
ー グローバル人材採用を行って一番のメリットは何でしたか。
山田様:
やはり英語を話せるスタッフが接客において非常に活躍するということですかね。7割のお客様が海外から来ている当館としてはこれは大きなアドバンテージです。
しかし逆に言うと、英語が堪能なスタッフは日本のお客様に緊張してしまうことが多いですね。英語と日本語って若干文法も違う物で、どうしても気持ちが引けてしまうみたいなんです。
そこは「おもてなしの心があれば英語も日本語も関係ないから大丈夫だよ」と丁寧にケアしていくことが大切ですね。
ー 逆に、想定していなかった課題はありますか。
山田様:
雇用後すぐに家族ビザを取って日本に家族滞在したい、という希望を持つ方が多いということですかね。雇用側からすると、定着して活躍してからじゃないと家族ビザの取得はどうしても難しいので、事前にそこはレクチャーが必要だと考えていますね。
あとは大きな課題はないですね、日本人スタッフと分け隔てなく対応すれば、彼らもそれに応えてしっかり活躍してくれると思っています。
ガネシュ様:
山田家は本当に仲が良くて、社長も先輩も色々教えてくれます。初めて日本で働く外国籍の方も学んで頑張りやすい環境です。
雇用側もスタッフ側も安心して働ける、ヒトキワのアフターケア
ー ヒトキワを利用して良かった点があれば教えてください。
山田様:
ヒトキワさんに決めた理由とも重複するのですが、サポート能力が担当者のホスピタリティ・語学スキル共に素晴らしいと思います。
例えば外国人スタッフとの間で意思の疎通がうまくいかなかったり、万が一のトラブルがあった際に、すぐに通訳の方が入ってコミュニケーションを円滑に進めてくださります。休日であっても対応いただけるのが大変ありがたいですね!
私たちはどうしても日本語でしか伝えられないので、外国人スタッフの気持ちに寄り添いながら長期就業をサポートしてくださっているので助かっています。
担当者の方も、採用・入社で終わりではなく、就業後も外国人スタッフをこまめにケアしてくださるので、面倒見がとても良い会社さんだなという印象です。
ガネシュ様:
僕も、日本で働く上で困りごとがあったら、ヒトキワのスタッフさんにすぐ相談しています!
ー 逆に、ヒトキワに今後さらに期待するサポートはありますか。
山田様:
先ほどお話しした家族ビザの早期取得の件以外ですと、紹介してくださるグローバル人材の日本語の質に少しばらつきがあるので、面接前時点での日本語習得などもケアしてもらえるとありがたいですね。
あとは、国によって就業意識に差があるのは当たり前なので、”日本で働く上でのスタンダードな知識”は、入社前にしっかり教えてもらいたいです。
勿論当館独自のルールは入社後しっかり教育しますが、例えば「すぐ辞めると、自分もスキルアップできないし、会社にもヒトキワにも迷惑をかけてしまうから、腰を据えて働こう」といったような常識が予め学べていると、グローバル人材の方々もより働きやすくなるんじゃないかと思います。
グローバル人材は日本の観光地にとって重要な存在
ー グローバル人材の採用を続けていくか等、今後の展望を伺いたいです。
山田様:
はい、ヒトキワさん経由での採用を末永く続けていきたいと考えています!
理由は先述の通りですが、担当の方のホスピタリティが高く、当館側だけではなく外国人スタッフにも親身になって対応してくださることですね。
コロナ禍が落ち着き、箱根の観光客数は毎年10%ほど増加しています。特に外国からお越しになるお客様は今後も増え続けるでしょう。
どの国から来たお客様にも同じように満足していただけるようなサービスを提供するため、多言語・多文化理解のあるグローバル人材は今後更に重要になっていくと思います。今後も採用に力を入れていきたいです。
ガネシュ様:
山田家でもっとたくさんのことを学んで、スキルを磨いていきたいです。
そしていつか、ネパールに山田家を出店できたらいいなと思っています。ひそかな野望です。
ー採用において重要視している要素は何でしょうか。
山田様:
20名以上のグローバル人材を採用する中で、当館の採用基準も見えてきましたので、「口頭でのコミュニケーション能力」と「人となり」を最重要視しています。
接客業ですのでコミュニケーション能力は大切です。日本語検定N1、N2という資格以上に、口頭でどれだけ丁寧に話せるか、こちらの言っていることを理解してくださるかは大事ですね。
また一緒に働く仲間だからこそ、素直さや誠実さ、日本でどれだけ真摯に働こうとしているかもしっかり見て採用したいですね。
ーグローバル人材の採用を検討している企業に向けて、アドバイスがあったら教えてください。
山田様:
箱根は日々たくさんのお客様をお迎えする観光地で、常に人材不足です。
当館以外にもグローバル人材を採用する旅館はたくさんありますが、他社経由での人材紹介でトラブルが起きた例や悩みもよく耳にするんですね。
当館でうまく行ったので、知り合いの旅館さんにも何件かヒトキワさんを紹介いたしましたが、どこもスムーズに採用を進められているようです。
グローバル人材の採用、その後のケアも含めて、胸を張ってヒトキワさんをお勧めしたいです!
以上、ヒトキワ活用事例でした。