こんにちは。キャディに入社して半年ちょっとで3回ほど役割が変わりました吉田です。少し前まではオペレーションや仕組み作り、品質保証などが主でしたが、今月から営業に近いフロントの役割です。
営業?と思われたあなた。突然ですが、キャディって何を売っていると思いますか?
キャディが直接提供しているもの
キャディの主なお客様は産業装置・生産設備のメーカー。キャディが提供しているのは装置・設備の部品です。1オーダーで数点というより装置・設備の金属部品一式の注文が基本です。丸っとキャディにお任せ。
塗装やメッキもやります。樹脂(プラスチック)部品も対応しています。
こういった装置の部品となるとかなりの多品種かつ大量です。1つの装置で数百種類の金属・樹脂部品があります。手のひらサイズの部品から幅・奥行きそれぞれ数メートルの土台部分(架台)まで様々。
これが複数台分のオーダーとなると部品点数は余裕で1,000点以上。大型のプロジェクトになると完納まで数ヶ月や半年に至ることもあります。
キャディはマッチングサービス?
これらの部品を作っているのはサプライパートナーと呼んでいる加工会社の皆さま。キャディのネットワーク&データベースから最適な加工会社を選定させてもらいます。
ということは、キャディが提供しているのは、メーカーと加工会社のマッチング?
↓ 確かにそう書いてる…が否と言いたい。
間違いではないんですよ。ただ、マッチングとかマーケットプレイスという言葉から一般に受ける印象とはだいぶ違うと思います。僕は今あえて「(単なる)マッチングではない」と言い切っています。
じゃあキャディって何なのさ?
お客様にはまず「ファブレスメーカーだと捉えてください」とお話しています。
ファブレス = 自社で製造設備を持たず製造は外部に依託するメーカー
※代表例:Apple、キーエンス、ユニクロなど。ラクスルさんもマーケットプレイスでありつつファブレスメーカーでもありますよね。
設計はお客様から頂きますが、その後は製作を自社でやっていないだけで納品まで責任を持つからです。
お客様と製品(部品)の細かい仕様をすり合わせるし、必要に応じて本製作の前に試作して品質評価も入れる。パートナーが製作した製品を自分たちで検査し品質・納期に責任を持つ。パートナーとタッグを組んで品質改善やコスト最適化に取り組むこともある。
ただ、これはお客様との初接点での説明です。分かりやすさ重視。
本質的にやろうとしていることは「調達支援」ひいては「調達改革」。支援・改革のポイントは「取引コストの低減」です。
キャディの事業と提供価値の変遷
実はキャディの戦略はこの半年強のうちに大きく変わっています。
昨年終盤まで、キャディの事業はマーケットプレイスに近かったんです。先述の仕様すり合わせはもちろんやっていましたが、今よりかなりライト。
この時の取引コスト低減は、キャディが独自のデータベース&ネットワークを活かして最適な加工会社を選定することで実現していました。
ただでさえ忙しい調達担当の方にとって、新規サプライヤの開拓・評価をがっつりやるのはかなりの負荷です。ここをキャディが代替するというわけです。これはこれで非常に有効でしたし、今も有効です。
そして、昨年終盤からは装置一式での発注を積極的に受けるようになりました。様々な加工においてサプライパートナー基盤の強化が進んだ結果です。
先述の通り1つの装置で数百種を超える部品の発注があります。これだけの量とバリエーションを一社で任せられることは非常にレア。そのため、通常は分散発注せざるを得ないのですが、数が数なのでここも負荷が高い。
この分散発注をキャディに集約できる。取引コスト低減の新たな価値です。
この結果、より大手のお客様の需要にも応えられるようになってきました。
ただし、企業規模が大きくなると発注内容の幅が更に広がり、調達活動も複雑になります。また調達担当の方がコストダウンなど調達の最適化を進めようとした時のステークホルダーも増えます。
そのため、本質的な価値提供を行うためには装置単位よりも広範に、調達全体を視野に入れる必要が出てきました。全体の中でキャディが提供・最適化できる部分を集約し、調達部門としては付加価値が高い業務に集中する。
前置きが超長くなりましたが、このように取引コスト低減を通じて調達活動全体・調達戦略をアップデートしていく。これがキャディが今売っているもの=提供価値だと僕は捉えています。
スケールしないことをあえてやる
装置一式、さらには調達全体と対象範囲が広がってくる中で、製作仕様や品質観点でのすり合わせは、マーケットプレイス的にライトにやるのはまだ難しい。むしろすり合わせに力を入れた方が、サプライパートナーもやりやすくなり、両サイドにメリットがあることが見えてきました。
そのため、先述の通り、単なるマッチングではなく、自分たちのことを一旦ファブレスメーカーと位置付けるくらい踏み込んで、お客様とより密にコミュニケーションを取ることにあえて注力しています。
こういった仕様のすり合わせや品質担保は、いまキャディのメンバーが介在しています。アナログな情報が多く、また標準化まではまだ遠いためです。僕自身もここに直接関わり、業界全体に及ぶ非効率性をより強く実感するようになりました。
それだけに、ここでの蓄積は非常に重要なアセットです。このプロセス自体を新たな仕組み・体験に昇華させていくべきだよね、という発想を持っているからです。
属人的かつ複雑なオペレーションで仮説検証・ナレッジ蓄積を行い、今後(狭義の)プロダクトに取り込んで、標準化・半自動化していく考えです。
提供価値をアップデートし、Whole Productへと進化させていく
最初からこういったプロダクト構想があったわけではありません。事業の中で課題の発見や仮説検証が進み、これはプロダクト化していくべき、となって企画が練られつつある。
事業の変遷に沿って記載した通り、キャディはこれまで提供価値をアップデートし続けてきています。昨年の主要顧客層に対してキャディはPMFしていたと言っても良いと思うのですが、そこから顧客層拡張の芽を逃さず、産みの苦しみを味わいながらも新たなPMFを目指しました。
上述のオペレーションからプロダクト化もそうですが、課題ドリブンのキャディはこの提供価値のアップデートとその都度のPMFを繰り返していくんだろうと思います。
その結果として、マーケットプレイスか、またはSaaSやクラウドERPのような存在になるか、それらのミックスか、はたまた新たなサービス形態か… 完全に定まり切ってはいないですが、いずれキャディの姿はWhole Product(※後述)としてスケールを指向する形に変容していきます。
事業ドメイン=対象市場がデカく、目指している山が高い。それも途方もなく。なので、登りがいがあります。
潜在課題を掘り起こし続けて、来るべき未来を引き寄せる
企業規模を問わず、調達領域に横たわる多大な非効率性を解消していこう、より本質的なところにリソースを割けるよう調達を改革していこう、といったお話に前向きなお客様は少なくない。
一方、課題意識がそこまで強くない企業もあります。ほとんどの場合、現状で調達は回っているわけで、それはそれで分かります。ただ、そういった企業も実態を掘り下げていったり、ステークホルダーが変わると課題が顕になったり、反応が変わることがあります。
ビジネスサイドのフロントとしては、お客様に寄り添いながら、この潜在課題の掘り起こしにいかにチャレンジできるかがひとつの肝。この積み重ねが新たなPMFの可能性を拓き、次なるサービス・プロダクト開発の種になり、製造業の調達領域変革という来たるべき未来を引き寄せることに繋がる。そう確信して取り組んでいます!
こんな取り組みに関心ある方、気になってたんだけど遠慮しちゃってたなんて方、ぜひお声がけください!
おまけ
上述したような事業の課題や発見・仮説検証からプロダクト化を構想する流れは、文中でも触れた”Whole Product”というキャディの考え方が現れています。PdMの笹口さんが詳細語ってくれているので記事を置いておきます。
また、取引コスト低減の観点など、キャディの提供価値の全体像、もっと抽象度の高い話は同じくPdMの白井さんが書いてくれてるので、こちらもご参考までに。