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株式会社CINRAの編集者は、自社メディア「CINRA」の運用やコンテンツ制作だけでなく、外部のオウンドメディアの制作も手がけています。さらに新規メディアのコンセプト設計や、編集方針の決定など、上流から携わる機会も多く、編集者としての幅を広げるチャンスに恵まれています。
今回話を聞くのは、編集者だけでなく、ライターやコピーライターとしての顔も持つ吉田真也。そして、オウンドメディアの記事制作に加え、「CINRA」の人気連載「美術のトラちゃん」でウェブ漫画編集も手がける服部桃子の二人。さまざまなオウンドメディア制作の経験で感じた、上流に携わることの魅力とは? また、二人が考えるCINRAらしい「編集者のあり方」も語ってもらいました。
取材・文:宇治田エリ 撮影:鳥越惣太(CINRA) 編集:市場早紀子(CINRA)
吉田真也
CINRA編集者。1988年生まれ、東京都出身。アパレル販売員を経て、2015年に編集兼ライターとして制作会社に転職。その後、2018年にCINRA入社。自社メディアに限らず、さまざまな企業のサイトやオウンドメディアにおけるコンテンツの編集・ライティング・コピーライティングに携わる。愛犬はロイ(ミニチュア・シュナウザー)。
服部桃子
CINRA編集者。1991年生まれ。前職では旅行系のガイドブックから実用書の編集、サブカル系コンテンツなど、さまざまな編集・ライティングに携わる。CINRAでは、自社メディアの記事づくりや企業系のオウンドメディアの編集を中心に手がける。猫が好きだが猫アレルギー。
提案したオリジナルキャラが話題に。メディアを上流からつくることの楽しさ
―CINRAはこれまで、多くの企業のオウンドメディアに携わっています。新規でメディアを立ち上げる際、編集者はどのような動き方をするのでしょうか?
吉田:記事をつくるのが編集者の仕事というイメージがあると思いますが、CINRAの場合、メディアのコンセプトや編集方針を決める上流段階から、編集者が携わることがほとんどです。社内の座組みとしては、プロジェクト全体の企画・提案をするアカウントプランナー、制作の進行管理を行なうプロジェクトマネージャーと一緒に進めていきます。
まずはクライアントに、「どんなターゲットに届けたいか」「どんなサイトにしたいか」などをアカウントプランナーとともにヒアリングをして、メディアの目標や方向性をつかみます。そこから、クライアントの思いや課題を噛み砕きながら言葉にし、最終的に「コンセプト」や「編集方針」として、かたちにしていきます。これらのステップを経てはじめて、具体的な記事企画を考えていくんです。
編集者の吉田真也
―吉田さんは、三井化学のオープン・ラボラトリー活動「MOLp(モル)」のオウンドメディアのリニューアルも担当されたそうですね。
吉田:はい、編集方針と戦略の設計から担当しました。「MOLp」は三井化学の有志のメンバーが集まり、「素材」の可能性を追求している団体なので、当初のサイトも素材開発の実績や、プロダクト紹介をメインに展開していました。
しかし、なかなか社内外の人々に活動が周知されないとのことで、サイトのリニューアルを含めてコンテンツ制作のご相談をいただいたんです。それで、より多くの人の目に止まるメディアにするため、「化学や素材の魅力を伝え、素材自体に親しみを持ってもらうこと」をポイントに編集方針を考えていきました。
吉田が編集方針・コンテンツの制作を担当した、三井化学「MOLp」のサイト
―なるほど。でも「化学」や「素材」と聞くと、難しいイメージを持ってしまう人も多そうですね。
吉田:はい。なので、編集方針として、誰が読んでもわかるよう、専門用語はなるべく噛み砕いた表現にして伝えたり、各記事を「Life・Social・Art」という身近に感じられるカテゴリーで分類したりしました。こういった最初の方針をしっかりと固めることが、記事企画の精度の高さにもつながるので、かなり重要なフローだと思っています。
実際の記事企画は、読者の興味を引きつけられるよう、専門家だけではなく、あえてクリエイターや著名人などを起用したユニークな企画を立てることも多いです。また、幅広い層の方に記事を訴求してMOLpのファンを増やすために、SNSの運用サポートも対応しています。
ワクワクさんこと久保田雅人さんと、発明家・藤原麻里菜さんの対談記事
―「MOLp」には「モルおじさん」というキャラクターが登場する、ユニークな連載も印象的です。
吉田:モルおじさんも、化学への親しみやすさを打ち出す施策として発案し、最終的にはMOLpメンバーの方々と話し合って生まれたキャラクターです。イラストレーターのヘロシナキャメラさんが、とてもユーモラスでクセになるキャラクターに仕上げてくれました。
モルおじさんをきっかけに、AbemaTVやYahoo!ニュースなどにも取り上げられ、「化学に親しみを持ってもらう」というメディア全体の目標を達成できたと思います。いまでは、サイトの月間平均PV数も、立ち上げ当初とくらべて70倍近く増えたそうです。目に見えて結果が出ているのはうれしいですね。
依頼されたテーマをもとに記事だけつくるのではなく、「どうすれば思いが伝わるメディアになるか」をクライアントと一緒に考え、土台からつくりあげていけるのが、上流に関わることの楽しさややりがいだと思います。
化学や素材にまつわる素朴な疑問に答えていく連載記事「カガクのギモン」に登場する架空のキャラクター「モルおじさん」
―サイトの立ち上げ後やリニューアル後も、運用案件として携わることが多いのですか?
吉田:はい。7割くらいのメディアは、そのまま継続して運用していますね。運用案件の場合は、記事づくりだけではなく、KPIに合わせてアクセス解析をしたり、そのときどきに合わせたコンテンツ企画を提案したりと、長期的な視野で施策を行なっていくケースが多いので、メディアのグロースをがっつり経験できます。
しかも、クライアントの業種は、ビジネスや音楽系、自治体などさまざま。自分の知見やスキルの幅が広がっていくのを実感しています。
コピーライティングから漫画まで。編集者の「やりたい」を伸ばせる環境
―上流設計や記事企画をクライアントに提案するなかで、「これはCINRAの強みだな」ということはありますか?
吉田:自社メディアの「CINRA」はもともとカルチャーメディアからスタートしていますから、やはりカルチャー系の人々とのつながりでしょうか。記事企画を提案する際も、クライアントが持つ強みとカルチャーをかけ合わせ、化学反応を生み出すことができるのはCINRAならではだと思います。
―服部さんはいかがでしょうか?
服部:クライアントの思いを引き出してかたちにするコンテンツ力は、CINRAの強みだと思います。私はこれまで、オウンドメディアの上流から携わる先輩編集者のサポートをしながら、さまざまな記事の企画制作をしてきました。そのなかで感じたのは、クライアントの「やりたいこと」が言語化できていなければ、その思いを届けるための適切な企画が見えてこないということです。
会社のアイデンティティーとして、「クリエイティブな意思に耳を澄ませ、『他者』を知るきっかけをつくるメディアカンパニー」を掲げています。なので、つねに「なぜこれをやるのか」という、当事者意識をもって考えるクセが自然と身につくんです。そういう点で、やはりCINRAのベテラン編集者は、クライアントの思いを引き出すのがすごく上手だと感じます。私もその手法を学び、適切な企画を固めていくことができるようになりました。
編集者の服部桃子
―まわりから学ぶ機会も多いんですね。
服部:そうですね。たとえば、自分が得意ではない分野の企画を考えたり、人選に悩んだりした場合も、チーム内外で相談しやすい環境が社内全体に整っています。興味関心の幅が広い編集者ばかりなので、自分は得意ではないことにも誰かしらがいいアドバイスをくれるという心強さがありますね。
吉田:まさに「集合知」という感じです。CINRAは「みんなで考える」という意識が強い。みんな普段から、社内チャットで情報共有をしたり、アイデアを投げ合ったりしていて、そこから企画につなげることもあります。
また、それぞれ好きなジャンルや持っているスキルが違うからこそ、幅広い案件を引き受けられるのもCINRAの強みかもしれません。
―吉田さんはほかにも、コピーライティングの仕事もしていますよね。
吉田:そうですね。前職でもコピーを書いた経験があり、もともと好きなので、コピーの案件があれば積極的に立候補しています。本人の「やりたいこと」を尊重してくれるのも、CINRAのいいところだなと思います。
スキルアップのために、コピーライター養成講座にかよった際も、社内の学習制度として費用の一部を支援してもらったので、そういう点でもチャレンジしやすい環境ですね。
吉田がコピーライティングを担当したハワイウエディングブランド「B.Nature」のサイト
服部:私は漫画が大好きなのですが、以前、香川県が運営する移住誘致のサイトで、ウェブ漫画の編集に初めて挑戦させてもらいました。会社が、社員の「やりたいこと」や「得意なこと」を鑑みて案件へのアサインを検討してくれるので、仕事のモチベーションにつながります。
服部がウェブ漫画編集を担当した「かがわ移住物語」のサイト
自分の伝えたいことをかたちに。自社メディアがあるからできること
―お二人はいま、企業のオウンドメディアだけでなく、自社メディア「CINRA」の記事制作も担当されていますね。
服部:はい。これまでは受託のオウンドメディアがメインだったのですが、この1年で社内体制が変わり、「CINRA」の記事を担当する機会も増えました。
―服部さんは「CINRA」でも大人気の漫画連載「美術のトラちゃん」の担当編集でもあります。
服部:先ほどお話した香川の案件をきっかけに、ウェブ漫画編集の案件に携わる機会が増えたので、自社メディアでもチャレンジしてみました。
「トラちゃん」を描いてくださっている、作家のパピヨン本田さんは、敷居が高く感じてしまいがちな美術の話を、知らない人にもわかりやすく伝えるというスタイルで、SNSでも話題になっている方。まさに、「知らないことを他者に届ける」という「CINRA」のメディアコンセプトにぴったりだと思い、漫画制作をご依頼させていただきました。回を重ねるごとに、キャラクターのファンになったという人の声をSNSで目にすることも増えましたし、漫画コンテンツには、インタビュー記事にはない愛され方があっておもしろいです。
服部が担当している連載「美術のトラちゃん」
―吉田さんは担当したなかで、印象に残っている記事はありますか?
吉田: スタイリストの伊賀大介さんと、フラワークリエイターの篠崎恵美さん、ファッションデザイナーの森永邦彦さんに、「花と服の魅力」をテーマに対談していただいた記事企画です。森永さんとは、「MOLp」の記事をきっかけに何度かお仕事させていただいており、伊賀さんと篠崎さんも、いつか取材したいと思っていた憧れの存在でした。
そんな三人が、昨年公開された映画『竜とそばかすの姫』の衣装制作でコラボされていて、「これは取材するしかない!」と思い、自主提案の企画として制作しました。
自社メディアの自主企画では、自分が掘り下げたいテーマや伝えたいメッセージを考えながら企画できるので、クライアントの思いをかたちにするオウンドメディアの仕事とは、また違った楽しさややりがいがあります。
吉田が担当した、伊賀大介さん、篠崎恵美さん、森永邦彦さんの対談記事
「意志あるコンテンツ」が、メディアをもっとおもしろくする
―受託であるオウンドメディアの仕事と、「トラちゃん」のような自社メディアの仕事、双方の経験は、いまの仕事にどのように活かされていますか?
服部:私は、さまざまなオウンドメディア制作に携わってきたなかで、「この場合の課題はなんだろう?」と考える意識が身についたと思います。前職も編集者でしたが、そこでは、すでに決まった枠組みのなかで記事制作をすることが多かったので、「この企画はそもそもどうやって立ち上がったものなのか」「誰に届けたいのか」と自分から考える機会がなかなかありませんでした。
いまは、企画を立てるときも「なぜそうするのか」という理由づけができるようになったので、自由な企画ができる自社メディアの記事でも、ただ好き勝手やるだけではない、意思のあるものがつくれるようになったのだと実感しています。
吉田:CINRAの編集者は、受託のオウンドメディアでも自社の記事でも、取材対象の人やサービスが伝えたいことはなにか、それを世にどう届けるかを深く考えて企画に落とし込みます。なので、その目的が達成できそうかという視点で、社内の企画チェックも厳しく行われます。だからこそ、意思のある記事をつくるための企画力が身につくのかもしれませんね。
―最後に、これからCINRAの編集者として、挑戦していきたいことを教えてください。
服部:私は「CINRA」に漫画コンテンツをもっと増やしていきたいです。「CINRAの漫画っておもしろい」というイメージを確立して、「それいけ! CINRAくん」とか、新しいキャラクターをつくりたい(笑)。
吉田:いいですね(笑)。なんでも挑戦できるのがCINRAの良さですし。ぼくは最近、マネージャー職になったので、服部さんのように、なにかやりたいことがある編集者たちが、思う存分活躍できるような、たのしい環境をつくりたいです。