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忖度しては意味がない。CINRA×ルクア大阪の、想いをつなぐものづくり

CINRAは、カルチャーメディア『CINRA.NET』や、女性のためのコミュニティ『She is』といった自社媒体の運営だけでなく、ウェブサイト制作やイベント企画など、クライアントワークにも力を入れています。しかも、その多くが代理店を挟まない直接取引。

「課題や思いをダイレクトに共有できるから、クライアントと制作会社の『双方にとってのベスト』と向き合える」。そう語るのは、CINRAプロデューサーの石澤萌。今回は、大阪・梅田にある、国内最大級の駅型商業施設「ルクア大阪」の5周年を記念した一大プロジェクトの裏側に迫ります。本案件を担当したCINRA石澤に加え、クライアントであるルクア大阪の橋本香里さん、北野貴大さんも招いて話をうかがいました。最後に語られる、CINRAとルクア大阪が築き上げた、奇跡のパートナーシップとは?

インタビュー・文:村上広大 編集:市場早紀子(CINRA)

石澤萌

CINRA プロデューサー。広告代理店での営業を経て2018年にCINRA入社。カレーが好きすぎてスパイスカレー屋で副業アルバイト中。最近の趣味はハムスターを愛でること。

橋本香里

ルクア大阪営業部。2011年にルクア大阪事業本部に。フロアマネージメントを担当している。

北野貴大

2016年にルクア大阪事業本部に。販売促進を担当している。

「CINRAとなら新しいことができるんじゃないか」という予感

ー今回の『ルクア大阪の5周年祭』は、イベントの企画・運営だけでなく、キャンペーンビジュアルから館内装飾までトータルで1社がプロデュースするという、大規模なプロジェクトですね。ルクア大阪さんは、どのような経緯でCINRAに声をかけたのでしょうか?

橋本:私がもともと『She is』の会員で、CINRAさんのことはずっと知っていました。また、『NEWTOWN』(CINRA主催のイベント)の「みんなでつくる」というコンセプトや、賑やかなイメージが私の頭に強く残っていて。今回、5周年記念イベントを開催するにあたり、そういう『NEWTOWN』のようなお祭りができたらいいなと思い、コンペの参加をお誘いしたんです。

左から、ルクア大阪の北野貴大さん、橋本香里さん

ー石澤さんはコンペの話をもらったとき、どう思いましたか?

石澤:お話をいただいたのは昨年の10月くらいで、『NEWTOWN 2019』の準備で社内もバタバタしていました。でもわざわざ大阪から、しかも『She is』のつながりで声をかけてもらえたのは、すごく素敵な縁だし、これまでにない規模の案件だったので、挑戦するだけしてみようと参加を決めたんです。コンペまで2週間もなくて大変でしたが(笑)。

でも、参加するからには中途半端なものは提案したくなかったので、事業部内でチームをつくり、スピーディーかつアイデアにこだわって資料をつくりました。

ルクア大阪さんからは、プロジェクトを通して「お客さまやテナントと、友達関係を築いていきたい」というオーダーをいただいていたので、どんなことをすれば友達になれるのかを、チームでいろいろと話し合いましたね。

CINRAの石澤萌

ーコンペということは、ほかにも数社からの提案が集まったと思うのですが、そのなかからCINRAに決めたポイントは何だったのでしょう?

北野:こちらの「友達関係を築きたい」という思いを汲み取って、しっくりくるかたちに落とし込んでくれたことが大きいです。資料を見たときに、ルクアの社員同士で顔を見合わせてうなずいたくらい(笑)。

橋本:ルクア大阪にとっても5周年は大きな節目だし、CINRAさんとならすごく良いものができるんじゃないかという予感がしたので、満場一致でお願いをすることにしました。

ー実際にCINRAと仕事をして、どんなことが印象に残っていますか?

北野:じつは、コンペの段階でぼくは、「本当にお客さまと良き友人関係をつくれるのか?」と不安だったんです。プレゼンのときに、その気持ちをCINRAさんに思い切ってぶつけてみたら、「なれるかなれないかはわからないけれど、まずはコンセプトである『友達になりたいです』を宣言しないことにはじまらないと思います!」と言われたんです。それがすごく印象に残っていますね。

当時のぼくは、商業施設のあり方も、自分の売上重視な仕事のやり方も、アップデートしていかなければと考えていました。そこで後日、CINRAさんとの決起会で、「私たちの常識が違ったら指摘して欲しいし、逆にぼくたちも正直に意見を言います。遠慮なくいろんなことを話して、本気のケンカをしましょう!」と、お酒の勢いで言ってしまいました(笑)。

ーそれは、ある意味で「お互いに本気でやりましょう!」という宣言でもありますよね。どうしてCINRAとなら本音で語り合えるかもと思ったのでしょうか?

北野:橋本から、CINRAさんはコミュニケーションの取り方がとても上手いと聞いていたのが大きいですね。

橋本:じつは以前、別件で『She is』編集部の方々と商談の場を設けさせていただいたことがありました。そのときも、私たちが考えていることや課題にとても歩み寄ってくださって。話が終わったあとに心が開放された気がして、すごく心地良かったんですよね。

―なるほど。石澤さんはクライアントとのコミュニケーションで意識していることはあるんですか?

石澤:どうしたらその案件が楽しくて、プロジェクトの受取り手含め、関係者全員にとってより良いものになるかを、つねに考えています。クライアントの思いを、自分でも納得できるように丁寧に咀嚼して自分ごと化する。だから、一方通行なコミュニケーションで考えるのではなく、クライアントと二人三脚で「みんなにとってのベスト」を導き出せるのだと思います。

『ルクア大阪の5周年祭』のコンセプトムービー

企画が丸くなることを許さない。CINRAが貫き通す信念とは?

ー実際に、制作過程では何度か衝突もあったそうですね。

石澤:メインビジュアルに載せるコピーを決めるときが一番大変でした。定例会議を週1で開催していたんですけど、コピー案に対してああでもない、こうでもないというやり取りが2か月ほど続き、最終的には、私たちの一押しではない案が選ばれて……。

でも私たちは、プロジェクトに込められた思いをお客さんにしっかりと伝えるには、この一押し案しかないという自信があったんです。ルクア大阪のみなさんに私たちを信じて欲しいという思いを込めて、一押しの案を必死にアピールして食い下がりましたね(笑)。

北野:「CINRAさん、なかなか折れへんな〜」と思ってました(笑)。言ってしまえば、私たちがクライアントじゃないですか。これまでほかの制作会社と仕事をしたときも、こんなに食い下がられたことはありませんでした。それに、企画の方向性が紆余曲折あって変わることも珍しくもないので、上層部が下した決断なのであれば、少しぐらい本来のコンセプトより丸くなっても仕方ないなと思うことが多かったんです。でも、CINRAさんは「そんなことは認めません!」というスタンスで引っ張ってくれました。

石澤:私たちも「そんな思いでは、絶対に『友達』になってもらえないですよ!」って言いましたね(笑)。やはり少しでも軸がブレると、一気にプロジェクトの統一感がなくなってしまうんです。本当に「良いもの」をつくるために、コンセプトの軸だけは死守しました。

橋本:でも、いま振り返ってみると、すごく建設的なやり取りで良かったと思います。ここまで本気でぶつかってきてくれる方々って、滅多にいないじゃないですか。

完成したメインコピー(公式サイトより)

ーそうすると、ルクア大阪としても「これまでにない企画になった」という実感があるのでしょうか?

北野:そうですね。こんなに毎回、知恵を絞るミーティングはいままでになかったので。その分、思い出として残っているものもすごく多かったです。

橋本:私は、各テナントさんの売りをキャッチコピーにして、それを店先に設置する企画「ウチの店寄ってってやボード」を担当したんですけど、社内でもすごく好評で。コピーはテナントさん自身に考えてもらったのですが、お店の枠を超えて会話してくれたり、店長だけじゃなくスタッフ全員で考えてくださったり。企画段階では面倒臭がられるかなと心配していましたが、こちらが思い描いていたこと以上の効果が生まれました。

店頭に飾られた「ウチの店寄ってってやボード」(画像提供:ルクア大阪)

ーこれまでのキャンペーンと比べても、反響が大きかったと。

橋本:そうですね。ルクア大阪で大きなイベントを仕かけても、どこか「他人事」のような雰囲気がテナントさんには少なからずあったと思うんです。それが今回は、自分たちで考えたコピーがかたちになって並ぶので、当事者意識が生まれたんじゃないでしょうか。まさに「みんなにとってのベスト」を考えてくれる、CINRAさんらしい企画だったと思います。

北野:しかも、ボードをいまでも愛用してくださっているテナントさんもいるんですよ。それこそ、テナントさんと「友人関係」みたいになれている気がします。

石澤:それはすごく嬉しいです! いま、猛烈に大阪へ行きたいです(笑)。


当時のルクア大阪館内の様子(画像提供:ルクア大阪)

きっかけは会議での一言。こだわりが詰まったビジュアルコンセプトの秘密

ーキャンペーンビジュアルが、すごく印象的ですね。こだわったポイントはありますか?

石澤:「友達」というキーワードをベースに考えていたのですが、いまのかたちになったきっかけは、ルクア大阪の広報の方がある日「スナック」というキーワードを定例会議の場で出してくれたことでした。スナックで名前も知らない人と友達になったり、くだらない話で盛り上がったり。そんなイメージから、一気にビジュアルの詳細を詰めていきました。

セットもビジュアル撮影のために制作しています。小道具はルクア大阪に売っているものをイメージして、マニュキュアや香水などをセレクトしていて。メインモデルは柴田紗希さんにお願いしているのですが、左右にいる人は柴田さんの実際の友達です。コンセプトである「友達」を忠実に再現しながら、自然な表情が引き出せたと思います。

「ルクア大阪の5周年祭」のキャンペーンビジュアル

セット内で使用した小道具(画像提供:ルクア大阪)

北野:商業施設が出す広告としては、これまでにない雰囲気だし、良い意味での「違和感」が気に入っています。このビジュアルに興味を持ったお客さまが、さらにビジュアルのなかに書かれた文章を読むと、「ルクア大阪が自分たちと友達になりたいんだ」ということがわかる。そのフックとしてすごく機能している気がします。

コロナ渦で新たなチャレンジができたのは、強いパートナーシップがあったから

ー一方で、新型コロナウイルスの影響で、予定していたイベントのほとんどが中止になってしまったそうですね。

北野:そうなんです。半年ほどかけて準備をしていたものが、開催の2週間くらい前に急遽中止にせざるをえなくなってしまって。社員のみんなは意気消沈していました。でも、そんな状況のなかで諦めなかったのがCINRAのみなさん。すぐにオンライン配信での開催を提案してくださったんです。そうやって先導してくれたことに、すごく勇気づけられました。

石澤:簡単に諦めたくなかったんですよね。これまで頑張って準備してきたものやルクア大阪さんの思いが、一瞬にして手からすり抜けていく感覚が悔しくて仕方がなくて。それはこのプロジェクトに関わっていた、CINRAのメンバー全員に共通する気持ちだったと思います。

とにかく、開催まで時間がないので、急いで準備を進めることになったんです。当時はオンラインイベントに関するノウハウがまだ社内になかったのですが、早急に配信パートナー企業に相談をしました。もともと大阪で実施する予定だったところを、東京を拠点にした配信イベントに切り替えたので、出演者のスケジュール調整やタイムテーブルの組み直しにも同時に取りかかりました。本来であれば2、3か月くらいかけてやることを1週間ほどで調整したので、振り返ってみても色濃い思い出です。

ーそれだけのことを1週間でやるとは、かなりタフですね……!

石澤:あのときは、とにかく「やる」という選択肢しか頭になくて、どうにかして成功させたいという気持ちだけで動いていた気がします。コロナという逆風が吹いたことで、すごく大きな波に乗る感じになったというか。

協力いただいた出演者の方々も、場所や時間の変更があったにも関わらず快く応じてくださって……。本当にありがたかったですね。

オンライン配信イベントのスタジオの様子(画像提供:ルクア大阪)

ーちなみに、オンラインイベントの最後には、北野さんからCINRAのメンバーに向けて、サプライズでお手紙を用意したそうですね。

北野:感謝の言葉をひと言では伝えきれないと思って手紙にしたためました。オンラインイベントでは、音楽ユニット「チャラン・ポ・ランタン」のももさんにスナックのママ役でMCをお願いしていたのですが、CINRAさんには秘密でSNSのダイレクトメッセージで相談して、イベントの本番中に代読していただきました。

石澤:本当に嬉しかったです。感動のあまり、みんな過呼吸みたいになるほど泣いちゃいました(笑)。

橋本:いわゆるクライアントと制作会社という、受発注の関係値を超えたところでやり取りができたのだなと実感しましたね。

ーそういう意味では、まさにコンセプトにあった「友達になる」を、両社が実現できているのかなと。

北野:そうですね。いまとなっては、困ったことがあったらとりあえずCINRAさんに相談しようという感じになっています。それを友達と呼んで良いのかわからないのですが、そういう感覚でいます。

石澤:CINRAメンバーとして、ルクア大阪さんと素敵なパートナーシップを築くことができたのは本当に良かったと思います。これまでの社会人経験のなかでも、思い出深い、宝物のようなプロジェクトになりました。遠くで光る一番星みたいに、つらいことがあったときに思い出すとすごく勇気づけられるというか。ずっと忘れないだろうし、またこういう仕事がしたいという目標にもなっています。

橋本:いつかまた一緒に、新しいことにチャレンジしたいと思っているので、これからもぜひよろしくお願いします!

石澤:はい。こちらこそ!

画像提供:ルクア大阪

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