地域・教育魅力化プラットフォーム(以下、PF)で地域みらい留学365の事業を推進する佐藤真由さん(通称:さとまゆさん)。東京、海外、そして島根と、「グローバル」と「ローカル」を掛け合わせた「グローカル」な視点を持つさとまゆさんに、今回はお話を伺いました。《インタビュアー:成田知世》
▼PFに入るまで
- はじめに、幼少期から高校までのお話を伺いたいです。
幼少期から「明るく元気な子」と言われていて、基本的に今も変わっていません(笑)。たくさんの友達とワイワイ遊ぶというよりは、1人で面白いことを見つけて遊ぶことが好きでした。小学生の頃は、通学時間によく本を読んでいて、特に重松清の著書や東野圭吾などのミステリーを読んでいました。そういった背景もあって、中学・高校では文芸部に入部して、小説を書いていました。一方、学内では「文芸部は大人しい」というイメージがあったためか、1年生があまり入部してこず、私の1つ上の代で廃部になりかけたこともありました。そんな中、高校2年生の時に私が部長になったので、廃部を阻止するのと、せっかくなので自分たちの代で新しいことをやろうと、芥川賞作家にインタビューしたり、「お~いお茶」のコンテストに応募したりと、後輩たちと毎日忙しく(充実して)過ごしていたことを鮮明に覚えています。
- 廃部寸前から存続までいろいろと試行錯誤されたのでは…と思うのですが、その際にどういうことを意識されていましたか?
リーダーとして意識していたことは、「巻き込むこと」です。新しいことを始めると、必然的に“やらなければならないこと”が増えてしまいます。自分一人ではとてもじゃないけど抱えきれないので、顧問の先生を巻き込もう、顧問の先生を巻き込むために後輩を巻き込もう、ということを意識していました。例えば、何かやりたいことがあったときは、まずは後輩に「これをやってみない?なぜなら…」と思いを共有、共感してもらうことを大切にして、その後の具体的な行動は後輩に任せていましたね。また、それと同時に後輩たちにも「部活をどうしていきたい?」「〇〇さんは何がしたいの?」と定期的に意見をもらうようにしていました。自分が行動を指示する“トップダウン型”というよりは、思いの共有は大切にしながらも後輩のやりたいようにやってもらう“フォローアップ型”のリーダーシップだったと思います。そのため、常日頃から意識していたこととしては、話しかけられやすいように「いつも笑顔でいること」、「相手の意見をよく聞くこと」です。これは今でも大事にしていることです。
- ありがとうございます。その後の大学・学部の進路選択の「背景」を伺いたいです。
1年浪人して、順天堂大学の国際教養学部に入学しました。現役時代は、本当に偏差値しか見ておらず、“できるだけ偏差値の高いところへ行こう“ととにかく必死だったのですが、”努力”の実感のないまま頑張りすぎてバーンアウトしてしまいました。不本意ながらの浪人生活でしたが、“本当に自分がやりたいこと”を考える時間を改めてとることができ、「文系の専門性を磨きたい」と思いました。私の中で、その専門性は語学だったので、国際教養学部、その中でも中国語の専攻を選びました。その理由は2つあります。1つ目は、高校1年生の頃に旅行で上海に行った際に、中国人の前向きなエネルギーに惹かれたからです。もう1つが、多くの学生が英語やスペイン語の履修を選択する中で、少し人と違う選択をしようという思いがあったからです。こうした理由から、学内ではそれほどメジャーではなかった中国語を選択しました。
- そんな思いで入学された大学生活で、どんな活動をされていたのか伺いたいです。
1つは一般社団法人ティーチャーズイニシアティブという教育系の団体で、教育系ワークショップの企画を担当していましました。具体的には、教員の方向けのワークショップで、「ゼロベースで21世紀型の学校を創るなら?」と、次世代の教育の在り方を考えながら、先生自身のセルフオーナーシップやリーダーシップを検討してもらうものです。もう1つは、もともと語学への関心が高かったこともあり、国際開発系の学生団体で、広報と渉外活動を行っていました。
高校までカトリック系の私立学校に通っていたのですが、そこで宗教に関する授業を受けていて、世界の貧困や教育などといった社会課題に向き合う時間が長かったこともあって、どちらも社会系の団体で活動していました。
(一般社団法人ティーチャーズイニシアティブのラボメンバーとの一枚)
- なるほど…そもそもなぜ教育の領域に関心を持ったのでしょうか?
もともと人の得意不得意、相性、性格やコミュニケーションスタイルなどに日常的に着目する癖がありました。そのうち、「人の可能性を最大化させる」ことに興味が遷移し、教育領域にも関心をもつようになりました。教員免許を持っているわけではないのですが、教員になることも検討していましたね。
- 教員になることも選択肢にあった中で、大学卒業後に入社した会社を選んだ背景やそこでの仕事についてお話を伺いたいです。
大学卒業後は、リクルートRGFへ新卒入社しました。いつか教員になりたいと思ったときに、まずは「広い世界(いろんな仕事・生き方)を見たい」と思い、人材会社を選びました。入社後は、バイリンガル人材と外資系企業をつなぐ人材紹介営業チームに配属となり、私は転職したいクライアント(求職者)の面談を担当していました。スピーディーな対応や意思決定が求められる場面が多く、じっくり1人1人に寄り添いきれなかったという反省もありますが、その分、求職者の目線に立って、その人の気持ちを想像することの重要性を身をもって学びました。
(チームメンバーたちとFriday beerでの一枚)
▼PFに入った経緯
- その後、PFへ転職されたきっかけはどういったものだったのでしょうか。
前職では、多国籍チーム(約50名のうち、日本人3名)の日本人プレーヤーとして働いていたのですが、日本や日本人の良さが正直分かっていませんでした。海外の方々と協働する上で、日本人として自文化の強みはなんだろうという疑問をいつも抱いていました。
一方、学生時代に関わっていた一般社団法人ティーチャーズイニシアティブで健吾さん(PF職員)と知り合っていたこともあり、社会人1年目の時に本業の傍ら、地域みらい留学のお手伝いを少しやっていました。その流れで尾田さん(PF理事)とも知り合うようになり、尾田さんが「PFに来ないか」と声をかけてくれました。それまでの私は、東京で生まれ育ち、海外にしか目が向いていなかったのですが、「日本の地方に、日本や日本人の魅力があるのかもしれない」と思うようになり、PFへの転職を決心しました。
- すごいご縁ですね。。現在、PFではどういった業務を担当されていますか?
地域みらい留学365(※)の説明会などのイベント企画・運営、CRM、参画校のフォローを担当しています。具体的には、クライアントである参画校が、どうしたらもっと効率よく留学生の募集活動ができるのか、カスタマーである高校生は、どうしたらより地域留学に魅力を感じ、留学したいと思って決断してもらえるのかを追究しています。この制度は、まだまだカスタマー(高校生)優位な市況感ですが、PFとして、クライアントである参画校の負担をどれだけ軽減できるかも、同じくらい目配せするべきだと思って取り組んでいます。
(※地域みらい留学365の詳細はこちらをご参照ください)
(地域みらい留学の参画校の皆さんとのキックオフイベントの様子)
▼PFに関わり続ける理由
- そんなさとまゆさんが、現在もPFに関わり続けているのはなぜでしょうか?
理由は大きく3つあります。1つ目は、個人的に日本人らしさや日本の強さを見出して、グローバルで活かしたいためです。クライアント(参画校)が北海道から沖縄まで全国各地いるので、日本の多様な地方文化を知る機会があり、そこで日本の良さを学ぶことができると考えています。2つ目は、”活かせる”人を増やすためです。地域みらい留学によって、地域で経験した異文化折衝力やコミュニケーション力、リーダーシップは、どんな環境でも役に立ちます。留学後、今度は別の環境で、それらを活かし活躍していける人を増やすことに貢献したいです。3つ目は、新しい価値を創っていくことが楽しいからです。PFが徹頭徹尾こだわっている“関係性“に軸足を置いた事業展開や組織の運営方法は、私にとって斬新でした。決して一人ではできない挑戦を、各個人が半径5メートル以内の関係性を充実させることで、乗り越え、拡大させていく。新しい価値を創るとはこういうことなんだ、と今まさに実感しています。
- ありがとうございます。では、さとまゆさんのPFの好きなところはどういったとこでしょうか?
好きなところで言うと、職種や役割が固定化・明確化した、筋肉質な機能分化型組織ではなく、思いを持った様々な立場・キャラクター・役割の人が自由に関わり、共に協働・探究していく価値分化型な柔軟性の高い組織である点です。例えば、「これをやりませんか?」と言えば、職種や立場を越えて誰でもフラットに参画したり、率先して手を貸しあえる文化や関係性があります。そのため、一緒に新しい価値を創る場としてすごく素敵な場だと感じています。
- 柔軟性という点では、多国籍チームと共通している部分もあるんじゃないかな…と推測します。PFで働くようになって感じられた、ご自身の変化はありますか?
「三方良し」のコミュニケーションスタイルを大切にするようになったことです。例えば、私から見て(前職のような)イギリス文化では独立した個同士のコミュニケーションという側面が強かったですが、日本は組織と個がイーブンな関係だと感じています。そのため、「一個人としての佐藤」というよりは「PFの佐藤」として、社内でも社外でもふるまう必要があります。直接的なクライアントとカスタマーはもちろんですが、仕事上、自分の言葉や一挙手一投足が、PFの一員として、社会からどう見られるのかは常に意識しています。
- では、さとまゆさんがPFを通じて叶えたいことは何でしょうか?
PFのメンバーや参画校のコーディネーターの皆さんと、新しい価値や機会を創ることにです。参画校の現場の方々にとって「あったらいいな」という部分を先回りして提案したり、現場からの意見を聞きながら運営方法などを一緒に改善したりすることを通じて、いままでなかった価値や機会を提供していきたいです。というのも、地域みらい留学365は昨年発足した新規事業なので、現場の人たちに協力してもらい、意見を吸い上げながら、事業を創っていく必要があると思っています。また、個人的には、地域みらい留学365を通じて、将来多国籍チームで活躍するような人を輩出したいとも思っています。地方は都会よりも、おもてなしの様な「周りへの思いやり・配慮」がより必要な環境だと感じています。そのような日本的センスを、精神論や概念としてではなく、実際の自分の行動にまで落とし込み推進できる人がでたらいいなとも思っています。
(PF入職当日、メンバーと松江城にお花見にいったときの一枚)
▼今後の夢について
- さとまゆさんの今後の夢を教えて頂きたいです。
日本人として、日本文化の強みを活かして、多国籍チームでそれぞれの個人がパフォーマンスを最大限発揮しながら、個人の能力の総量を超えたようなことができるチームを組成したいです。私は、地方に来て、日本文化の持つ強い「周囲への配慮や思いやりの”精神”」は、立派なコーディネーション”機能”として、とくに異文化で貢献できるものだなと実感しているからです。
- 最後に、さとまゆさんが働く上で大切にされていることを教えてください。
大きく2つあります。1つ目は、常に「これがもし多国籍チームだったら、自分はどう振る舞うか」という視点を忘れないことです。そうすることによって、日本人だけでできている今の組織の良さや改善点、また、普段は気付かない日本人の強みが表面化する気がしています。2つ目は、参画校フォローとして「聴く」姿勢を意識して、相手の本音を引き出すことです。こういった姿勢を持つことによって、一緒に事業を進めていく上で、良質な関係性の構築や一緒により良い価値を創っていけると思っています。今後もこの2つは大切にしながら、自分の夢を叶えていきたいです!
▼最後に
人の話を「聴く」ということをチームでひとつのことを円滑に進める上で強く意識されている点が印象的なさとまゆさん。海外のチーム、そして日本のチームの両方を経験したからこその考えが素敵です。
佐藤真由
《プロフィール》
1995年4月22日生まれ。東京都品川区出身、島根県松江市在住。幼稚園から高校まで一貫の女子校へ通う。大学では国際教養学部で異文化コミュニケーションを専攻、大学3年時に中国大連理工大学に留学。大学卒業後、RGFタレントソリューションズ株式会社(通称:リクルートRGF)へ新卒入社。多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集まった多国籍チームで、バイリンガル人材と外資系企業をつなぐ人材紹介営業に従事する。その後、PFへ転職し、現在は地域みらい留学365のイベント企画・運営や、CRM、参画校フォローを担当する。趣味は、旅行、自転車、ランニングなど。