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デザイナー3人が語る「こうしてデザインと組織とプロダクトに向き合った」Design it!#1

ABEJAでプロダクトのデザインを担当している上野真由美です。
12月17日にデザイナー向けのmeet up イベント「Design it!#1」を、本社セミナールームで開きました。50を超す人たちが集まりました。


なぜいま開いたのか

このイベントは、「デザイナーが語る、デザインとプロダクトと組織」というテーマで、「ビジネスに泥臭く向き合い、他の職種とチームを作っている人」を招き、デザインをする上で、実際に経験した悩みや改善方法を共有する場として企画されました。

よそでは言えない「ぶっちゃけ話」や、実際にどんな進め方をしているのか「チラ見せ」もできる場にして、満足度を高めたい。そんな思いもありました。


「認識のずれ」をなくし、風通しを良くする

最初は私の話です。テーマは巻き込み型デザインのススメ
ABEJAでは、プロダクトデザイナーは私を入れて2人です。入社した1年前は私1人だけでした。そこで1人でやってきた取り組みを中心に話しました。

入社してまず目指したのは、プロダクトの現状把握と整理です。

そのためには、以前からプロダクトをつくってきたチームのメンバーに受け入れてもらう必要がありました。そこで、開発メンバーや顧客企業が今何が課題だと思っているのか、プロダクトを今後どうしていきたいのかを、定期的に開かれるミーティングや雑談などを通じて把握していきました。

こうした聞き取りを経て、新しく加わったメンバーとして、見えてきた課題を皆に分かる形で示していきました。

例えば、プロダクトに関係する役割や言葉がメンバーごとにバラバラでした。バラバラのままだと、同じ言葉でも、頭の中に浮かぶイメージが異なることが出てきます。そういう状態だと、認識のずれをなくすための打ち合わせなのに、言葉の定義があいまいなままメンバー同士の認識のズレが見えづらくなったりデザインとの接続がうまくいかなくなったりして、進行が遅れることもあります。

そこでユーザーロールと言葉の定義を決めていきました。

そのあと、「いま」と「未来」に取り組むことをそれぞれ整理しました。整理することで、先を見通し、今から何を手がけておけばいいのか見通しが立ちやすくなり、後で出てきた変更にも融通が利く「余白のようなものも生まれます。

プロダクト作り以外に、チームのコミュニケーションをなめらかにすることもデザイナーの大事な仕事です。



デザインツールの選定も、影響を与えます。例えば、Jamboad。画面に直接手書きできる大きなモニターがあり、大人数でも同じものを一緒に見ながら議論ができます。Figmaもデザインをみんなで一覧できて、意見も簡単に書き込むことができます。



プロダクトやチームづくりで、私が一番注力したのは、「認識のずれ」をなくし、風通しをよくすることでした。

というのも、いろんな場面で生じた「誤解」が、後で作業の足を引っ張る一番のきっかけになっていると思っていたからです。理解の格差がチームで生じると、会議の冒頭はいつも前回の振り返りから始めなければならなかったり、プロダクトづくりで無用な遠慮が生じたりと、無駄な労力がかかることが多くなるーと今までの経験から感じていました。

そんなことを語りながら、最後はこうまとめました(下図)



「デザイナーだけでは良い体験を設計するのは難しい」

株式会社プレイド デザイナー 鈴木健一 さん
2006年からFICC Inc.にてブランドサイトのWebデザイン/ディレクション業務に従事した後、14年にアプリやサービスのUXデザインが専門のStandard Inc.を設立。現在はCXプラットフォームKARTEを提供するPLAIDで、新規プロダクトの立ち上げや既存機能のUI改善に従事。元ケーキ職人。


鈴木さんは、10人規模のデザイナーがいる職場で働いている経験をもとに「より良い体験を共にデザインするためにやってきたこと」と題し、デザインチームがどう円滑に他職種と取り組んでよりよい体験をデザインしていくかを話しました。

「デザイナーだけでは良い体験を設計するのは難しい」と、鈴木さん。理由として「顧客と技術をデザイナーだけで理解するのが難しいから」といいます。

そこでカスタマーサクセスの担当者と顧客のインタビューに出かけて課題や要望の声を集めました。エンジニアからはプロダクトがどういう仕様になっているのか、分かりやすく共有してもらいました。ほかの職種からのレビューも受けたそうです。



ほかに、他職種と良い関係を築くために、別のチームのデザインの仕事を自ら引き受けたり、デザイナーが入れなかった変更もフォローして次から巻き込んでもらえるようにしたり、Slackでの情報収集を密にして後手に回るのを防いだりしたそうです。

鈴木さんたちの取り組みは、デザイナーの人数が少ないABEJAと多くの共通点がありました。いいプロダクトを目指すなら、どこも似た道をたどるセオリーのようなものがあるんだなと感じました。


リモートワークでも成果とやりがいは得られる

株式会社ウルトラ 代表取締役 / アートディレクター 佐々木 恒平 さん
2002年から制作、サービス事業、大手、ベンチャー問わずに多様なキャリアを重ねる。15年にデザイン会社「ウルトラ」を設立。現在は同社代表以外にも東北を中心としたキャピタル「MAKOTO」と共に様々な起業家のメンターを務める傍ら、福岡のスタートアップの創業メンバーとしても活動。六本木のハッカーズバーでたまにバーテンダーを務めている。アートをビジネスにする話が大好き。


佐々木さんには、近い将来、こうなるかもしれないデザイナーの一形態として、「共創リモートワーク」について話してもらいました。

佐々木さんは、親族の介護がきっかけで、実家のある宮城県仙台市と首都圏を行き来する生活を続けてきました。

そんな経験を踏まえ、子育てで仕事の時間を減らしたり、介護で実家に戻らなければならないようなとき、デザイナーを辞めるのか続けるのか、という二者択一は「しなくて良くなってきている」「もう時代にあわない」と話していたのが印象的でした。

同時に、久しぶりに暮らした仙台での生活から、地方の潜在的な可能性も見えてきたといいます。いまは仙台でベンチャーキャピタルにかかわりながら、業務委託でいろんな企業のデザインの仕事をリモートで請け負うこともあるそうです。

こうした働き方から、佐々木さんは「東京で働けない、もしくは地方で生きることを選んだデザイナーたちが、都度チームを作って何かを生み出していくことはできる」と話していました。

たしかに、海外のデザイナーの働き方は、佐々木さんの言うようなかたちが珍しくありません。ABEJAでもリモートワークを週1回から取り組みはじめ、現在では週2回までOKになっています。


Design it! #1を終えて

鈴木さんや佐々木さんの発表、懇親会を通じて、ほかのデザイナーの課題や悩みごとを聞けてとても刺激になりました。

ベンチャーの場合、瞬きした瞬間に経営方針や事業が大きく変わることがあります。そんな時でもデザイナーは(デザイナーに限りませんが)、問いを出し続け、環境に対応し、それでも譲れない一線を守らないといけないことがあります。

常に葛藤と選択を迫られ鬱々とすることは、デザイナーに限らず、多くの働く人に経験があるのではないでしょうか。

皆さんの話を聞きながら、周囲と協力して「自分たちが作った」と胸を張れるプロダクトを育て、世の中に貢献したいという気持ちには嘘はつきたくないと改めて思いました

デザイナーたちが、明日からの仕事のアイデアの種を発見したり、気持ちが前向きになれる場所にしたい。

そんな思いを込めて、私が尊敬する、外資系企業のデザイナー2名をゲストに「Design it! #2」を2/20(木)開催予定でしたが、新型コロナウィルスの影響を考慮し、本イベントを延期とさせていただくことを決定しました

参加者およびスタッフの健康や安全を第一に考えた上での判断となります。

また、延期の日程については、具体的な日程が決まりましたら、告知いたします。みなさまのご理解の程、よろしくお願いいたします。


筆者:上野真由美
働いていた受託制作会社が事業会社に吸収合併され、その流れで自社のメディア立ち上げやBtoC新規事業立ち上げを経験。2015年に株式会社メルカリに入社、CtoCサービスを経験。主にUS版メルカリの開発に従事。失敗も経験する。19年、 ABEJAに入社。アノテーションツールをはじめとしたプロダクト改善のデザインを主に担当しつつ、ABEJAのデザイン全般もみている。


(2020年2月13日掲載の「テクプレたちの日常 by ABEJA」より転載)

デザイナー3人が語る「こうしてデザインと組織とプロダクトに向き合った」Design it!#1|テクプレたちの日常 by ABEJA|note
ABEJAでプロダクトのデザインを担当している上野真由美です。12月17日にデザイナー向けのmeet up イベント「Design it!#1」を、本社セミナールームで開きました。50を超す人たちが集まりました。 ...
https://note.com/abeja/n/nc3363101ee74
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