得意分野を発揮できる環境をつくることが自分の最大化に繋がる
「PARTNERS」では、A.C.O.のパートナーを紹介しています。今回登場するのは、UX/IA部のマネージャー、川北 奈津。川北は、2008年にプランナーとして入社、アプリやサービスの情報設計を多く担当。UXデザインと情報設計を強化するため専門チーム、UX/IA部を2017年1月に立ち上げました。主に、企画、UXデザイン、情報設計の業務を中心に、現在はUX/IA部のチームマネジメント、サービス開発にも取り組んでいます。
UX/IA部の記事はこちら >> 上流工程でのUXデザインを最短で提供するUX&IA部門が始動
川北奈津 | Natsu Kawakita
静岡大学情報学部卒業。情報科学芸術大学院大学(IAMAS) メディア表現研究科修士課程修了。作品制作・展示活動、広告制作会社勤務を経て、現在に至る。UXデザイン、情報設計担当。UX/IA部マネージャー。
新しいことをどんどん経験していくスタイル
– 大学時代はどんなことを勉強していたのでしょうか?
静岡大学で情報科学を専攻していました。情報科学に興味を持ったきっかけは、ピクサーの映画「トイ・ストーリー」でした。「トイ・ストーリー」を観た私は、「こんな映像表現が可能なんだ!」と、大いに感銘を受けたんです。2Dが中心だったアニメーションが、3DCGへと変わっていくタイミング。次第に、3DCGアニメーションの技術進化に興味を持つようになっていきました。
これからどんどん変化していく情報技術を学びたい。そう考えて、情報科学を専攻した動機でした。大学では、画像処理の研究をしていました。大学3年生くらいから、もっと有機的というか、直感的な「表現」をしてみたいという気持ちが強くなったんです。単に技術を深く知るだけではなく、それを使ってどうするか、ということに関心があったのかもしれません。
– 新しく気になるテーマを見つけて、次はどんな道へ?
表現とテクノロジーを組み合わせた可能性を探るべく、大学を卒業した後は情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に入りました。IAMASの中で、様々な表現とテクノロジーの組み合わせを試す中で、新たな興味が芽生えていきました。
インタラクティブ作品 つながるアニメーション「KARAKURI BLOCK」(2004)
作品と人。制作側が場から得られる刺激。展示空間で起こる様々なインタラクティブ性に興味が出てきたんです。ただ、IAMASに在籍している間だけでは、興味を掘り下げるには時間が足りず、卒業してからも3年間ほどアルバイトをしたり、助成金を受けながら、作品の制作や展示を続けていました。
自分の得意な企画、設計領域を軸に仕事を広げていく
–作品作りに注力した後は、どうしたんですか?
27歳の時に就職をしようと決めて、広告制作会社に入社しました。社会に出るのが遅かったので、その分も色々とキャッチアップしようと積極的に学んでいきました。広告制作会社の中で、ある化粧品ブランド開発するプロジェクトに参加したんです。そのプロジェクトで、マーケッターやPRの方達と仕事をしていく中で、マーケティング、ブランディングの知識を身につけていきました。
この時に、グループインタビュー調査を経験したことは今でも役立っています。仕事を通じて学んでいく姿勢は、このときから大事にしていることのひとつですね。広告制作会社後、Webの仕事につきたいと思い、A.C.O.に転職しました。
– A.C.O.では、どういったことを経験してきたんですか?
職種はプランナーで入ったのですが、実際はプランニングが強いディレクターというポジションが近かったかもしれないですね。Webサイト制作の企画から設計、プロジェクトマネジメントまで、一通り担当しました。入社当時は、ディレクターが情報設計を担当していたのですが、ページボリュームが数百〜数千を超える大規模サイトになるとディレクターが担当する範囲も広くて、情報設計まで担当していると、業務が追いつかず、アウトプットの質も落ちてしまう。これをなんとか解決できないかと考えるようになりました。
私が得意なことは「情報をどのようにユーザーに伝えるのか」を考えること。であれば、インフォーメーションアーキテクトになるのはどうか、と考えるようになり、自然と担当する業務も情報設計へとシフトしていきました。ちょうど、A.C.O.が受ける案件の規模も大きくなっていた時期で、必要に迫られていたことも影響しているかもしれません。その時からA.C.O.では情報設計のポジションができました。今では、ディレクターがすべてを担当するのではなく、分業していく文化が根付いています。
– 最近はA.C.O.でどんな仕事を担当しているんですか?
最近の私のA.C.O.での役割は、UX/IA部のマネージャーで、UXデザイン、情報設計などを担当しています。アプリやサービス開発のプロジェクトに、企画から関わることが多いですね。まずは、クライアントから来ている話をヒアリングしながら、何が課題なのかを見つけることから始めます。次に、企画を具体化し、ユーザーフローを設計、ワイヤーフレームを作る。このあたりまでが主な担当範囲になっています。
ユーザーの声を把握し、より良いユーザー体験のためのプロセスを設計する
– 現在、担当されている「UXデザイン」に必要なことは何でしょうか?
UXデザインには「ユーザー体験を作り出すために、どのようなプロセスを設計するか」が重要だと考えています。当然ながら、求められるユーザー体験はプロジェクトや案件によって異なるため、まずは状況の整理が必要です。
特に、A.C.O.の仕事は、クライアントから受注する案件が仕事のベースです。コーポレートサイト、サービスサイト、アプリなど制作するものはさまざま。さらに、クライアントの業種も違い、クライアントが抱える課題や目指していることも異なります。
一般的なUXデザインのプロセスは「調査・分析〜仮説〜検証」で、色々な手法を組み合わせて進めていきます。手法をどのように組み合わせるかで、アウトプットも、スピードも大きく変わってきます。
– 前職でも少し経験されていたユーザー調査は、現在も活用されていますか?
今も活用しています。ユーザー調査は、2つの目的を持って実施しています。1つは、ユーザーを理解するため。もう1つは、ユーザーも気づいてない潜在的な悩みやニーズは何かを発見するためです。
ユーザー調査では、エスノグラフィ、デプスインタビュー、グループインタビューといった手法を取り入れて、インタビューの設計から当日のインタビュー実施まで行なっています。その調査をもとに、ペルソナ、カスタマージャーニーマップなどで可視化することは、チーム全体が理解するスピードを早めることにも役立っています。
–ユーザー調査だけでも、考えることが山ほどありますね。
そうですね。案件も多様で、手法の組み合わせ方も多様。そんな環境において、ユーザー体験を作り出すためには、全体を俯瞰してプロセスを設計する人が必要なんです。あとは、うまく物事が進まなかった時も諦めず、別の視点から見て、方法を替えるなど柔軟さも重要ですね。
社内でも、社外でも。リアルな反応を感じる感覚を忘れずに
– 他にはどんなことをされているんですか?
業務の他には、インナーコミュニケーションにも関わっていたりします。社内でのワークショップやイベントの企画・進行をしたり、とメンバーのノウハウシェアやスキルアップのための仕組みづくりに取り組んでいます。
社内は厳しい目でチェックしてくれる場所。ワークショップや勉強会もこのメンバーが面白かった、やってよかったと言ってくれることが指標になっている。悪かったところもきちんと言ってくれる、一番いい練習の場所です。
社内に限らず、社外でも勉強会をしたりしていて、活動の幅は広いかもしれないですね。
–社外の活動で、仕事に活かされていることはありますか?
家庭料理家の永易久美子さんと一緒に、esaraというケータリングユニットをやっています。esaraでは、ギャラリーのイベントなどで、作品のコンセプトにあわせた料理と演出を提供しています。
esaraをやっていると「反応をリアルに知る」ことができます。ケータリングをしていると、お客さんがどんなときに喜んで、どこでストレスを感じるのかがリアルにわかるんです。料理や見せ方だけでなく、どのような空間で、どんな人たちが来るのか、どのような形式がいいのか、食べるツール、導線や出すタイミングなど色々と想像を巡らせます。
お客さんのリアルな反応を感じる感覚を忘れないということが大事なのかもしれないですね。仕事でも、ユーザー調査を行っていて、ユーザーの反応がどれだけ解像度高く把握できるかがとても重要です。普段は意識していませんが、社外でやってることも仕事に活かされているんだと思いますね。
社会に出てからこそ、学び、研究できる場を求めている
– 今、どんなことに興味がありますか?
やはり新しい技術を使ったUXデザインは気になります。IoTやAIのサービスで、ユーザーにどのような体験を届けるのかプロセスから設計をしてみたいです。 もう一つは、今というより、ずっとかもしれませんが、「学ぶ」ということに興味があります。ただ、最近の関心は、自分が学ぶことではなく、会社でどのように学ぶ場を作ることができるかに関心があります。会社で勉強会を開いているのは、そのためです。
教育って、大学を出たらおしまいだと思ってしまいがちです。実際は、大学を出ても教育は終わらなくて、実際の仕事をすることで自分に必要なスキルや知識がわかってくるんですよね。社会人になると、それを自分で把握して、学んでいくスタンスはとても重要。
社会に出てからも学び続けられるよう、制作会社や小規模の会社でも学び、研究できる場所があったらいいのではと構想しています。ただ学ぶだけでは社会に還元できないので、学びとビジネス、社会に生かしていくことを女性視点から考える、なんてことが最近やりたいことですね。
※ A.C.O. Journal からの転載です
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