はじめに
景気が不透明な中で「手に職をつけたい」「キャリアを広げたい」と考えるエンジニアが増えているのではないでしょうか。
特に近年は リスキリング(学び直し) を通じて、スタートアップでスキルを磨きたいという動きも目立ってきています。
実際にリスキリングに関心を持つ人は増えていて、経済産業省の調査(リスキリングに関する公開レビュー資料PDF)でもその重要性が強調されており、AI時代に対応できる人材の育成やキャリアアップが社会全体のテーマになりつつあると感じます。
リスキリングとは「新しい技術や知識を学び直し、仕事に活かすこと」を指します。ITやAIの進化が早い今、現職の延長だけではなく“学び直しを通じてキャリアを広げる”という考え方が社会全体で広がっているのではないでしょうか。
石破首相の辞任というニュースもあり、日本社会全体が少し揺れているように感じています。
そうした状況のなかで、「安定か挑戦か」というキャリアの選択に迷う人も多いのではと思います。
大企業には安定した教育制度や整った体制があり、着実にキャリアを積み上げていける良さがあります。
一方で、スタートアップにはスピード感のある挑戦や、幅広い経験を積みやすいという特長があるように感じます。
以前のブログ「未経験者採用に対するaciassの考え方」でも触れたように、今のaciassでは即戦力のエンジニアを中心に採用しています。
0→1のフェーズでは、これまでの経験を活かして判断し、スピード感を持って動けることが大切だと考えているからです。
ただし「未経験を歓迎しない」ということではなく、育成の体制が整ったときには一緒に挑戦できる未来を見据えています。
そこで今回は、「スタートアップでエンジニアが成長できる環境」 をテーマに、リスキリングやキャリアアップ、キャリアチェンジとの関わりを整理してみたいと思います。
スタートアップでエンジニアが成長する理由とキャリアの広がり
スタートアップで働くことは「大変そう」というイメージを持たれることもありますが、一方でエンジニアとして成長するチャンスが多い環境でもあるのではないでしょうか。
ここからは、一般的に言われているポイントを踏まえつつ、実際に感じている部分を整理してみます。
幅広い技術に触れられる
スタートアップでは役割が固定されすぎず、フロントエンドもバックエンドも、時にはインフラやデザインに関わることもあります。
最初は大変に感じるかもしれませんが、その分短期間でスキルセットを広げやすい環境なのではないでしょうか。
0→1フェーズを経験できる
ゼロからプロダクトを立ち上げる機会が多いのも、スタートアップならではの経験だと思います。
要件定義から実装、MVP開発、リリース後の改善まで、一連の流れを体験することができるのは大きな学びにつながると感じます。
経営層との距離が近い
経営層と近い距離でやりとりできる機会が多く、意思決定の背景に触れられるのもスタートアップならではだと思います。
「なぜこの機能を優先するのか」といった判断の裏側を知ることは、ビジネス視点を育てるうえで意味があるのではないでしょうか。
スタートアップで働くメリットとデメリット(エンジニア視点)
メリット
- 裁量が大きく、自分の判断がプロダクトに反映されやすい
- 短い開発サイクルで多くの経験を積みやすい
- 経営に近い立場で技術とビジネスを学べる
デメリット
- 教育体制がまだ整っていない場合がある
- 少人数ゆえに負担が偏ることもある
- 挑戦の裏には撤退のリスクもある
スタートアップが「挑戦の場」になるか「消耗の場」になるかは、その会社がどんな環境を整えているかで変わるのではないでしょうか。
エンジニアが成長できるスタートアップ環境の条件
ここで書くのは、一般論というよりも、aciassが考える「成長できるスタートアップ環境の条件」です。
他の会社にも当てはまる部分はあるかもしれませんが、あくまで私たちの視点で整理してみました。
判断基準が明確である
価値観や判断軸がはっきりしていると、迷いが減りやすいように思います。
aciassでは「ワクワク」と「誠実さ」を軸にしていて、このおかげで安心して挑戦できる場ができていると感じます。
挑戦と失敗を許容できる
挑戦には失敗がつきものですが、それを学びに変えられる文化があれば、新しい一歩を踏み出しやすいのではないでしょうか。
キャリア支援がある
メンター制度やキャリアロードマップ、評価基準の透明化などがあると、挑戦した分の成長を実感しやすいと思います。
30代エンジニアのキャリアチェンジとリスキリング戦略
例えば、30代のAさん。
これまで3〜5年ほどエンジニアとして開発経験を積んできましたが、「もっと幅広いスキルを身に付けながら、新規事業や0→1フェーズにも関わりたい」と考えています。
大企業の安定性も魅力的ですが、スタートアップで得られるスピード感や、経験の広さに心惹かれているようです。
ここで大切なのは、「自分がどんな方向に成長したいか」を具体的に描くこと。
例えば、技術の専門性を極めたいのか、ビジネスやマネジメントにも関わりたいのか。
幅広いスキルを短期間で体得したいのか、それとも体系的に深く学びたいのか。
さらに言えば、“成長のアウトカム”を予測できる戦略思考が重要です。
厚生労働省の調査(IT・デジタル人材の労働市場に関する調査報告書 第5章)によると、リスキリング(学び直し)に取り組んだIT従事者は、転職時に賃金が上昇する傾向が強いと分析されています。
つまりAさんにとって「学び」は単なる努力ではなく、キャリアや待遇改善につながる戦略の起点になり得るということです。
言い換えれば、
「どの分野を、どんな学び方で学ぶのか」だけでなく、
「それによって自分のキャリアにどう反映されるのか」まで見据えて選ぶことが、エンジニア個人の成長戦略として不可欠なのではないでしょうか。
aciassの取り組み(実例)
aciassもまだ発展途上ですが、エンジニアが成長できる環境を意識して整えています。
・心理的安全性
- 意見やアイデアを安心して出せる場づくりを重視しています。Slackや1on1を通じて声を拾い、否定されない状態を保つことが、新しい挑戦の第一歩につながると考えています。
・透明性
- 制度や予算、評価基準などを全員にオープンにしています。これは「キャリアをどう描くか」を考える上で欠かせない要素で、先ほどのペルソナで触れた“戦略的な学び”を支える基盤になるはずです。
・挑戦への再投資
- WagMogやアウトドア事業など、新しい挑戦に利益を回すようにしています。エンジニアにとっては「自分の成果が次のプロジェクトにつながる」という感覚を持てるのが特徴です。
・キャリア支援制度
- メンター制度やキャリアロードマップの共有を通じて「どの分野をどう伸ばしたいのか」を具体的に描けるようサポートしています。厚労省の調査が示すように、リスキリングは待遇改善にもつながるため、その学びを実際のプロジェクトや評価に直結できる仕組みを意識しています。
aciassが大切にしているのは「人数を増やすこと」ではなく、メンバーのキャリアと会社の挑戦がつながる関係です。個人の成長戦略と会社の方向性が重なったときに、スタートアップならではのスピード感と充実感が生まれるのではないでしょうか。
AI時代に求められるエンジニア像とスキルアップの方向性
AIが進化している今、「コードが書ける」だけでは差別化が難しくなっているように感じます。
一方で、IT人材の需要は依然として高く、経済産業省の試算では2030年には約45万人のIT人材が不足するとされています。(IT人材需給に関する調査 概要PDF)。
こうした背景を踏まえると、これからのエンジニアには以下の力と姿勢がますます求められるのではないでしょうか。
- ビジネス要件を理解する力
- チームとして課題を解決する力
- ユーザー視点で考える力
- 自律的に学び続ける姿勢
実際、IPAの「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2024年度)」の全体報告書では、企業の約6割が「DX推進人材は不足している」と回答し、今後求められるスキルとして「ビジネス戦略立案」「データ・AI活用」が挙げられています(全体報告書 PDF)。
また、個人調査報告書によると、先端IT人材では72.8%が自律的学習を継続している一方、非先端領域では42.7%にとどまっているとの結果が出ています(個人調査報告書 PDF)。
こうしたデータからも、単に技術力だけでなく、ビジネス視点や学び続ける力が今後さらに重視されていくことが見えてきます。
その点、スタートアップはこうした力を同時に鍛えやすい環境だと感じます。
日々の業務が学びと直結していて、実践を通じて「自律的に学び続ける力」が自然に磨かれていくような気がします。
よくある質問(FAQ)
Q. スタートアップのエンジニアは大変ですか?
負担が大きい場面もあると思います。ただしそのぶん、幅広い経験や成長スピードを得やすい環境なのではないでしょうか。
Q. 大企業とスタートアップ、どちらが成長できますか?
大企業には制度の安定性があり、スタートアップには挑戦のスピード感があります。どちらが正しいという話ではなく、自分の望むキャリアに合う方を選ぶことが大事だと思います。
Q. スタートアップでの経験は転職に役立ちますか?
プロダクト立ち上げや経営層との距離の近さは、次のキャリアにつながる評価につながることも多いのではないでしょうか。
Q. エンジニアに将来性はありますか?
AIやクラウドの普及で役割は変化していますが、技術とビジネスをつなぐ人材は今後も求められるのではないでしょうか。
Q. 手に職をつけたい人にスタートアップは向いていますか?
幅広いスキルを短期間で得たい人には向いていると思います。安定性を重視する人には大企業も良い選択肢なのではないでしょうか。
スタートアップで成長を目指すエンジニアへのメッセージ
スタートアップは、エンジニアにとって「成長のチャンスが多い場」になる可能性があると思います。
ただしそれは、判断基準・挑戦文化・キャリア支援が整っていることが前提なのではないでしょうか。
aciassでは「ワクワク」と「誠実さ」を軸に、エンジニアが挑戦を楽しみながら成長できる環境を意識しています。
未経験者の採用はまだ先かもしれませんが、体制が整ったタイミングで挑戦できる未来を描いています。
大企業にもスタートアップにも、それぞれの良さがあると感じています。
どちらが優れているということではなく、自分に合った環境を選び、互いを尊重し合える社会が健全なのではないでしょうか。
一方で、世の中には「やりがい」の名のもとに長時間労働や使い捨てのような働き方を強いるベンチャーもあると聞きます。
私たちaciassは、人を軽く見たり使い捨てるような考え方とは相容れません。
エンジニア一人ひとりの挑戦と成長を大切にしながら、共に未来をつくっていきたいと考えています。
次回は「aciassとプランクトン」というテーマで書こうと思っています。