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自社メディアを運用していながら、受託案件で新規サイトの制作も数多く担当している会社はそもそもあまり多くありません。社内のエンジニアが自社メディアにも受託案件にも両方に関われる、という環境はさらに珍しいのではないでしょうか。自社だからこそ新しい技術や攻めたアイデアも実装でき、そこでの成果を持ってクライアントにも最適な提案ができるようになる。常にさまざまな案件があるので、上流工程で仕様設計から入ることも、ひたすら手を動かして開発に専念することも、集中したいポジションをその時々の興味や特性で選択できる。そんな、エンジニアとして欲張りな働き方について、CINRA, Inc.のテクニカルディレクター、伊藤悠太と横川梨乃に聴きました。
取材・文・編集:山本梨央 撮影:佐藤麻美(CINRA, Inc.)
伊藤悠太
1983年生まれ。多摩美術大学油画専攻卒業後、IAMASで表現としてのプログラミングを学ぶ。ウェブ・アプリ制作会社、ソーシャルゲーム制作会社を経て2016年にCINRA, Inc.に入社。開発チームマネージャー。
横川梨乃
1993年生まれ。新社会人のときに、図らずもシステム開発に携わったことをきっかけにウェブ業界に。ECサイトの制作会社を経て2018年にCINRA, Inc.に入社。自社メディアのグロース、受託開発を担当。バックエンドエンジニア、テクニカルディレクター。
エンジニア全員が、自社メディアの開発に関われる
ーCINRA,Inc.(以下CINRA)と言えば、自社メディア「CINRA」をイメージする場合も、クライアントワークとしてさまざまな企業のオウンドメディアやコーポレートサイトの制作をイメージする場合もあると思います。それぞれ、エンジニア内ではどのような分担になっているのでしょうか?
伊藤:自社メディアに関しては、エンジニアがプロダクトに密接なほうが絶対によくなると思っていて。成長させたいものの近くにいるべき、という考えで動いています。なので、エンジニアチームは全員が自社メディアに関われるようにしているんです。メディアのグロースは小さいことの積み上げが大切。一発、何かを改善すればすべて解決、というものではありません。毎週の定例会議で、強化すべきところ、改善すべきところなどを考えながら、細かい実装を積み重ねて、効果測定しています。「チームとして1週間で効果的なものをいくつリリースできるか」というのが直近の意識している指標ですね。
CINRA, Inc.開発チームマネージャーの伊藤悠太
横川:私も自社メディアに関わりながら、テクニカルディレクターとして、新規案件の相談に乗ったりもしています。提案の段階で、与件の整理だったり、見積もりや工数の確認だったり、エンジニアとして手を動かす前の上流工程から関われるのも面白さの一つ。たとえば、要件定義フェーズではクライアントの要望をそのまま実装するのではなく、ユーザー体験を考慮したときに、何が本当に有効な手段なのか、もっと提案できることがないだろうか、と考えたりもしています。
伊藤:受注から制作までのどこのフェーズに入るのが一番いいか、というのは人によって違いますよね。上流から入りたいという人もいれば、開発に集中したいというタイプのエンジニアもいる。自社メディアでも受注案件でも担当できる幅が広いから、個人の適性や希望を見ながらチューニングできているんじゃないでしょうか。これからチームを拡大するにあたっても、いろんなタイプのエンジニアに楽しんでもらえる気がしています。
エンジニアと編集部が近いから「できないと思ってたこと」もすぐに実現
ーCINRAではフルリモート、なおかつ裁量労働ということで、働く環境や情報共有の仕方も気になります。普段、社内ではどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?
横川:基本的にはチャットワークやオンライン会議でのやりとりで業務は進めています。最近はSlackのtimesなど、雑談やぼやきを投稿できる場をつくっていて。仕事に関する相談だけじゃなく、社内Twitterのような感じで「お昼なに食べよっか」みたいな独り言も呟いたりしていますね。Slackのほうがスレッドで会話ができるので、雑談に適しているという話になり、有志で立ち上げました。
timesの画面キャプチャ
伊藤:喋るのが得意な人とチャットでの会話が得意な人など、いろんな人がいますよね。ぼくは話したりするほうが楽でそっちに頼ってしまうけど、いろんなコミュニケーションがあっていい。トータルでうまく回っているなら、いろんなツールや方法を使いやすいところで最適化していけば、それで良いと思っています。
横川:先ほどのグロースもそうですけど、CINRAは全体的にフィードバック文化があって、フラットに意見を言い合える空気がある気がします。それはエンジニアのチーム内だけに限らず、たとえば編集部との距離が近いというか。ほかの職種の人と話しながら開発ができるのは、独自性の一つなのかもしれません。
CINRA, Inc.バックエンドエンジニア、テクニカルディレクターの横川梨乃
伊藤:たしかに、たとえば自社メディアで言えばエンジニアも編集部も共通の目標に向かってるわけですもんね。編集者の視点で「こんな数字を取れるようになったら効果測定しやすいな」というアイデアを実装に移せることも多い。逆に編集チームが「こんなことは絶対にできないと思っていた」というようなことを話してもらったら「それならすぐにできますよ」と開発視点ではほとんど負荷もかからずに実現できた、みたいなことも明らかになったりして。編集部との連携として、「共通で目標および解析・戦略を追っていけるような、GA4、BigQuery、AutoMLを掛け合わせたダッシュボードをつくってみよう」みたいな流れが会話のなかで出てきたりしています。
横川:実験の場として「CINRA」というメディアを使えるのは強いですよね。たとえば自社メディアに実装しているNPS(ネットプロモータースコア)は、記事の評価をPV数や滞在時間だけでなく、読者視点で満足度の数値化が可能になる。「こういうのをうちでもやってみたいです」と受託案件でお客さんからご要望いただくこともすごく増えてきました。提案フェーズからエンジニアが入るときに、開発以外の視点を持てていることで幅が広がる部分もあるのではないでしょうか。
自社メディア「CINRA」に実装されているNPS
伊藤:エンジニアに言うのは大変そう、工数などで断られそう、と言いたいことを飲み込まれがちだけど、積極的に言って欲しいですね。ぼくたちは「実装して喜んでもらう」というのが基本的にはすごく嬉しいですから。
自社で実験、受託で応用。攻めたアイデアにも本気で取り組める環境がある
ー自社メディアと受託制作の両輪があるからこそ、相乗効果で生かしあえる部分も多いのでしょうね。お二人とも転職でCINRAに入社していますが、CINRAだからこその楽しさはどういった部分に感じていますか?
横川:私は前職でフロントエンドの開発はやったことがなく、バックエンドだけに専念するシステム開発会社だったんです。当時は仕様が降りてきたものを適切に実装する楽しさを感じていました。「どう工数を抑えるか」「どう最適に実装するか」というのを考えるのは得意だった。でも、だからこそ上流工程に入るということもCINRAが初めて。CINRAではコンセプトやユーザー体験を考えている人が多く、私自身、見方が変わったなという実感があります。「クライアントにこういう背景があるなら、そもそもこういうつくり方に変更したほうがクオリティーが上がるのではないか」と言う視点を、開発に限らずディレクターでもデザイナーでも編集者でも持っている。そういう雰囲気に引っ張ってもらっています。私はついつい工数だけの話になりがちなタイプだったのに、ハッとさせてもらえる機会が本当に増えましたね。
伊藤:幅広く経験できて、チャンスがたくさんある、というのはメリットでしょうね。昨年の自社メディアのリニューアルでは、古いフレームワークからLaravel8へマイグレーションを行ない、インフラについてもk8sで構成し、ArgoCDを用いたGitOpsで運用しています。受託案件ではあまりできないような構成を、思う存分構築してみました。また、受託で新しい技術を使ってみたいという提案・実現も、もちろん大歓迎。自社メディアでのグロースとして「もう少しこういうところを攻めてみたい」というようなアイデアも熱量があれば通るし、みんなが本気で一緒に考えてくれる。これってフリーランスではなかなかできないことだと思います。
横川:たしかに。自社とか受託とか関係なく、守りの仕事だけでなくトレンドにもアンテナを張って、新しい技術も積極的に取り入れていこうという雰囲気はありますよね。新しい技術を採択するには、古い技術と新しい技術の比較をしっかり検証しなければならない。その上で、優れている方を採択する、という手間をことを怠らないのは大事だと思っています。クライアントのニーズに対して適切なものを、新しい・古いにとらわれず常に探し続けるという姿勢は共有できている気がします。
伊藤:チームとしての面白さという点では、どういう制作フローを改善していくと効率がよくなるかなども、新しい人たちと取り組んでいきたいですね。これまでにたくさんつくり上げてきた案件を振り返って、テンプレ化できるところはないかとか、組織づくりという意味でもいまのCINRAだから関われるポイントも多くあると思います。
横川:受託案件も受けるかどうかというジャッジが社内にあって。「ただつくる」のではなく、なぜCINRAとしてこの仕事を受けるのか。これをつくる意義はどこなのか。そういう意識を持ってつくれるのも、納得感があってモチベーションも上がります。
伊藤:業務のことじゃないですけど、やっぱり文化的な人は多いので、そういう雑談も楽しいですよね。エンジニアが「(ゲルハルト)リヒターの展示に行きたい」と言って、社内で反応してくれる人がたくさんいる、というのはCINRAらしさの一つだと思います。
横川:たしかに。私も、このあいだ『ゴールデンカムイ展』に行きたいと言ったら一緒に行こうと盛り上がる人が集まりました。この映画を観たと言っても、誰かしらが絶対に反応してくれる。そういう横のつながりや仲の良さはありますね。
伊藤:あと純粋に、フルリモートで裁量労働ということで、家庭が忙しい人は仕事と家庭の時間配分をかなり柔軟に組み立てられるので、とても働きやすい環境だと思います。ぼくの家庭の場合、ぼくが子どもの幼稚園の送り迎えをしたほうが効率が良いので担当しています。今日もこの取材が終わったら、これからお迎えです(笑)。