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ノンアルコール飲料という「新しい選択肢」を広めるために、ロジスティクスこそが重要なキーとなる

世の中にノンアルコール飲料の「新しい選択肢」を広げるべく立ち上げたBeverich。その設立に力を貸してくれた投資家の方々に、代表取締役の木下慶がお話しを聞く「投資家対談」シリーズ。第2回の対談相手は、木下がメルカリ在籍時代の上司にあたる、株式会社メルカリ執行役員 VP of Logsiticsの進藤智之さんです。ロジスティクスのスペシャリストである進藤さんには、Beverichの事業には欠かすことのできないロジスティクス面でのサポートを数多くをいただきました。Beverichに期待すること、そして物流テックの可能性についてうかがっていました。

自分の強みも弱みも指摘してくれる人柄への信頼感

──まずはお二人の接点から改めてうかがっていきたいと思います。

木下:最初の接点は、まだ進藤さんがメルカリに入社される前になります。すでにメルロジの設立を検討しはじめていた時期で、進藤さんは外部の物流のコンサルとして関わられていました。僕自身はメルカリからメルロジへ異動したのですが、メルロジの設立そのものには関わっていたわけではなく、会社としての立ち上げ前あたりからミーティングに呼んでもらうようになり、そこでお話したのが最初ですね。

後に進藤さんがメルロジに正式に入社されたのですが、その当時は別の方がメルロジのCEOをされていて、その方のレポートラインでした。進藤さんがメルロジのCEOになられた際に、進藤さんがレポートラインとなり、上司部下の関係になったというような関係性です。

──お互いにどのような印象を持たれましたか?

進藤:オンラインでのコミュニケーションのみだったので、初めてリアルに会ったときに「こんなに背の高い人だったんだ」と(笑)。第一印象としてはもうそれが鮮明に残っています。

木下:それはいろんな人に毎回言われますね(笑)。


株式会社メルカリ執行役員 VP of Logistics Marketplace 進藤智之(右)

大学卒業後、ヤマト運輸に入社し、法人支店長を経験。2007年には日本IBMにて、コンサルティング事業部にて運輸・物流のプロジェクトを担当する。2013年にアマゾンジャパンに参画し、物流ネットワークの立上げ責任者を務める。2020年、イオンネクスト準備株式会社にて理事物流部長に就く。その後、2021年にメルロジ代表取締役COOに就任、2022年2月より株式会社メルカリ執行役員 VP of Logistics Marketplace 。

Beverich株式会社 代表取締役 木下慶(左)

2010年筑波大学大学院コンピュータサイエンス専攻修了。同年株式会社NTTデータにシステムエンジニアとして入社。国内大手クレジットカード会社のWebシステム開発に従事。2012年ランサーズ株式会社の創業期にソフトウェアエンジニアとして入社。プロダクトマネージャー(PM)に転向後、ランサーズのプロダクトオーナーを務める。2016年株式会社メルカリ入社。US版、UK版のフリマアプリのPMを務めた後に2019年国内フリマ事業のHead of Productとしてプロダクト責任者に就任。2021年メルカリの物流子会社メルロジの設立と同時にメルロジCPOに就任。2022年10月Beverich株式会社を創業。

──どれくらいの期間をご一緒したんですか?

進藤:約1年ですかね。僕もIT企業で何社か仕事をしてきましたが、プロダクトに関わる人は要件が決まってから動く印象が強かったのですが、木下さんの場合はプロダクトの人でありながら、ビジネスセンスを感じさせるというかある種の柔軟さを持っていて、「ビジネスをどうつくっていくか」ということを考えることに長けてるという印象でした。木下さんはメルロジのCPOという立場ではありましたが、それ以上に「ロジスティクス」を起点として、一緒に新しい事業を作り上げていくメンバーとして頼りにしていました。

木下:自分としてはずっとプロダクト側でやってきましたが、やっぱりプロダクトは課題解決するためのものであり、プロダクトをつくること自体が目的ではないと思っていましたし、キャリアを積むにつれてプロダクトを通してどういう価値を作るのかを考えるようになっていったので、興味関心もビジネス側に移っていたんですね。なので、自分の意識が変わってきたタイミングで、進藤さんとご一緒できたのはとてもラッキーだったなと。

──それまでロジスティックまわりの経験はあったのですか?

木下:メルカリアプリのプロダクトヘッドをしていたときは、その中にロジスティクスに関わる部分もありました。メルカリに関して言えば、お客さまが取引後にモノを発送しなくてはならない、また受け取らなくてはいけないので、そこの差別化こそが全体の体験の優位性につながります。いち早く匿名配送を打ち出せたことも、メルカリが伸びた理由の一つだったと思いますし、そういった経験もあってロジスティクスは興味関心が強い領域でした。

──お2人で仕事する中で印象的だったことはありますか。

木下:仕事というよりも、進藤さんのいろんな発言が印象に残っています。一つは僕のことを「アイデアマン」だと言ったくれたことです。

進藤:言いましたね!

木下:僕は自分の強みの一つは、アイデアを出すことにあると思っています。いろんなことを調べて「こういうことができるんじゃないか?」と考えることがとても好きなので、そこを評価していただいたのがめちゃくちゃ嬉しかった。

もう1つは、まだ直接のレポートラインになる前に、「Peer Review(360度評価)」を依頼したことがあって、改善点のところに「周りの目を気にしすぎている」と一言だけ書いてあったんですね。そこは自分でも自覚していたところでしたし、まだ進藤さんとの接点がそこまで多くなかったタイミングで、本質を見抜いて的確にフィードバックしてくださったことに信頼感を覚えました。

──そこまで接点がなかった中で、本人が自覚している強みや弱みを見抜けたポイントはあるのでしょうか?

進藤:僕は26〜7歳ぐらいからずっとマネージャー職をしてきて、支店の責任者をしていた時には部下が1,500人ぐらいいました。そういう意味だと、僕も気にしすぎるぐらい周りを見てきたんですね。

大きな意思決定をするためには、人それぞれの個性や長所を伸ばす方が組織として上手くいくと思うので、人に寄り添っていくことを自分の信念としていました。木下さんは、ビジネスそのものも、その先にいるお客さまのことも、解像度高く見られる人だから、表裏一体として周りの目を気にしすぎてしまうところがあるんだと思います。

ロジスティクスこそが、Beverichのビジネスの重要なピース

──では、進藤さんに出資を依頼した理由について改めてうかがいます。

木下:1つは先ほどお話したように非常に信頼できる方だというところ。自分の強みだけでなく、変えなくてはと思っていたところも率直に言っていただいたのがありがたかったですし、まだまだご一緒したいなと。一緒に仕事をした1年間はとても勉強になったし、関係性を続けていきたかったんですね。

進藤:いま思い返してみても、どうすれば良い価値をもたらせられるか、どうしたら大きなインパクトを生むことができるか…と、一緒に未来のことを考えてディスカッションするのは楽しかったですね。

木下:そうですね!あともう1つは、弊社の事業においてロジスティクスがものすごく重要なピースだったからです。事業を構成するOne of themではなく、むしろキーになると思っていたので、そこに強みを持ってる進藤さんに協力いただくのは心強いからです。

──出資の話を持ちかけられた時、進藤さんはどのように感じたのか?

進藤:出資をするのか、一緒に仕事にするのか、それは言ってみればHowの話だと思うので、「伴走する」ということについてはウェルカムでした。

先ほど、僕の経歴を少しお話しましたが、サプライチェーンのロジスティックスの世界に長くいて、最近では物流コストの削減が「第三の利潤源」と言われていますが、実際は旧態依然としたところが多い世界。それを四半世紀にもわたって見てきているので、「誰と一緒にやるか」ということが大事になってきました。ECの世界は、お客さまに商品が届いて初めてビジネスが完結するので、ここをコアとして考えられる経営者がいる企業が伸びてきています。

木下さんは、これからつくろうとしている事業においてロジスティクスがいかに重要かを語ってくれて、その上で出資してほしいという話をしてきたので、そこまで強く思っている人には力を貸したいと思いました。必ず成功できると信じていますし、成功できるように伴走したいと思っています。

──では、Beverichのビジネス自体はどういう印象を持ちましたか?

進藤:実は、僕はお酒が全く飲めないんです(笑)。そういう意味だと、すごくビジネス自体にものすごく共感はしました。やっぱり、お店でも家でも飲み物の選択肢が少ない。ただ、プレゼンを受けたときに可能性を感じたのと同時に、「バイアスがかからないようにしよう」と思いました。自分がそういう趣味趣向だから上手くいくと思い込みすぎないようにしよう、と。木下さんが、どういう調査をして、どういうデータに基づき、どういうオポチュニティがあるのか、しっかりと聞いたうえでチャンスがあると思いましたね。チャンスがある一方で、物流としてはめちゃくちゃ難しいとも感じました。

──その難しさというのはどこにあるのですか?

木下:やはり、小さくて軽いものほど運びやすいんですね。最近は飲みもののサブスクがいくつもあると思いますが、例えばコーヒー豆だったらレターパックで送れますし、日本酒とかも100mlのパウチに入れてレターパックで発送していたりしますが、Beverichで扱っている商品は特性上それはできない。どうしても缶とビンは発送ではネックになるんですね。ですが、ノンアルコール飲料はこれからより求められていくと思うし、難しいからこそ革新のチャンスがあると思っています。

進藤:ビンやカンのような重量物、かつ海外からの輸入ということを考えるとかなり難しい領域です。また、食品に対するセンシティブな問題があります。そもそも少量での輸入となるとコストがかかります。日本は物流ルートがあまり強い国ではないので、全ての要件を満たすパートナーを探すこと自体が大変なんですね。なので、物流領域においていきなりものすごく難しいところチャレンジからスタートしていますよね(笑)。

木下:小ロットの輸入を代行してくださる会社を探すのは、進藤さんのような専門性を持っている方がいないと困難だったと思います。まして、立ち上げたばかりの会社なので。また、国内に入った後は倉庫に保管してからお客さまに配送するのですが、やっぱりそこでも同じ問題があり、立ち上げたばかりの会社を小ロットから保管してくれる倉庫もそうそうありません。そこも進藤さんが紹介してくださいました。弊社の事業にとって、不可欠なピースを真っ先に埋めてくださったので、本当に進藤さんがいなかったらどうなっていたことか…(笑)。


非効率なプロセスを解決することで物流テックカンパニーの道が拓ける

──これからロジスティクスの部分でチャレンジしていこうとしていることはありますか?

木下:まずは最適化からですね。いまはなんとかend-to-endで繋げて、お客さまに届けられる状態を構築しましたが、コストにしても効率にしても改善できる部分はたくさんあります。1回やってみたことで、いろいろと理解が深まって、課題もクリアになりました。既に2回目の輸入がはじまっていて、そこではコストはかなり下げられました。

あと、仕組みや効率化という観点では、自社で物流テックのプロダクトを開発していくことも視野に入れています。ロジスティクスの現場にはまだいろいろと非効率があり、そこの課題を解決するようなプロダクトをつくれないかと考えています。ノンアルコール飲料を普及させることがBeverichのミッションですが、それを実現するための手段としてプロダクト開発もあり得るし、そのソリューションを他社にも提供していければ、物流テックカンパニーとしての可能性もあると思うんですね。

進藤さんは前に「EC企業こそ物流テックカンパニーであるべき」とおっしゃってましたよね?それを聞いたときに「なるほど」と思ったし、自分の中で突き詰めていくべき提供価値の意識が変わったんですよね。

進藤:そうですね。世界を見渡してみても、ECをリードしてる企業は物流テックが非常に強いです。それはアマゾン然りですし、私が過去に携わったイオンもUKのオカド(Ocado)という会社と提携していて急成長しています。世界の潮流は、明らかにECと物流テックが結びつき、いまはECが物流テックそのものだと言っていいぐらいです。そういう意味だと、木下さんが目指そうとしているところに可能性を感じます。

木下:弊社が大手と物量で並ぶのはほぼ無理だと思っていますが、自社の活動で顕在化する課題にこそチャンスが転がっていてて、非効率なプロセスを解決するプロダクトをつくれたら、他社も使ってくれるのではないかと考えています。なので、単純な物量でスケールさせるというよりは、ECの改善をし続けることによって、そこから事業のスケールにつながっていくことを目指していきたいですね。

──では、最後に進藤さんから、Beverichに期待することを!

進藤:バリューチェーンの中で、いままさにいろいろと苦労しているところだと思います。ロジスティクスは「ロジカル」という言葉からきているので、本来はロジカルにできているはずなのですが、でもなかなか日本だとそうなっていない(笑)。そこにあるPainはプロダクトで解決できることがあると思うし、それを一つのパッケージにしてソリューション提供していくことによって、物流テックカンパニーとしての道が拓けるのではないかと思います。

このアプローチはもちろん簡単ではありません。木下さんは、入口のECのところから出口の物流のところまで、一気通貫でビジネスを考えているので、すごく面白いチャレンジをしていますよね。

あとはノンアルコール飲料をどうやってECで販売して広めていくか。重量物食品における物流の課題を解決していく楽しさがあるし、物流テックカンパニーとしての視点から、その最適解を作っていけるオポチュニティがあると思うんですね。なかなかチャレンジしたくてもできない領域なので、その面白さを味わってもらいながら事業を成長させてほしいと思います!

撮影:高木亜麗 編集/執筆:瀬尾陽

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