2026年に[px1] 開催される予定の「瀬戸内産業芸術祭」において、2025年1月に岡山県玉野市で行われたモニターツアーの全体展示計画および宮原製作所の展示作品《呼吸する椅子》のデザインを担当。
瀬戸内産業芸術祭は、日本の産業とその背景にある文化を、アートの視点から再解釈・発信することを目的とした芸術祭です。参加企業の工場やプラントを「分散型美術館」として捉え、訪問者が産業の魅力を五感で体験できる場を創出します。
全体展示計画では、3つの異なる工場におけるアート表現を、各々の空間特性や文脈を読み解きながら最大限引き出すよう構成しました。
たとえば、ナイカイ塩業では、塩のアートをよりダイナミックに魅せるため扇形の制作面を活かし、床近くに設置したミラーにより鑑賞者同士の視線が交差しない没入感のある空間を設計。パワーエックスの蓄電池工場「Power Base」では、ガラス張りの外観によって展示作品が外から見えてしまうという課題に対し、オーガンジー素材で視線を巧みにコントロールし、アートと対峙する「瞬間」を際立たせました。宮原製作所における展示作品《呼吸する椅子》では、同社が製造する大型船舶用ピストンの精緻な技術に着目。ピストンの上下運動から着想を得て「呼吸」をモチーフとし、産業に宿る“魂”を鑑賞者が身体的に感じられる椅子として具現化しました。
空間全体を作品の一部と捉え、工場の風景・作業・人の営みすべてを含めた展示構成により、「産業そのものを体験するアート」の実現を目指しました。