24時間365日、スマートフォンから行政手続きができる「スマホ市役所」を実現するGovTech Expressは、現在、全国360以上の自治体に導入され、人口換算では約3,400万人に届きうる規模へと広がっています。
このサービスを提供するBot Expressは、2026年7月時点で23名のメンバーで構成しています。コンパクトであることを強みに、社会課題を技術で解き、住民サービスとして実装する力を磨いてきました。
どのように、少人数で全国規模の行政サービス変革に挑むのか。なぜ、パートナーサクセスを事業の中核に置いているのか。このスピードと社会実装を支えている仕組みとは。
Bot Express代表取締役 中嶋と、パートナーサクセスマネージャー(以下、PSM)をリードする乾が、Bot Expressの会社づくり、事業の考え方、そして少人数で社会実装を進めるための仕組みについて語りました。ぜひ、対談動画でご覧ください。
目次
プロフィール

株式会社Bot Express 代表取締役 中嶋 一樹
Salesforce、日本オラクル等でエバンジェリストとしてキャリアを重ね、前職のLINE在籍時に日本初のLINEを使った行政サービスとなる粗大ごみ申請(福岡市)の仕組みを実現。 2019年に株式会社Bot Expressを創業。「お客様は住民、自治体はパートナー」という理念のもと、共鳴していただけるパートナーと最高の住民サービスを提供することをミッションとして事業を推進。

株式会社Bot Express パートナーサクセス部長 乾 友輔
リクルート、LINE Fukuoka、ROUTE06にて事業企画・プロダクトマネージャーとして従事。「日本の行政サービスのデファクトスタンダードを塗り替える」というミッションに惹かれ、2025年4月よりBot Expressに参画。パートナー自治体とともに、最高の住民サービス提供のあり方を考え、実装まで伴走している。
対談動画
1. 行政サービスは、なぜ変わるまでに時間がかかるのか
乾:
まず、Bot Expressの事業全体について伺います。私たちは、日本の行政サービスをアップデートすることに挑戦している会社です。中嶋さんは、公共領域が抱える課題をどのように捉えていますか。
中嶋:
課題は複数ありますが、特徴的なものを一つ挙げるとすれば「スピード」だと思います。特に公共領域では、予算編成に起因するスピードの課題が大きい。自治体が新しい事業を行おうとすると、まず予算を確保しなければなりません。仮に今年予算を取れたとしても、実際に取り組めるのは来年度になる。つまり、今考えついたことを、今すぐ実行することが難しい構造になっています。この少なくとも1年ずれてしまう構造が、行政サービスを変えていくうえでの大きな制約になっていると思います。

写真左:乾、写真右:中嶋
乾:
そこに対して、Bot Expressはどのような役割を果たそうとしているのでしょうか。
中嶋:
従来の公共領域では、業務委託という形で民間事業者が自治体の業務を支援することが一般的でした。予算を取り、来年度に契約し、仕様をまとめ、その仕様に沿って実現していく。そういう進め方です。
私たちは、その構造自体を変えたいと考えました。自治体が常時使えるプラットフォームを提供する。業務委託ではなく、サービス利用契約として、自治体が通年自由に使える状態をつくる。そうすれば、職員の方が「これをやりたい」と思ったときに、自分たちでサービスを開発することができる。思いついたことを、明日にでも実現できる。行政サービスの変化にかかる時間を短くすること。そのための構造をつくること。それが、GovTech Expressを通じて私たちが果たそうとしている役割です。

GovTech Express サービス特徴
2. 全国360以上の自治体とつくる、行政サービス変革の現在地
乾:
GovTech Expressは現在、全国360以上の自治体に導入され、人口換算では約3,400万人に届きうる規模になっています。PSMとして全国の自治体と向き合っていると、私たちのプロダクトや取り組みが日本各地に広がっている実感があります。ただし、まだ届けられていない自治体も多くあります。この現在地を、中嶋さんはどのように捉えていますか。
中嶋:
感慨深いですね。全国約2割の自治体が、私たちのパートナーになっているということなので。日本のどこかへ移動していても、「この町もパートナーだ」「この自治体とも一緒に取り組んでいる」と感じることが増えてきました。日本の隅々まで、私たちの取り組みが少しずつ届いている。そんな実感があります。
乾:
導入自治体数が増えるほど、私たちPSMも「導入して終わり」ではなく、それぞれの自治体が本当に住民サービスを変えていける状態をつくる責任が大きくなっていると感じています。今後さらに広げていくうえで、重要になることは何でしょうか。
中嶋:
やはり、スピードだと思います。パートナー自治体の方々と一緒に、今ある課題を解決していく。思い立ったら、まず形にして、提供し、トライアンドエラーを繰り返していく。自治体が自分たちで行政サービスを変え続けられる状態を、さらに広げていきたいと考えています。
そのためには、GovTech Expressそのものも変わっていく必要があります。これまでのGovTech Expressは、使いこなせる職員の方にとって非常に強力な、ある意味で「玄人好み」のプロダクトでした。これからは、より多くの職員の方が説明書なしで自然に使える状態へ。誰でもサービスをつくれるプロダクトへ変えていくことが、今後の大きなテーマです。

3. 小さく、速く、社会実装する会社である理由
乾:
Bot Expressの事業としての強みについて伺います。私自身、入社してから、アイデアが出てから形になるまでの速さや、現場の課題がすぐプロダクトや施策に反映されていく速さに驚くことがあります。中嶋さんは、Bot Expressの強みをどこにあると考えていますか。
中嶋:
社名に「Express」と入っている通り、私たちは昔から「思い立ったらすぐやりたい」という性質の会社です。少人数でコンパクトな体制であることも含めて、アイデアを形にするまでのスピードは、とても速い会社だと思っています。
たとえばAIのような新しい要素技術が出てくる。その技術を見たときに、私たちは単に技術として眺めるのではなく、「この技術があれば、今この業界にある課題をどう変えられるだろう」と考えます。そして、実際に一つ作ってみる。その一つ作って提供するまでのスピードが異様に早いのがBot Expressの特徴。時代の流れやテクノロジーをリアルタイムに捉え、行政領域の課題と結びつけ、自分たちの手で形にし、その手応えまで確かめる。それができる会社だと思っています。

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4. 競争優位は、社会実装のリードタイムにある
乾:
テクノロジーは他社も模倣し得るものだと思います。AIをはじめ、新しい技術はどの企業も活用できるようになっていく。その中で、Bot Expressが競争優位を持ち続けるためには、何が重要になるのでしょうか。
中嶋:
よく「御社の競争優位性は何ですか」と聞かれることがあります。ただ、「この機能は絶対に他社には真似できない」と言い切れるものは、世の中にあまりないと思っています。どれほど優れたサービスであっても、時間が経てば類似サービスは出てきます。機能だけで、誰も追随できない状態をつくり続けるのは難しい。
だからこそ重要なのは、機能そのものではなく、そこに到達するまでのスピードとリードタイムです。私たちは、アイデアを形にするスピードが速い。さらに、多くのパートナー自治体がいるので、つくったものを実際に社会へ届けることができます。そして、現場からフィードバックを受け取り、すぐに改善へつなげることができる。他社が同じことをやろうと思えば、いずれ実現できるかもしれません。ただ、そこに半年から1年ほどかかるとしたら、その間に私たちは次のテーマを見つけ、また新しいサービスを提供している。
常に一歩先に社会実装し、現場から学び、次に進む。そのリードタイムを持ち続けられることが、私たちの強みです。そして何より、誰もやっていないことをリリースするのは、やはり楽しいんです。

5. PSMは、導入支援ではなく「成功までやり切る」仕事
乾:
Bot Expressでは、PSMという役割が事業の中心にあります。Bot Expressは、事業を広げていくためのエンジンをどこに置いていますか。
中嶋:
私たちは、大規模に広告宣伝費を投じて事業を伸ばしていくことを、成長の中心には置いていません。Bot Expressが大切にしているのは、売上規模そのものを追うことではなく、新しいことに挑戦し、自治体職員や住民の方々に驚いてもらい、喜んでもらうことです。
そのために、まず目の前のパートナー自治体を成功に導く。サービスを通じて、「便利になった」「助かった」と感じてもらう。その事実を、きちんと発信する。それを見た別の自治体が、「隣の町で見たあの取り組みを、自分たちの自治体でもできないか」と関心を持つ。そこから新しい共鳴が生まれ、パートナーシップの輪が広がっていく。この循環が、Bot Expressの事業成長のコアエンジンだと思っています。

公式noteで発信している、パートナー自治体の成功事例
乾:
組織の体制として、Bot Expressではパートナーサクセスマネージャーという役割が大半を占める構成になっています。私自身も、PSMは単なる導入支援ではなく、自治体が実現したいサービスを一緒に考え、住民に届くところまでやり切る仕事だと捉えています。中嶋さんは、PSMをどのような存在であるべきだと考えていますか。
中嶋:
自治体が提供したいと思っているサービスを、実際に提供できるところまで完遂する。その実現をミッションにした役割だと思っています。GovTech Expressへの深い理解と、自治体の業務・組織・住民接点への理解。その両方が求められます。
もともと私がイメージしていたのは、発注者と受注者が向かい合うのではなく、同じ仲間として、同じ目線で取り組む関係性でした。一般的にはカスタマーサクセスマネージャーと呼ばれる役割を、あえてパートナーサクセスマネージャーと呼んでいるのも、そういう考え方が源泉にあります。自治体の皆さんと同じチームとして、成功までやり切る。そのための役割がPSMです。
乾:
PSMの働きは、事業成長にもプロダクトの進化にもつながっていると感じています。パートナー自治体と同じ目線で考え、つくり、住民に届ける。そして、その成功を発信していく。そうしたPSMの働きは、GovTech Expressというプロダクトや、Bot Expressの事業成長にどのようにつながっていると捉えていますか。
中嶋:
はい、それがコアバリューだと思います。私たちにとっては、成功事例があり、それを見たほかの自治体の方々から声をかけていただく、という流れが非常に大きい。それ以外のマーケティングはないと言っても過言ではないくらいだと思っています。
プロダクトの進化という面でも、PSMの役割は大きいです。製品を拡張していくにあたっては、私たちならではの考え方があると同時に、実際にリリースしてみて初めて見えてくる現場のニーズや、想定外のギャップがあります。その部分を正しくフィードバックしてくれるのが、パートナーサクセスマネージャーです。
GovTech Expressは、Bot Expressらしい少し奇想天外な発想と、地に足のついた現場のニーズの組み合わせでできている。そのバランスを支えているのが、PSMの働きなのだと思います。

6. カルチャーを評価に組み込むことで、小さく強い組織をつくる
乾:
組織設計についても伺います。Bot Expressは、少人数で大きな価値を出すことを大切にしている会社です。メンバーにはどのような働き方や思考が求められるのでしょうか。
中嶋:
まず第一は、カルチャーです。カルチャーを、メンバー一人ひとりが本気で良いものだと信じていること。体の隅々、毛細血管までそのカルチャーが流れているような状態を保つこと。それができれば、組織は非常に強くなります。ただ、人数が増えるほど、カルチャーの濃度は薄れやすくなります。だからこそ、Bot Expressでは、入社して最初に話すのもカルチャーの話ですし、全体定例でも繰り返しカルチャーについて話します。
同じ話であっても、何度も唱え続ける。具体例を出しながら、一つひとつの意味を再確認する。会社として何を大切にしているのかを、繰り返し伝え続ける。小さな組織で大きな成果を出すために、カルチャーは単なる理念ではありません。組織の強度を決める、極めて実践的なものです。
Bot Express Culture | Notion私たちが目指す組織の姿。bot-express.notion.site
乾:
カルチャーを浸透させ、保ち続けることは、とても難しいことだと思います。カルチャーや価値観を組織の隅々まで行き渡らせるために、会社として意識していることや、取り組んでいることはありますか。
中嶋:
その前提として、まず大事なのは、私自身がそのカルチャーを本当に正しいと思えているかどうかです。カルチャーや、振る舞いの基軸となるCodeを定期的に読み返しても、今まで書きためてきたものに違和感はありません。これが私たちの価値観の基軸だという確信があります。
まず自分自身がそこに確信を持つこと。そして、それを何度も唱え続けること。同じ話であっても、新しいメンバーが入ってきますし、時間とともに意識は希薄になっていきます。だからこそ、具体例を出しながら、一つひとつの意味を再確認し続けることが重要です。
最後にもう一つが、評価に踏み込むことです。Bot Expressのパフォーマンスレビューには、「技」「範」「功」という3つの軸があります。「技」は専門能力やスキル。「功」は成果や業績。そして「範」は、模範となる振る舞い。つまり、カルチャーを理解し、体現しているかどうかです。
この3つの中で、Bot Expressが最も重視しているのは「範」です。たとえ技術力や成果が抜きん出ていたとしても、「範」がBot Expressらしくなければ、評価すべきではないと考えています。

7. まだない発想で、新しい行政サービスをつくる仲間へ
乾:
最後に、これからBot Expressに入社いただきたい未来の仲間に向けて伺います。どのような期待を持っているのかという点とメッセージをお願いします。
中嶋:
まずは、私たちが実現しようとしているビジョンに、心から共鳴していただける方に巡り会えたらと思っています。まだ成し得ていない発想を持ち、自治体と協働し、新しい時代の行政サービスをつくっていく。そういう姿を想像すると、とてもワクワクします。
Bot Expressでは、社会に資するサービスを自分たちで考案し、実装し、提供し、その手応えを確認するところまで関わることができます。これは、私たちの会社ならではのやりがいです。ビジョンに共鳴していただける方にとっても、きっと一番エキサイティングな部分なのではないかと思います。

Bot Expressの事業やカルチャーに関心を持っていただけた方は、ぜひ採用情報をご覧ください。事業の詳細、現在募集しているポジションや、私たちが大切にしている考え方を紹介しています。
Bot Express 採用特設サイト | Notion1. Bot Express ミッションbot-express.notion.site
編集後記
本インタビューの企画・編集を担当した、PR・人事部長の松尾です。
対談の中で何度も出てきた「スピード」。社内で会議をしていると、会議が終わる頃には、もう何かが形になっていることがあります。システム開発でも、企画でも、制作でも。驚くほど速く物事が前に進んでいく場面に、日々立ち会っています。
ただ、それは単に手を動かすのが速いということではありません。一人ひとりが自分の役割に責任を持ち、考え、決め、いち早く形にする。その姿勢が、組織の習慣として根づいているからこそのスピードなのだと感じています。
神経を研ぎ澄ませて、やることを選ぶ。常に考えを深め、自分たちにしかできないユニークな価値を追求する。
この記事を通じて、Bot Expressのあり方を、少しでも感じていただけたら嬉しいです。
