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意外と知らないUXデザイン#1 天才じゃなくても良いアイデアは出せる?アイデア出しのためのフレームワークをご紹介

こんにちは、UXデザイナーの村上です。
みなさんは日頃、どのようにアイデアを考えていますか?時間をかけずに次々と良質なアイデアが思いつけば苦労はしませんが、超がつくクリエイターか天才でもない限り簡単に革新的なアイデアは出せないと思います。

それでも、ものづくりやサービス開発を行うためには、ユーザーの課題を解決したりサービスの価値となるアイデアを考える必要があります。そしてなんとか良いアウトプットを生み出したいとみんな考えているはずです。私もその1人です。

天才ではないけれど価値のあるアイデアを考えたい、多角的な視点で発想したい、などを実現するための手助けとしてフレームワークや手法が存在します。 今回は「意外と知らないUXデザイン」シリーズの第1弾として、A.C.O.のデザインスプリントで用いることが多いアイデア出しのための手法の1つである「問い立て(How might we)」についてご紹介します。

デザインスプリントについては、 A.C.O.のデザインスプリントマスターが現場を通して学んだ心得デザイナーがデザインスプリントで大切にするべき10個のポイントの記事もあわせてご覧ください。

問い立て (How might we)ってなに?

「問い立て」は良質なアイデア発散を行うための手法です。
約10年前にデザインコンサルタント会社のIDEOが使い始めたのち、今では世界中の多くのデザインファームやデザイン教育機関で使われています。 英語で表記すると「How might we」であり、翻訳すると「我々はどうすれば〇〇できるだろうか」になります。

クライアントに説明するときは「解くべき問題を定義すること」と紹介しています。 初めて聞くと難しく感じると思います。実際クライアントと一緒にワークを行うときも、いつもこの問い立てのフェーズでの認識合わせに苦労します。

もう少し説明すると、問い立てはその言葉の通り「問い」を立てることです。この「問い」に答える形でアイデアを考えるため、アイデア出しの元になるとても重要な定義になります。実際に「問い」を誤ると良いアイデア発散ができません。すなわち良いサービスを作ることができないのです。ピーター・ドラッカーも「正しい答えではなく、正しい問いが必要である」という言葉を残していますね。

問いの立て方次第でアイデアがまったく違った性質のものになる

説明するより、例を見ていただきましょう。スタンフォード大学のd.schoolで公開されている事例です。
あなたがアイスクリームの商品開発を任されたとします。今より良い商品を考えるために、市場調査を行いました。すると以下のイラストのような「アイスクリームを地面にボタボタ落としてしまう」ということが重大な課題であることがわかりました。


そこでこの課題を解決するための「問い」を立てます。下記が問いの例です。

①どうすれば我々は、アイスクリームを地面にボタボタ落とさずに食べるためのコーンを作ることができるか

②どうすれば我々は、アイスクリームをより持ち運びやすくできるか

③どうすれば我々は、デザートを再定義できるか

デザインにおけるHow Might Weとは何か:具体例とその効果

この3つの例の中でどれが最も適切な「問い」だと思いますか?
答えを言ってしまうと②になります。

①はアイデアを考える範囲が「コーンを作ることができるか」という部分に焦点が絞られてしまいます。「コーンを作ること」に限定しなくても課題を解決するアイデアは他にも考えられますよね。

③は注目した「アイスクリームを地面にボタボタ落としてしまう」という課題に対して壮大な内容になっています。解決したいことに対しての「問い」が広すぎて、アイデアが分散しすぎる例になります。

このように問いの立て方によってアイデア出しの方向性や広がりが異なることがわかります。
問いは他にも様々な視点で立てることができます。

  • ・良い面を伸ばす
  • ・悪い面を除去する
  • ・反対を探す
  • ・ニーズやコンテクストから連想する
  • ・問題を分割する

デザインにおけるHow Might Weとは何か:具体例とその効果

視点を変えた問いを立てることで、同じ課題に対して出てくるアイデアが全く違ったものになります。実際のプロジェクトではこれらの視点も盛り込み、議論を重ね最終的な「問い」を決定します。
プロジェクトにもよりますが、考え出した問いの中から2〜3つに絞り込んで、そこからアイデア出しを行うケースが多いです。

「良い問い」を立てるための4つのポイント

これまでの内容を踏まえて、良い問いを立てるためのポイントを挙げると以下の4つになります。

1 どのような課題を解決するためのアイデアを出したいか、参加メンバーで認識を合わせる

アイスクリームの商品開発の例では「アイスクリームを地面にボタボタ落としてしまう」という課題に焦点を当て、解決するための問いを立てています。

2 言葉の定義をできるだけ明確にする

例えば「楽しめる」「ワクワクする」といった言葉がある場合、いつどのような状態のことを「楽しめている」とするか「ワクワクしている」とするかを問いに明記することが大切です。実際のプロジェクトでは、サービス特有の用語やクライアントがキーワードにしている言葉、複数の意味を持つ抽象的な言葉などについても認識合わせをする時間を設けています。

3 アイデアを考える幅が狭すぎず、広すぎない問いを立てる

参加メンバーに考える余地を与えつつ、生み出したいアイデアの方向性がずれないように定義することです。

4 最も解決したい課題に対する問いが立てられているかを確認する

サービスコンセプトを実現するアイデアが出せそうな問いが立てられたかを参加メンバー全員で判断することです。

4つとも可視化しづらい作業なので、クライアント社内メンバーだけだと客観的な判断ができないことが多いです。そのためにA.C.O.のUXデザイナーがいます。
これらのポイントを整理し、参加メンバーの認識を合わせ、同じ方向に向かって考えられるようにファシリテートしていきます。

問い立ての前後のプロセスもとっても大事

普段行っているアイデア検討のプロセスと比較してみていかがだったでしょうか? 職種も立場も異なる様々な人間が、同じ方向を見ながらアイデアを考え、発散させるための問いの役割はとても大きいと思います。

しかしながら、「問い立て」はあくまでサービス開発のためのプロセスの一部にすぎません。「問い」を立てる前段階には、どんな課題を解決したいのかという課題の定義が必要になります。そして、問いを決めた後はアイデア出しを行います。


A.C.O.ではプロセスを一貫して進めるために、その時々のフェーズに必要なフレームワークを用いて工夫しています。 これから続く「意外と知らないUXデザイン」シリーズを読んでいただくとさらに理解が深まると思いますので、興味のある方はご期待ください。



by Michiko Murakami

京都工芸繊維大学デザイン経営工学科卒業。ICT商材の総合商社、アプリケーション開発会社勤務を経て、現在に至る。

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