元EvernoteのCEO Phil Libin氏の「All Turtles」が主催する「シリコンバレーのUXライターが語る、UXライティングの重要性」というイベントに参加させていただきました。
30人の枠に136人の申し込みという人気ぶりで抽選で当たるか不安だったのですが、無事参加する事が出来ました。
余談ですが、わたしは大学卒業と大学院卒業時の論文で、ALLIANCE(アライアンス)というEvernote社も取り入れていた雇用形態に関する考え方に触れていた事もあり、Phil Libin氏に直接会えたのはとても嬉しかったです。
さて、本題である講演の中身についてご紹介したいと思います。
冒頭、Phil Libin氏からEvernoteでは当初は開発やデザインに注力していたのだけど、Jessica Collier氏に仕事をしてもらうようになって「言葉」サービスの質が向上し、その有効性を認識するようになったという紹介がありました。
そして、
世の中のサービスの多くは言葉で構成されている。botサービスなどAIがバックエンドで動いているサービスも顧客接点は言葉であるわけで、「AI時代において言葉は非常に重要」という指摘が印象に残りました。
講演してくれたJessica Collier氏はEvernoteやMediumなどのUXライティングを手掛けてきた方で、2014年からUXライターという肩書きで仕事をするようになったそうです。
ただし肩書きは違えど、同様の仕事をしている人は以前にもいて、ペイパルでコンテンツ・ストラテジストとして働いていた人を自身が最初に認識したUXライターと紹介していました。
端的に言えば、UXライティング(UXライター)は、言葉を使って
- サービスの機能を伝える、
- ユーザのしたい事をさせてあげる、
- 目的を達成させてあげる
こんな事を実現させるわけですが、その言葉のセレクトによってサービスが良くもなれば、悪くもなるという非常に当たり前の原因と結果のお話となります。
ただここのポイントは、
「洗練されたものを使っているときほど、意識されない」
という事。
そういう意味で洗練されたシンプルなサービスを作るのは簡単ではなく、それが実現しているときにその存在に気づくのは稀であり、それが結果として「言葉の重要性が軽んじられている」というところに帰結してしまうようです。
UXライティング(UXライター)ってどんな事をするの?という質問への答えとして、「プロダクトとユーザのコミュニケーションをデザインする」という説明は分かりやすいなと感じました。
ベースとなる知識として、ユーザ中心設計は当然出てくると思っていたのですが、言語学というのが彼女のキャリアを支えるスキルとして大事だという話はとても興味深いものがありました。
あとプロトタイプを作成する際にダミーテキストは使わないという方法論も確かにと思う部分がありましたね。
ウェブはテキスト、図版、動画、音声という複数の方法で情報伝達が可能なメディアです。
単語とビジュアルのどちらが正しいという考え方ではなく、タスク(目的達成)型のウェブサービス、アプリにおいては、ユーザが達成したい目的を助けてあげる存在として、適切なものを提示していく事の大切さを改めて認識しました。
ウェブサイトも、コーポレートサイト、求人サイト、製品・サービスのマーケティングサイト、サポートサイトなど様々な種類があり(これらが混在するサイトもありより話を複雑化させる場合がある、今日ご紹介した内容がすべてにマッチするという単純な話ではありません。
講演や質疑応答でも出ていましたが、求める結果が得られているのかはユーザテストが大切で、逆にそれしか確認のしようがないと思います。
ウェブサイトのデザインを20年ほどやってきた中で、アフォーダンスやらユーザ中心設計などの知識に触れつつ、ここ4~5年、マーケティング・オートメーションを導入前提のウェブサイトリニューアル案件に携わるようになって、ウェブサイトの情報設計には行動経済学の知識も必要になって来たと感じます。
そしてウェブサイトだけでなく、ソフトウエアやウェブサービスで事業を展開する企業が増えれば増えるほど、今日紹介したUXライティング(UXライター)に関連した知識やその存在はサービス品質の向上に欠かせないモノになるのだろうと思います。
タスク(目的達成)型のサービスにおいてのUXライティング、行動経済学におけるナッジをマーケティング目的のサイトで機能させるためのUXライティングの重要性は高まるばかりと言っても過言ではないと思います。
最後に、UXライターという人には文学であったり、言語学に関連した素養必要なようです。
デザイン思考がどこまで盛り上がっているか分からないのですが、このように非エンジニアの領域も重要であり、その絶妙なバランスが取れることで事業が生き残り、スケールしていくためには欠かせないという事ではないでしょうか。