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元マッキンゼー 大嶋 祥誉氏×中卒社長 株式会社アップル 文字 放想「引越し業界の働き方デザインとは?」

引越しを通じて社会に貢献できる「人づくり」に取り組み、 引越し業界の人手不足を緩和すること、ひいてはブルーカラーの働き方改革を進めます。株式会社アップルは、元マッキンゼー・アンド・カンパニーの大嶋 祥誉氏を2018年8月1日、 CHD(Chief Happiness Officer)に就任し、大嶋氏は著書「働き方デザイン」で、 働き方改革の一方で本当に大切なのは、 わたしたち自分自身の改革であると提言しています。 自分らしい働き方をデザインすること。大嶋氏のこういった考え方に強く共鳴、 かつ、 それを実現する方法論と人材育成のメソッドも持ち合わせている大嶋氏に文字が、 引越し業界の「働き方改革」「働き方デザイン」を作りについて伺いました。

中卒社長が元マッキンゼーのエリートにメールした理由

文字:わたしは中学の時から働きました。引越しの現場でのアルバイトから始め、21歳で会社を作りました。

生活の為、家族もいたし、稼ぐためには自分でやるしかない。時間を惜しまなければ家族を養えると思って、始めました。

24歳くらいの時に、今にすれば笑っちゃうけど、営業所が2つになって、

人のマネジメントの難しさなどを知りました。組織作りの人数の壁と言われる30人くらいのスタッフになり、それまでは空気で「いくぞ!」とやっていたのが、あれ?っとなって、仕事も楽しくなくなり…その頃には、収入面での目標も達成していたし、この楽しくなさは一体なんなんだろうと思って。それから、色々な経営者の会に行ったり、本を読んだりするようになりました。それまで、まったく本は読みませんでした。嫌いだったんです(笑)。

大嶋:信じられないですね、これだけ勉強されているのに。

文字:そう、大嶋さんの所を見つけたんです。大嶋さんの本は読ませていただいて、知っていたので…

大嶋:なるほど、検索結果にひっかかったんですね(笑)。

文字:稲盛さんの本とか、著名な経営者の本などを読んでいく中で、色々と気付く事もありました。さらにセミナーなどにも参加し、目的志向になっていったんです。会社の目的と目標も考えられるようになってきました。イコール個人の目的・目標ですね。目的も目標もぶれていませんが、最近年齢も30を過ぎてきて 、支店も増え、いろんな問題もある中で、自分の思考を整理することも考えるようになりました。あまり好きではない言葉ですが、「経営者って孤独」などという事でも、正直誰かにコーチングをやっていただきたかった。ただそれが、だれにやってもらうかで…検索をしたら…(笑)。

大嶋:そう仰ってましたね。

文字:あの大嶋さんに会ってみたいな!という興味本位もありつつ、最初は経歴しかわからないけど、キャッチボールしてもらえればという気持ち、また自分もコーチングを学びたいという思いもあって、ホームページから直接連絡しました!

大嶋:そうでしたね、ありがとうございます。

文字:ちょうど1年前くらい?

大嶋:去年(2017年)の5月からかな

文字:逆に、大嶋さん的には、いきなりホームページから問い合わせがきて、しかも引越会社からきて、読み方が難しい苗字だし(笑)どんな印象でした?

大嶋:丁寧なメールをいただきましたし、素晴らしいなと。社名で検索させていただいて、ホームページも拝見しましたよ。直感的に引越業界の中でも、かなり戦略的な取り組みをされている会社さんなのかな、と思いました「ザ・引越し!」ではなく、より社会の為に、新しい発想で会社を作って来られたんだろうなと、最初にイメージはありました。実際に会ってみると、思った通り、ワクワク感を感じました!

文字:今のお仕事は、エグゼクティブコーチとか研修とか?

大嶋:チームビルディングとか、研修とか、グループコーチングなどですね。研修と言っても単発で終わるというより、できるだけ変容をおこしていく研修を行っています。御存知のとおり、本を書いたり、瞑想も好きでやっていて、最近資格も取ったので、昨今ご要望が多いこともあって、教えたりしていますね。

文字:今さらですが、詳しく大嶋さんの経歴を聞いたことがなくて…

大嶋:そうでした!?

文字:マッキンゼーでバリバリ働いてたというのは、聞いていたんですけど。
そのあたりを教えていただきたいです。

大嶋:大学を卒業して、マッキンゼーに入社して…
やっぱりかなり強烈でしたよ。入ってすぐ「お前のバリューはなんだ!」とか(笑)。
入社1年目の企業研修で、夜、午前様まで会議室にいることもあったし。
同じ1年と言っても、当時の普通の会社の5年か10年くらいの経験を、1年で即、積まされたんではないでしょうか。
数か月~2年目には、自分のキャリアとかを考えさせられました。ちょうど、今の人たちが考えるような感じ。「自分はどうしていきたいんだろう…」ってことですね。
当時はいわゆる、ジェネラリストなわけです。その中で金融、人事などの分野で、
専門性を極めていくという人たちもいたし、実際にそんなバックグラウンドをもって転職する方々もいたので、私、全然そういうのないじゃない!と壁にぶち当たりました。
後から聞いてみると、みんな「自分は頭悪いんじゃないか」と悩んでいたみたいですね。
本当に、みんな優秀で私は落第生、ポンコツだよなぁ~と思っていました。
そういう中で、1年目くらいから自分の価値って何なんだろうって。
本当に真剣に考えましたし、このままジェネラリスト総合的な経営戦略でいくのか、
ちゃんと、専門性を深堀したほうが良いのかなと悩みながら…。

3年後、今はM&Aされてしまっていますが、人事系のウィリアム・エム・マーサーという会社に入社しました。
評価表や、賃金表などを作ったりしていましたが、人事を設計するだけでなく、コンサルティング戦略の観点からマネジメントをしていきましょうという会社でしたから、戦略的に人材マネジメントの深堀をしました。

そこから、グローバル・ベンチャー・キャピタルに入社し、新規投資ハンズオンでサポートをしていまして、そこから三和銀行の三和総合研究所にヘッドハンティングされて、「打倒外資」じゃないですが、外資に劣らぬ経営コンサルティングを展開していきたいとの事で、管理職まで在籍していました。
営業で仕事を取ってきたり、あとは若手の育成をしたりですね。人事と人材マネジメントの専門だったんです。

文字 :マッキンゼーはタフな環境なんですね

大嶋:年収がいいといっても、土日も出勤していましたし、とにかくかなりすごいところだったなという記憶がありますね。

文字 :シカゴ大学、デューク大学というのは、マッキンゼーに行ってた時?

大嶋:マッキンゼーの時ではなくて、三和総研にいたときに、働きながら行かせていただいていました。
デューク大学のFuqua Schoolof Businessは、グローバルマネージャーを養成しましょうという所です。次世代のリーダーとか、いずれ役員になって欲しい人たちを対象にしたプログラムなので、働きながら、オンラインでの授業を受けられます。スタートはノースカロライナからで、2週間ごとにヨーロッパ大陸で会う。それで解散して、次は南米で会うという、凄いカリュキュラム。
シカゴ大も同じような感じですが、先生が日本にいらしていました。

文字 :独立しようと思ったのは?

大嶋:もっと自由に、自分の価値観などを大事にしたいという気持ちがあったんです。あと、インドに行きたいとかもあった。
でもそれは、なかなか勤めていて難しかったし、コーチングを始めていたので、そのあたりを好きに、自由にやれたらいいなということで独立しました。

文字 :今の感じを見ていると、会社として大きくしていこうというよりかは、やりたい事をしていこう、という感じですか?

大嶋:そうですね。ガンガンに働いていた反動もあるかもしれないけれど、流れが来れば何でもするかもしれない、って感じですかね!

文字 :経験を活かして会社を大きく、でかくしよう と言うときは、是非宜しくお願いします!(笑)

大嶋:やるとしたら、私は人材コンサル人材開発をやってきて、かつHAPPYに、アメとムチより幸せを感じてもらう方が同じ組織会社でも結果として業績もよくなったり、昨今エビデンスもでてきているのを感じます。
ですから、もしやるとしたら、そういう型で組織を回せるようなところでやれたらいいなと思いますね。

「働く」を巡る価値観の変化

文字 :よく言われてる、「働く」ってどういう事?ってあるじゃないですか?!
例えば中学生の時は目の前の小遣欲しくてバイト行って…最初はそうだったんです。

大嶋:そりゃそうですよね!

文字 :最初は、遊びたいからお金ほしい。お金ほしいから働くだったんです。
それが、働きだしたら、働きたいから働く、になった。
凄く、働くのが楽しくて!お金が欲しいとかじゃなくて。
お金は遊ばなくなるから、いらない。
実家だし、なんだったら10時間働いて日給6,000円とか。
給料も見ずに、タウンページで引越屋調べて電話していました。

大嶋:さすが!

文字 :最初は純粋に新しいことが楽しいという動機です。
競争があって、誰かより重い荷物持てるようになりたい!とか、新しいことをやるのが楽しいから。
あと、プライドもあったと思うんです。19歳、20歳の頃はまわりの人たちが遊んでる間に
死ぬほど仕事して稼いで、すごいな!と言われたい…とか。
「やって」とか言われたときの責任感もあるから、自分のことよりも、与えられた役割とか、一緒に頑張ってくれてるみんなのために!とかがあって、でも、会社をやめたら収入もなくなって。

最初は、理念も目的もないので、お金稼ぐ目的でやっているだけでした。やればやっただけ、最初は数字もいくので、増やすのが楽しい。
それが、人の問題にぶつかって…いや~働くってなんだろうって(笑)
働くっていう価値観は変遷するじゃないですか。

大嶋:しますね~

文字 :大嶋さん的には、マッキンゼーに入ってから今までの中で「働く」という価値観は、どういう形で、変遷してきたんですか?

大嶋:しますね~

文字 :大嶋さん的には、マッキンゼーに入ってから今までの中で「働く」という価値観は、どういう形で、変遷してきたんですか?

大嶋 :「楽しい」かな。それは変わっていない気がします。
マッキンゼーにいた時も、何だかすごい人達がいたし、圧倒もされたし、苦しかったけど、楽しかったし、そういう意味では自分で好きで朝までいたし。ダメだよって言われたらそっちの方が苦しい。働きたいのに働けない!となってしまうから。

ブラック企業って言うじゃないですか、あれは何がブラックかって、多分、客観的に決めることじゃなくて、選択できる自由を与えることじゃないのかなと。
極端な事言えば、働きたければ、やればいいし、働きたくない人に無理して残業っていうのも、おかしい事だと思うし。

そういう意味では、働くって価値は、私にとっては楽しいかどうか!何に対して楽しいかどうかですね。
ただ、何に楽しく感じるのか、その「何が」の部分が変わってきたと思います。

マッキンゼーでは、枠の中での価値にこだわっていたし、よりよい成果を出していこうとしていました。
だんだん転職したり、人事、人まわりに関わるようになって、会社の価値基準も大事だけど、自分はどうしたいんだろう、そこの楽しさに気付きました。
仮に会社に属したとしても、自分の楽しさと紐づけて考える。上司が言うから、会社が求めているからではなく、自分がどうしたいかということが、主体的になってきました。
自分軸で決める様になってきたかなと思います。
結果、その方がより楽しいしね。
研修でも言うことがありますが、この仕事をしていて、同じ会社に貢献するとしても、社長が言うから、上司が言うからではではなく、そうかもしれないけれど、自分主体感で紐づけた方が、より成長や進化があるし、やりきった!良かった!となりますよね。

自分の人生がより豊かになるような環境作りが“人づくり”になる

文字 :最近クレドブック(※1)に入れたんですけど、仕事について、
「仕事は自分の人生を豊かにするツール」
と言っています。

引越しの仕事はすごいいい仕事なんです!
最初はとにかく早く運ぶとか、いっぱい運ぶとか…みんなもそうなんですよ。
でも、どっちかって言うと僕は、自分がよければいいと思えなくなってきて。
目の前のお客様が困っていたら「いいですよ」と言ってあげたりしてた。
結局、一生懸命お金を稼ごうと働いた結果、毎日2件3件のお客様があって、一生懸命やって最後に「ありがとう」と言われる。
それをどんどん繰り返していたら、毎日違う人から言われるわけですよ。

時には、「文字くんに来てほしい!」と再利用があったり、必要とされている存在感みたいなものを感じられて。
言い方が悪いですけど、管理部門とかの裏方をやってると自分の存在感がわからなくなる時があるじゃないですか。
目の前に毎日違うお客様がいて、毎日「ありがとう」言われて、「俺でも人の役にたってるんだ」という存在価値が勝手に作られていくんですよね。そうすると嬉しいからまた違うお客様の時も、やってあげちゃう。
それで、更に「ありがとう」のループを繰り返す仕事なんですよね。
これを繰り返すと自分も積極的に「ありがとう」と感謝できる。ひたすらループすることによって自分の心が豊かになる。

大嶋 :そうですよね。

文字 :毎日「ありがとう」と言われていて、こっちも毎日感謝していて
ちょっとのことでも「しょうがないか」と思えて。本当にいい仕事。毎日違う現場で、毎日違う人。たまに同じ人がいたら嬉しくて。
相手の為に何かすると、凄く喜んでくれて。

本当に喜ばせるためにはスキルをあげないといけない。
引越しという仕事は、自分の心を豊かにしてくれる仕事としては最高じゃないかと。
繰り返していて「幸せ」だなと感じる。やりがいを感じます。

あとは、足りないのは、報酬とか体力とか…最近はネガティブなニュースが多い引越業ですけど、業界を変えたいなと思います。
引越は最高の仕事だよと伝えたいです。

大嶋 :引越って人間の人生においての、極めて重要な人生の節目において追随する大事な出来事なんですよね。
結婚しました、引越しします。
就職しました、引越しします。
人生に、また家族に影響を与える、節目の出来事なんですよね。とても大事だし、いい型で私たちが体験できるのは大事なんじゃないかなと思います。

文字 :今まで僕も現場で働いていた時は誰も教えてくれないし、誰も気にしない。
減点方式なんですよね。

大嶋 :そうなんですね。

文字 :普通にやってても、クレームないのが普通。喜ばせるプラスとかではないんです。クレームがあると、昨今問題にもなりましたけど、物を壊したらそのままクビにされるとか、クレームを出したらめっちゃ怒られる。怒鳴られることもあります。

大嶋 :それは加点主義がいい。人も頑張れるし、ワクワクはお客様に伝わるから、よかったなと思えるでしょう。
引越って、自分も記憶がありますけど、愛知県出身で大学は東京だから、自分で一人で行くわけですよ。楽しいことなんだけど、不安もあるわけです。
そういう時に、引越しスタッフの方が笑顔で対応してくれるっていうだけで、励まされるっていうね。
きっと結婚して行くっていう女性にしても、安心感を持たれるし、引越の人のちょっとした一言とか、楽しく大事にやってくれたっていうのが、ものすごく心に安心感を与えるし。
やっぱり、加点でいきたいってのがありますよね。

文字 :減点方式がいやで、加点方式にしたんです。
一生に1回の引越しかもしれないので、万が一の事があったら、やっぱり、それはそれでお客様に対して失礼ですので、全力で気をつけてはいるんですけど。

でも、やっぱり加点方式にしたい、という事で3~4年くらい前から試行錯誤してきて、プラス面を褒めるというか。表彰などですね。
今までお客様の事を考えてたの?ってスタッフが「あれ!?」と思えるくらい、気持ちが言葉に出てくるんですよね。
数字も出るので、気にするし、ひたすら繰り返したり。
今まで、スキル研修などは一切やった事はありません。

大嶋 :おっしゃる通りです!

文字 :目的志向で学ぶ。そうなると意識がいくから、自分に向き合う。こういう環境があるのが、いい会社だなと思います。

僕ら、ブルーカラー代表職っていうと変ですけど、そういう職業は、
最初「おはようございます!」って行った途端に「はい!現場行ってきて」となるから、学ぶ機会がないんです。
本来一番大事なことを教えもせずに、現場に行かせちゃうから、「働く=お金」それしかない、となる。
働く事によって、感謝とか成長とか、仲間とかがあって、自分の人生に役に立つことを学べると多少理解していくんです。
僕は「ダメなやつを普通以上にする」ことが大事だと思っています。世間一般的にはなかなか生産性が低そうな、
ブルーカラーで教えてもらっていない人達に、一人でも多く気づかせてあげられる環境をつくってあげたい。
雇ってあげられる環境を作って、もしかしたら僕と出会わなかったらそれなりの普通の人生を送る、
普通の人だったかもしれないけれど、僕と出会ったことによって、
自分の人生がより豊かになるように、環境を与えてあげて、人づくりをしたいなと思っています。

大嶋 :共感共鳴しますね。人って環境で作られていくので。
実際、科学的にも、遺伝の個性もあるけれども、環境による影響は60~70%、下手をしたら80%くらいもあります。どんな環境を与えられたか、っていうのが極めて大きくて、若者がひいては日本を背負っていくわけですから、そこには物凄く共感できますね。

文字 :人口減少で働く人が減っていると言われますが、営業の論理でいうと、集客を増やすのか、受注率を増やすのか!?ということですよね。まだまだ受注率は上げられるだろうと思う。

大嶋 :そう思います!

文字 :今まで仕事できなかった人達を、ドンドン戦略化していって、めちゃめちゃ受注率高し!みたいにレベルアップさせていければと思います。
どんなにレベルが低い人でも最終的には、このくらいの人が、このくらいになりますよ、と。

大嶋 :そういう意味では、教育をデザインしてるとも言えますね。
今、「働き方=生き方」そのもの。
教育をデザインしている。文字さんは引越のビジネスの枠を超えて、引越しのビジネスを通して、人のデザインをしている…そんな感じですよね。

文字 :おこがましいですけれどもね。少なからず現実問題、うちの会社でそうなっている事実があるわけです。そんな人を一人でも多く出せればと。

大嶋 :僕たちも頑張れば!と励みになりますよね。

引越屋さんは「情報収集能力、決断力、目標設定力が身につく」

文字 :引越し屋の定性的な面ばかり言っていますが、意外と定量的に考えても、こんなスキルを学べるんじゃないかっていうことも、あるんですよ!

大嶋 :ありますよね~。段取力など、半端なくつくんじゃないんですか?

文字 :そうなんですよ!中3の時から小さい引越しではリーダーをさせていただいていたので。
新卒でいきなりお客様のところ行くこともありますけど、引越しはちょっとできるようになると、主体性を持ってできるようになります。リーダーになったら、この人をどう動かすのかなど考えるわけですよ。
時には、ずっと年下だから、年上の人をどう動かすかなども考えるようになります。
即断即決。準備と段取り。即断即決、即実行できる人が早い!
例でいうと、道選びとか。この状況で、この道を行くのか?でかい道路で渋滞してでもまっすぐ行くのか、脇道に入って平均速度で進むかなど…常に判断が必要になります。

大嶋さんの本(※)にも書いていますけれど、情報収集能力、決断力、目標設定力が身につくと思います。

大嶋 :たしかに!!!

文字 :常に判断が迫られる。決断力が身につく。
情報の収集力がつく。
「このお客さんは結婚したばかりだから」とか、「奥さんは妊婦さんだから」など、営業から情報が来ます。
明日何時に事務所に帰ってこよう、から考えて、本当に計画した時間で終わるのか?
といったようなことが、なんとなく、荷物量などから、想定できるようになります。
お客様のだいたいのバックグラウンドを見ながら…間取りと広さなども考え合わせて真剣に取り組むと、
毎日PDCAを回すことになるんですよね。

今日の目標は「●●時に帰る」計画では1件目は何時に着いて、2件目の移動は何時に行って…と、
毎日考えてやるようになります。本当に正しい情報なのか、確認もして。
あとは、実行力!チームメイトですよね。
引越し現場に行く車の中でまったく話さない人とかいるんですよ。
一緒に行っても何も喋ってくれない人もいましたが。
伸び伸び主体性をもって、動いてもらう為に、目的を共有したい、チームマネジメントですよね。
実際、現場に行くと、梱包できないとか。いきなり行ってみたら、道路工事してたとか、
荷物量が1.5倍あったとか、雷雨とか。予想外のことに対して本当に即断即決即実行、凄く磨かれると思います。

大嶋 :本当ですね!総合力がつきますね。

文字 :1日3件やるとしたら、20日間で60回もPDCAを回せるわけですよ。引越屋で仕事できるやつはなんでもできます。

大嶋 :最近、企業が別の企業へ研修に行かせることが多いですが、そういうプログラムがあってもいんじゃないんですか?受け入れるといいんじゃない?

文字 :やりがいと、スキル。あとは、人対人の仕事で、実際、こんなスキルが学べて…って、ありだと思います。
高校生や、大学生のアルバイトには最適ですね。
昔よりは僕らも優しくなりましたし、大成している人は、だいたい10代のころからやってる人が多いんです。
現場で1年も経験すると、リーダーやってこい!となります。これをひたすら繰り返していくと、
「筋肉つきました」とかどうでもよくて、考える力がついてくる。

大嶋 :チームマネジメント力もつくし、凄いですよ。

文字 :接客もやらなければいけないし、作業もしなければいけないし、チームとしても動かないといけないし。

大嶋 :それは凄い。最強のトレーニングですよね。

文字 :いちいち、細かく言われることもありません。時間などは管理しますけどね。
本(※)に書かれていますけど、どういう風に仕事をするのかという段取り組みとかは、引越しで学んでも良いと思う。

大嶋 :生産性UPという力も付きますしね。効率よく物事を進めていくとか。
突発的なことが起きる中で、どう帳尻合わせていくのかとか。凄い力が付きますよね。

文字 :どうお客様に納得していただくかということもありますし。

大嶋 :コミュニケーション能力もつくし。これからますます楽しみですね。

文字 :引越しはいい仕事なんですよ!

大嶋 :いい仕事ですよ!

好きを仕事にする?仕事を好きになる?

文字 :好きな事を仕事にとか言うけれど、なかなか若い時って何が好きとか、なにがやりたいとか難しいじゃないですか。
だからやっぱりお金稼ぎたいとか、旅行に行きたいとかに走っちゃうけど、
僕にとって、好きなことを仕事にするっていうよりも、ある程度経験を重ねていって、
どれだけ仕事を好きになる努力をできるかが重要かなと思います。

大嶋 :すっごい大事です。若いころは特に。
この本(※)にも書いてますけど、黒川伊保子さんと言う人工知能系の研究をされている方が仰るには、
本当の脳のピークは56歳くらいです。
40代50代ぐらいになって初めて、物事を考えられるようになっていく。
それが本当に発揮される為には、それこそ20代が肝心です。本当に反復練習、
徹底的にやるとか、何も考えないでキチっとやるとか、そういう基礎力がないと、
40代50代で頭打ちになっちゃう、というデータもあるみたいなんですよ。
なので、仰った様に、我慢するとか、好きになるようにやってみる!とか、
徹底的に愚直に同じことを繰り返すとかいうことができないと、やっぱり難しい。
脳の線が太くならないみたいですよ。キッチリやっていくと太くなっていく。

文字 :何かしらあるじゃないですか。
何かしら、飲み込むこともあるし、我慢もあるし。
そこに、何で耐えられないかとなると、やっぱり、目的とか、
目標が定まってないか、そんなに考えた上での目的目標じゃないとか、そんな感じだと思うんですけど…。
仕事を、自分の人生を豊かに生きるためのツールだと捉えると、言葉でわかりやすく言うと、
「凄い自分の人生楽しかった。」と死ぬときに言わなくても、50とか60の時に言えるように、
今、その仕事を一生懸命やることです。
ここまで自分やると決めれば、頑張れるだろうと思いますが、
なかなかそこまで行きつかない人も多いし、だからと言ってやりたい事がないと…という人もいます。
好きな事を仕事にすると言うよりも、どのようにしたら、
「仕事を好き!」とか、「この仕事をしてる自分が好き!」とか
「この会社が好き!」「この瞬間がこの仕事で好き!」ということが作れるかなぁと考えています。

大嶋 :好きになる体質って言ったら変なんですが、マッキンゼーに居た時の先輩に言われたのが、
「好きな事をやったとしても、やっぱり嫌な事も起きる。それをやり抜く為には、好きじゃない事も好きになる。それも凄く大事なんだぞ」
ということです。
入社1年目の時にこれを言われて、ハッっとした事があったんですよね。
何かを常に楽しめる体質って言うんですかね。
案外、好きを見つけようとする事が大事だと思います。

文字 :適性がある、って事もありますよね。

大嶋 :そうなんですよ。「わ~~~!」って表面的な好きではなくて、味わい深いと言うか、それじゃないところでも頑張ってみようと、そういうのも含めての好きなのかな、と。

文字 :僕良く言いますけど、女性が子どもの頃、夢は「お花屋さん」って良く言うじゃないですか。お花屋さんのお店をやるのって。
なるほど、ではお店開いたとしよう、何やるか知ってますか!?と言ったら、「お金の管理と人の管理」みたいな(笑)。

大嶋 :冬は寒いし、水冷たいし、手はかじかむしね。

文字 :お花屋さんをやったとしても、人の管理、お金の管理もやらなきゃいけない。
純粋に、来た人にお花を売っていたいって、勿論それが好きだったら、お花屋さんのスタッフとして働くというのも、それはそれで幸せなんでしょうけど、その代わり言い方が悪いけれど、トレードオフがあるわけじゃないですか。自分のやりたい様にできないとか…

大嶋 :気づいたら、バックヤードで経理やってました!とかありますからね。

文字 :そうすると、何をやりたいかというのは、危険とまでは言わないけど、微妙かなと…。
ひっくるめて、例えば「お花屋さんやりたい!」と言ったら、本質として、お花ってパワーがあるじゃないですか?!

大嶋 :あります、あります。

文字 :お花1つで、喜んでもらえる可能性もあるし、気持ちを表す事でもあるし、感動を生むかもしれないし、そういう意味では、そういう姿を見たいからお花屋さんをする。
自分がその中でやることが、全部でお花屋さんなんだと思えるなら、マネジメントも苦じゃないし、お金の管理も苦じゃない。
でも、お花と触れ合っていたいんだ!私がお花が好きだがらお花を売りたいんだ!だと難しいですよね。

大嶋 :文字づらだけ取り上げて、好き=働く、じゃないんですよね。

文字 :僕も会社を経営していて思うのは、
どんな時に自分が嬉しいのか、どんな時に達成感を持てたのかという場面を探すと、
今までできなかった事ができた時とか、人に感謝される時、成長したと思う時などです。
定性的ですけれど、どういう時に嬉しいのか、凄いパワーがみなぎるのかということを探して、
それを前提に、自分はこんな事やりたい!とか、こんな事ができるんじゃないかというふうに探してもらうと、
意外とやれることが多いんじゃないかなと。
そういう意味で好きな事を仕事にするっていう、
そういう考え方を根底に考えてもらえると、HAPPYになれる。

大嶋 :そうですよね、そう思いますよね。
極端な事を言っちゃうと、今居る居場所でスキルを見つけられない人は、どこに行ったって、いつも嫌だな、ってなっちゃってる。

文字 :仰る通り、今が嫌だと言う時は、
環境が変わったから良いとは限らない。そういう人は最初だけなんだろうなと思います。

大嶋 :また同じ事を繰り返すんですよね。また、いやだな~って。

文字 :本質的な意味で、好きな事を仕事にするっていうのは、どれだけ好きになれるか。
好きになろうとする。好きになろうと考える。
そういうのが大事ですよね。

大嶋 :いかに楽しみながらやるのか。好きになると決める力が大事です。
自分の中の、好きになる力を育てていく。
そうやると人間、大概の事は好きになれるはずですよ!


好きを仕事にする?仕事を好きになる?


文字 :引越の仕事がいい仕事だと思うところと、
実は色んなスキルも得られますっていうところなども含めて、
今後引越し会社として、どうデザインできるかなんですけど…。

1つは肉体的な部分。これに関しては正直50代60代の人も居ましたが、結論からいくと、暴飲暴食なんです。若い時は本当に、食っても飲んでも引越で毎日汗流していくと太らない!だから、みんな不規則な生活がしみついちゃってる。

でも、30歳くらいになってくると、体重が減らなくなってきて、身体にボロが出てきて…。それって引越屋さんのせいではなくて、そういう環境なんです。
周りの環境もそうですけど、不規則だったりとか。
でも、引越という仕事は、プロフェッショナルだったら身体のケアなども重要な事で。

大嶋 :大事ですよね。

文字 :そういうのをちゃんとやっていけば、僕なりに、50歳でもいけると思っていて、最近、ジムトレーナー制度を導入しました。
意外な発見もありました。引越屋さんなのに、正しい重い荷物の持ち方ができていないんですよ。
本当は、重い荷物を持つときは「こういう風に持つと良い」ということなどを、教えてもらえます。
意外と運転もネックで、クラッチを踏むから左のお尻の筋肉が硬くなるということもあるようです。
そういう事も、科学的医療的にもエビデンスを取りながら、フォローしていって、ケアしていって…そうすると過労というところで懸念が切れます。

あとは、報酬も僕が思うにブルーカラーと言うか、実務をする人達の価値が見直される時代になるはずですね。
そういう人がいないと経済は縮小しますし、外国人も沢山入ってくると思いますけれど、質も当然見られる訳です。
ですから給与も多少上げないといけないと思いますし、僕らもそういった希望があるので、
結婚して、子どもが2人いても不自由なく生活できるような水準までは上げて、
最低でも500~600万円くらい稼げるようにしたいなと。
そうなるとやりがいもあって、希望もあって、身体も健康。ちゃんとお金もあって、
安心、安全、純粋に、他の人の為に頑張ってあげられる姿を作れる。
株式会社アップルとしては、人をデザインしていきたいと思っているんです。

大嶋 :すごくいいと思います!

文字 :大嶋さん的には、こんな会社や働き方が理想なんじゃないか!? みたいなものはありますか?

大嶋 :会社+個人も独自に成長していく、結果収益に結びつくっていう会社が良いですよね。

最近いいなと思うのは、従業員の為のコンシェルジュです。
ホテルにコンシェルジュっていますよね。「お店を探している」とか、結婚だったら「結婚アドバイザー」に相談すれば相談に乗ってもらえるとか。
だから、社内でそこに相談すると、相談にのってもらえる制度があるといいなと思うんです。幸福度、進化成長。そういう事を総合的に、心身ともに。
そんな会社があると凄くいいなと思います。
そこに居続けても良し。そこを卒業して、そこにいた事が1つの実績にもなるのでもいい。かつ、単に定量的な部分で頑張ってきたわけではなく、「あそこに居たら成長するよね」と、健康維持までできるような人たちが輩出されてるよね、と言われるのが良いですね。

文字 :マッキンゼーはそういった意味では、当てはまりますね。

大嶋 :人間的なバランスとか、色んな意味で「いい仕上がりだよね」って。
能力もスキルもそうだし、かつ心身のメンタル面、ウェルネスの部分でも極めていい感じで、「あそこの社員さんって自己管理も長けてるよね~」と言われるような。

文字 :今、「複業だ」とかありますけど、僕らは…シンプルに分けられるわけではないですけれど、
ホワイトカラーとブルーカラーと言うときに、僕らみたいな業種の人って、複数の会社で働きたいとか無いんですよ。特殊スキルも無いですし。
そういう意味では、1つの会社で長く働きたいと思っている。
だから僕は、ずっと働ける会社をつくる。そこに入って、ちゃんとやることをやっていれば、しっかり求められている事が明確で、しっかりやっていけば必ず安心が保証されている。ずっと働けて安心だよって。みんなが安心していて、恩恵をお客様へ還元する。そういうことを、ブルーカラーは求められていると思うんです。

大嶋 :長く続いて、いい会社って、実はそういう会社ですからね。
長く勤める、安心していられる、という会社。
人生100年時代…トレンドに浮かれてるところあるかなというのも、正直あります。

文字 :僕らも大きくなってくると、当然そうは言いつつも、
人をどのくらいまで増やしていけるのかというのはあります。
ある意味、大嶋さんに言われた「ここの会社で経験した」とプライオリティになるようなのも全然良いと思いますね。

大嶋 :勿論、長くいても良し、仮に出たとしても一つの登竜門。
あそこに居たというのが担保になる。信頼信用実績になる。長い目で見てハピネスにつながる。

文字 :高校生とか大学生がアップルでバイトしていると就職しやすい!みたいな…

大嶋 :インターンとかね

文字 :戻りもいますよ。高校生の時にバイトしていて、大学を卒業して、
有名企業へ就職し、営業マンとして活躍して。優秀なんですけど、1年後戻ってきました。

大嶋 :素晴らしいと思います。

文字 :就職する前に誘ったんですよ。でも、就職して。その後、何も言わなかったけど、
戻ってきた。本当に売りたいものじゃなかったのでしょう。それに引越屋だと身体も動かせるし(笑)。

大嶋 :徳の積めるビジネスとそうじゃないビジネスもあると思っています。

文字 :最後に、そんな大嶋さんにお手伝いいただくわけですが。
僕が想い描いてる事と、ある意味違う方面から大嶋さんが学んで来られて今やられてる事とは、最後は近いと思うので、
「引越屋さんだぞ!」
「引越屋さんでこんな事できんだそ!」
と勇気というか、きっかけをを与えられるかもしれませんし、ぜひぜひ、お手伝いいただきたいです!

大嶋 :喜んで!

文字 :5年後、10年後に、うちの会社がどうなっていたら最高だな!ということはありますか?

大嶋 :「アップルって凄くいいよね!」「楽しそうだよね!「ワクワクするよね!」
「入ってみたいな」「働きたいな」「バイトしたいな」と言われるようになったら、凄くいいなと思いますよね。
文字さんが発する言葉で、アップルの社員だけでなく、周りの人たちも輝いていけたらいいな。今もそうですけれど、さらに、老若男女みんなを元気づけるようになれると、すごく嬉しいと思います。

文字 :何をやっていても大変だし、我慢しなきゃいけないし、ということはいっぱいあるけれど、
キックオフ(※2)など、あの場があるから感慨深いものもあるし、あの様な場があるから頑張ろうと思える。
やりたいようにやったって、結局プラスもマイナスもあるので…。
「やりたいように」というと、言葉を間違うとひっちゃかめっちゃかになりますけど、例えば自分が成し遂げたい事とか、自分が正しいと思って実直に、信じてやっていくことが重要かなと思います。
引き続き、やっていきたいと思います。

大嶋 :あと、いずれ私塾というか、例えば稲盛さんの「盛和塾」あるじゃないですか。
やっぱり教育って大事にされているし、いずれは塾というか、アップルさんの枠を超えてされていってもいいじゃなんですか?

文字 :そうですね。野望ですけど、最終的には。
教えられることが僕からでもあるのであれば、一人でも多く教えたい。
「あの時あの様に言ってもらえたから頑張れました」とか言われたら普通に嬉しいじゃないですか!

大嶋 :まさに、御自身の体験を語ればいいと思う!それで、すごく励みになって、
学べると思います。今の若者は不安を抱えているから。

文字 :そうですね!

※1:アップルの信条や行動指針をまとめた冊子
※2:大嶋さんの著書「マッキンゼーで当たり前にやっている働き方デザイン」日本能率協会マネジメントセンター
※3:全スタッフとその家族を一堂に介した社内イベント

2018年8月1日、 CHO(Chief Happiness Officer)に就任に関しては下記をご覧ください。
大嶋 祥誉氏

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