スタジオ・アルカナのアドベントカレンダーとして一番バッターに仰せつかりました。
46歳ヤマザキです。軽くですが自身のディティールを紹介しておきます。
家に帰ると1人の妻と4人の娘息子、さらには子猫が2匹います。
社会人になってからはプロパーで3社、非プロパー(契約社員やバイト・非正規社員)で4社経験してきました。
その後、30代中盤で起業して、8年ほど経て、今アルカナで働いています。
現職、自分の担当は営業的なところ。新規・既存の案件に対してご提案や見積り、スケジュール調整などをしています。また、経営面にも参画させてもらっていて、エンジニア・クリエイティブ組織のチームビルディングや評価制度など、会社づくり組織づくり的なこともやっています。
過去記事としては
「給与ってどうやると上がっていくの?について話したい」
「少し身近にあるM&Aの話」
こんな記事を書きました。お時間あればぜひ。
さて、今日は私の少ない経験の中からですが、主にこれから転職をしようと思っている方に向けて
スタートアップ・ベンチャー・小規模企業の違い
について見解を述べていきたいなと思います。
実際に20代のころは小規模零細企業ばかり(学歴ないため)渡り歩いてきたということと、
自分でも起業してみて、ぽっと出でいつ潰れてもおかしくないフェーズから、
スタッフも20名近くになってきたあたりまで経験してみて、
・スタートアップだと思ってやってたこと
・これはベンチャーぽいなと思ってたこと
・いやいや、こんなことやってたらただの零細企業でしょと思ったこと
こんな実体験を思い起こしながら書いてみようと。
たぶん、こういう会社の風土や働き方の価値観は十人十色だと思うので、
ひとつの意見だと思って読んでもらえたらと思います。
それではしばし、読了まで10分ほどでしょうか。ちょっと長めなのでお付き合いくださるとうれしいです。
最初に、今回書いたことを3行でまとめておきます。
・スタートアップやベンチャー、小規模企業はそれぞれある程度の特色があるのでそれは知っておいたほうがいい
・最後は自分(の性格やスキルセット)に合うかどうかで決めるべし
・どれを選んでもその環境に依存せずに「自分も一緒に成長するぞ」というところが大事
ということです。
では①一般的な定義、②私のしたそれぞれのフェーズの体験、③まとめの順で書いています。どうぞ。
写真:startupをやろうとして東京ビックサイトに出展したブース約120万円也。その後2年で2000万円溶かしてstartupの苦味を知った。
まずは定義の確認から
①スタートアップ企業
”startup”というのはそもそも「開始・起動」という意味で、そこから名付けられたようです。アメリカのシリコンバレーに、主にIT関連企業が集まっていた頃に「新しいビジネスモデルを開発し、社会や市場にイノベーションを起こす、短期間で急成長を遂げる会社のこと」を指して言うようになりました。
実際に短期間で急成長をすることは大変ですし稀なので、ほとんどは「スタートアップ企業になろうとしてなれない小規模企業」として、世の中に名を残さずになくなるところが多いのも事実です。(私もそうでした)
あえて、特性を表すキーワードをピックアップすると「新しいビジネスモデル」「イノベーション」「急成長」という感じでしょうか。(革新性・独自性とかもよく問われます)。そして「計画性のないスタートアップはない」ということ。ここはポイントだと思います。
具体的な社名(独断と偏見によるものですが)を挙げると、FacebookやGoogleを始祖として、UberやTesla、日本ではメルカリさんやsmartHRさんなどが有名。さらにShirofuneさんは私が個人的に大注目しているスタートアップです。あと数年で歴史に名を残す会社になるに違いありません。KARAKURIさんも要チェック。他にもたくさんありますが、新しいビジネスモデルを搭載する過程で、独自のプロダクトがある場合が多いですね。
②ベンチャー企業
”venture”というのはそもそも「冒険的・投機的」といった意味があり、それはそのままビジネスにおいて「新規事業」全般を指すことなのかなと思います。たぶんそう。
ここでちょっと自信ない感じになってしまうのをご容赦いただきたいのですが、私の解釈ではベンチャー企業というのは起業(新規創業)に関わらず、「新規事業を狙う挑戦的な企業」全てを指します。なので、既存事業で安定している会社が、別部署を立ち上げて新規事業をやる場合、それを指して「ベンチャー企業」と言ってもいいと思っています。
あえてスタートアップとの違いを言うと「新しいビジネスモデルではなく、世の中にイノベーションを起こさず、急成長しなくても」その会社の中で新しい事業を立ち上げることは十分冒険的ではあるのでベンチャー企業と言って差し支えないのではと思います。ただこのあたりは結構不明瞭で、それこそスタートアップとベンチャー企業を同じ意味で解釈している人も多いですし、実際包括関係にある会社が多いことで曖昧になりやすいところでもあります。(このあたりは拘りたい人だけ拘ったらいいのかなと思います)
ちょっとしたトリビアみたいな話なのですが、実は第一次ベンチャーブームというのは1970年〜1973年のこと。実はベンチャー企業(ベンチャービジネス)という言葉はもう50年の歴史があるんですね。ナルホド。私も今日知りました。
すごく雑ですが、投資・資金調達をしているベンチャー企業はスタートアップ寄りと、個人的には白黒つけてます。そして資金調達には必ず計画性(事業計画・人員計画・収支計画)が必要なので、そういう意味でもスタートアップに計画性がないケースがないのかなと思います。ただ、スタートアップを自称していないベンチャー企業でもしっかりと計画を立てているところももちろんあるので、そういう意味では最後はその会社のトップに「どっち?」って聞くしかないですね(ここが一番雑)。
③小規模企業
これは身も蓋もない言い方になってしまうのですが、中小企業庁が定義しているのをそのまんま引用しますね。
a.(製造業・その他では)従業員の数が20人以下
b.(商業・サービス業では)従業員の数が5人以下
とにかく、雇用している数で定義されています。非常にわかりやすい。それもそのはずで中小企業基本法に明記されているのですから。
自分で経営していたころを振り返ると、スタートアップだベンチャーだとどんなにカッコつけてみても、みんな小規模企業からスタートです。起業したあとにどれだけ有言実行してきたかで、周りの人たちが少しずつ「スタートアップぽいな」「ベンチャーだな」と認めてもらえるような感覚でした。
だいぶ説明が長くなってしまいましたが、いかがでしょうか?
でも、それぞれの言葉の定義だけ聞かされても自分に合うのかどうかよくわからなくない?と言うところに、もう少し光を当てたいなというのが、今日の試みなのでした。もう少しお付き合いください!
写真:屋形船に乗せてもらってとった写真。大都会東京レインボーブリッジ。小規模企業には眩しすぎるぜ!
その3つのフェーズを体験したありのままを
前提としてこの3つを踏まえてお読みください!
・私が体験したスタートアップ・ベンチャー・小規模企業はすべてWeb系の制作会社です
・同じ会社の中で小規模企業だったフェーズ、ベンチャーになったフェーズがあったりもします
・体験順はこの順番です
①ベンチャー(小規模)
②ベンチャー(小規模の規格からは卒業)
③スタートアップ
④小規模企業(ベンチャーではない)
⑤成長したスタートアップに勤めた経験はない
このあたりも参考に、読み進めていただけたらと思います。
①スタートアップの体験
実際に働いてみて一番痛感したことなのですが、「スタートアップ」は計画があるということです。そういう意味では、自由度が一番低いのもスタートアップのフェーズだったなと思いました。
資金調達の段階で必ず事業計画があり、いつ・いくらで・何をどうしてイノベーションするのかというのを明確にする必要があります。自分の体験の中ではベンチャー(小規模企業→中規模企業)からのスタートアップだったので、特に不自由な印象を持ってしまいました。
何にしてもステークホルダーが多すぎるというのもありました。方々への報告事項もたくさん。資金調達先もそうですし、ユーザー(お客さん)に対してもメンバー(自社)やベンダー(発注先)に対しても、至る所に「こういう予定だからこうしてほしい」みたいな話を毎週毎週しまくっていた記憶があります。
スタートアップのキーワードにある「急成長」というしがらみ(って言っちゃうけど)も、心身に強いプレッシャーをかけてきます。そうなんですよ、「結果的に急成長した」を許容できるのはベンチャーだけで、スタートアップでは「必ず急成長しないといけない」なのです。(これは本当に心が風邪をひく原因になる)
これはスタートアップのフェーズにも寄るかもしれませんが、起業する本人でも、その会社に入るスタッフでも、「スタートアップ企業」で働くならばこの事業計画は必ず踏まえておくことをお勧めします。このプレッシャーは経営者だけでなく、メンバー全体に及ぶものなので。逆にいうと「健全な計画」だと思えるスタートアップ企業なら、就業先(起業するにしても)としてはオススメでもあります。
あと、スタートアップにはさらに「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」という成長ステージと、資金調達を何回・どれだけの額をしたのかという投資ラウンド(シリーズAとかBとか)という指標もあります。
そういう情報も踏まえて、どのフェーズのスタートアップなら自分のスキルが活かせそうかというのも考える必要がありますね。
②ベンチャーでの体験
これは本当に独断と偏見での感想になるのですが、経営層と気心が合うのであれば、ベンチャーはめっちゃ楽しいと思います。
スタートアップとの違いは事業計画に対してのステークホルダーの数が圧倒的に違いました。ただこれは、小規模企業からのベンチャーだったことにも起因する状態なのかもしれない、と言う点で少し自分の意見にはバイアスがあるかもしれません。
ベンチャー企業はまず非常に冒険的なことをします。新しいサービスを急に立ち上げて、やっぱりやめてみたり。なんなら新しい制度が爆誕したり、1年でスタッフが倍になったりと、そんなことある?という目まぐるしい体験が就業を通して目の当たりにできたりします。
私が体験したびっくり制度では「期の始まりに会社の年間の収支計画が全体に発表されて、内部留保を除くアガリ(利益)をスタッフ全員で山分けする」というのもありました。なかなかセンセーショナルな経験でした。(実際に一円単位まで割り勘でボーナスが出た)
ただ、ベンチャーで気をつけたいのは「経営層と気心が合うか」に尽きるのかなと思います。実際、ベンチャーだとしても事業計画がないわけではないです。ただ、その事業計画を知りうるのがその会社の経営層とスタッフ、プラスしてメインバンクくらい。そのため「事業計画は案外変わりまくる」ということもあり得ます。(要するに経営方針に指摘をする投資会社や社外役員がいないケースが多いためです)
振り回されるのも楽しいって思えるくらいだと言うことないんですが、「チッ、無計画かよw」って思ってしまうと会社に対して、隙や粗がそこかしこに目立つことになり、ストレスになってしまうのかなと思います。
③スタートアップとベンチャーの共通点
これは今日のハイライトと言っていいほどわかってほしい点なのですが、「スタートアップでもベンチャーでも、そう認識してジョインするのなら、その会社と一緒に自分もめちゃくちゃ成長しよう」という覚悟が必要だと言うことです。この覚悟がないなら、入らないほうがいいです。その会社に入って巻き起こる変化・変動や、大失敗に巻き込まれる経験、会社が大きくなっていく過程で起こる人間関係のトラブルなどなど。その全ては「自分がこの体験をして成長したい」と思う人には薬でも、「自分の得意なことを活かして安定して生活費を得たい。」という人には毒にしかなりません。
必要な覚悟のほどをわかりやすくいうと、少なくともプライベートよりは会社の出来事を優先するくらいの覚悟があったほうがいいと思います。その点においてかなりブラックなイメージもあるかもしれませんが、そのくらい会社の動きと自分の人生をリンクさせたほうが、経験も得やすいし、そういうタイプのほうが好まれます。そして、そういうタイプが集まってきたりもするので、その中で「そんなに事業にコミットしたくない(責任を負いたくない)」と思っちゃうと、入った後辛いこともあるかなと思います。
④小規模企業での体験
おまけ程度ですが参考までに。小規模企業は、まず2つに分かれます。
1つは「これから大きくなっていくつもりの小規模企業」。
もう1つは「これからも大きくならない小規模企業」です。
どちらもあまりモノやお金が充分にないケースが多く、ヒトも少なく、ビジネスの規模も小さい場合が多いです。
「自分の得意なことを活かして安定して生活費を得たい」という人は、「これからも大きくならない小規模企業」は狙い目だと言えます。そんなに大きな売り上げの増加もない代わりに、手堅い生存戦略と、長く続く取引先、経営者も安定志向の堅実な方針を立てる方も多く、いろいろフィットしやすいと思います。
「これから大きくなっていくつもりの小規模企業」は、その段階でベンチャーに近いので、そこで働くならそのつもり(覚悟が必要)で行くべしです。方針も戦略も、なんなら理念までコロコロ変わる。変化に強いメンタルと、それを許容できるマインドが必要になってくる代わりに、自分も会社の変容に合わせて成長できる可能性が高いでしょう。
共通して言えることは、小規模企業で働こうと思うひとは、「ほんとに潰れないかな?」という視点での判断と、「潰れたら仕方ない」という覚悟は必要かなと思います。
写真:これから大きくなるつもりの小規模企業例。オフィスの様子だけでこれだけ変容します(2年目⇒4年目)
まとめ
スタートアップ、ベンチャーについては異論もあるかもしれません。成長したスタートアップは大企業以上に安定しているところもありますし、それはベンチャー企業でもおなじです。一個人の体験記として、読んでもらえたらうれしいです。
そしてはじまりましたアルカナのアドベントカレンダー!wantedlyのストーリー毎日更新するとか正気ですか?と思っていましたが、みんなで書けば怖くない。できれば私ももう1回くらいは書けたらと思ってます。
ぜひ今日から25日までお楽しみいただけると幸いです。
だいぶ長くなってしまったのでそろそろこのへんで。
ありがとうございました。