弊社Daisybell Japanの菅沼は、商社の電子部品営業、レノボの法人営業を経て、現在は営業統括責任者として、商談から契約後の顧客対応までを一貫して担っています。
営業責任者へのインタビュー、全3回の第2回をお届けします。(聞き手:Daisybell Japan 広報担当)
目次
1. 導入企業のユースケース── 効果が出やすい業務には、共通点がある
── 第2回もよろしくお願いいたします。いま日本の導入企業では、Daisybellはどのような業務を担っているのでしょうか。
菅沼:用途はかなり幅広いです。電話を受けるインバウンドでは、代表電話の一次受付、店舗から本部への社内問い合わせ、設備トラブルの受付、予約、時間外対応など。電話をかけるアウトバウンドでは、新規営業の架電や既存のお客様への確認連絡など、これまで人が1件ずつ電話していた業務をAIが行うケースがあります。
ただ私自身は最近、インバウンドかアウトバウンドかという分け方よりも、その電話の中で「人が何をしているか」が大事だと思っています。店舗や会社を特定して、症状を聞いて、FAQを確認して、答えられないものは担当部署にエスカレーションし、基幹システムに登録する──一連の業務を見ていくと、かなりの部分はすでにルール化されているんです。こういう業務は、AIと非常に相性がいい。
── 相性の良い業務には、具体的な条件があるのでしょうか。
菅沼:共通点は大きく5つです。1つ目は件数が多いこと。2つ目は、毎回ある程度決まった確認事項があること。3つ目は、人が同じ説明や確認を繰り返していること。つまり、人が付加価値を発揮しづらい場所です。4つ目は、営業時間外を含めて電話がいつ来るか分からないこと。人は24時間365日働けませんから。5つ目は、電話を受けた後にシステム入力やエスカレーションといった後続処理があること。
この5つの条件に当てはまる業務ほど、AIを入れたときのインパクトは大きくなります。
── 最近の傾向はいかがでしょうか。
菅沼:コールセンターを持っていない会社様からのご相談が増えていることです。実際には、かかってくる電話を営業事務や店舗支援部門、総務の方が取っている。つまり、コールセンターという名前がないだけで、社内には小さなコールセンターのようなポジションがたくさん存在しているんです。
あとは、電話に「回答するため」ではなく「情報を集めるためのインターフェース」として使うケースも出てきています。人が15分かけてヒアリングしていたものをAIが先に8割整理してくれれば、人は最後の判断だけに時間を使えます。
2. 「90%できます」とは言わない── AIのKPIと、お客様のKPIは別物
── 導入後の効果について、お話しいただける範囲で数字を交えてお聞かせください。
菅沼:お客様によってかなり違う、というのが正直なところです。以前の記事でも紹介した、ある大手小売チェーンのお客様の事例では、導入前は約80%の電話にお答えできていなかった状態から、導入後は100%の応答へ。そのうち約90%はAIが単独で完結しました。かなりインパクトのある数字だと思います。ただ、私自身は営業の際に「Daisybellなら90%やれます」とは言わないようにしています。
── これだけの実績があるのに言わない、というのは少し意外です。なぜでしょうか。
菅沼:業務によって、AIに任せられる範囲は全く異なるからです。代表電話の一次受付はAI化しやすい。一方で設備故障のトラブルシューティングは、症状もマニュアルも複数あって、現地での判断が必要な場合もあります。そういう業務で最初から「AIで90%」を掲げると、むしろリスクが高くなる。
だからまず「この会社にとっての成功は何か」を定義します。応答率なのか、AI単独で完結した割合なのか、スタッフの電話応対がどれだけ減ったか。何を見るかで評価は全く違うので、AIのKPIと、お客様のKPIは分けて考える。最終的な成果は、お客様の業務がどう変わったかで測るようにしています。「音声認識率95%」という数字があっても、お客様にとってはそれだけでは意味がないんです。
── 電話業務ならではの発見も、ありそうですね。
菅沼:AI導入によって、見えていなかったものが見えるようになることです。人間が電話を取っていると、「何の問い合わせが多いか」「どこで対応が詰まったか」がデータ化されていない会社がまだまだ多い。AIならすべての通話ログが残るので、「この種類の問い合わせに30%の時間を使っていた」といったことが分かる。そうすると、人の業務をAIで置き換えるだけではなく、問い合わせ自体を減らす施策への転換にもつながっていきます。
── アウトバウンドの効果は、どう見るべきなのでしょうか。
菅沼:単純に「AIは人の何倍も電話できます」という話ではないと思っています。AIは同時並行で、人が1件ずつかけるのとは桁の違う件数を架電できますが、重要なのはその先です。たとえば人が100件電話してリード率10%なら10件。AIが1,000件電話してリード率5%だったとしても50件取れる。
1件あたりの効率を見るか、全体の成果を見るかで評価は全く違うので、AIだからこそ実現できるスケールも含めて評価する必要があると思います。
また、応答率のような数字は、導入初日からはっきり変わりますが、リード獲得や複雑な問い合わせへの対応は、運用データを見ながら伸ばしていく部分です。最初に基準を作って、2か月、3か月とブラッシュアップしながらAIのクオリティを上げていく。そういう改善サイクルが重要だと考えています。
3. 数字に表れない変化── 「電話が鳴るかもしれない」からの解放
── 数字に表れにくい変化で、お客様に喜んでいただいていることはありますか。
菅沼:数値以上に評価いただくことの1つが、電話によって仕事が中断されなくなることです。電話は非常に強制力の高いツールで、鳴った瞬間に「今出てください」と言われているようなものです。1本5分の電話でも、集中が切れて元の仕事に戻るまでの影響は5分では済みません。
さらに言えば、鳴っていなくても「鳴るかもしれない」と構えている状態がある。AIが電話に出ることで、「電話が鳴るかもしれない」という状態からも解放されて、本当に必要なものだけを後からピックアップすればよくなる。かけてきた方の緊急性は担保しながら、受ける側の心理的な負荷を下げられるのは大きな価値だと思います。
── クレーム対応については、いかがでしょうか。
菅沼:すべてAIに任せるのではなく、人がやるべきケースも多いと思っています。ただ、強い感情で話してこられたお客様の要件をAIが最初に伺って、「このお客様はこういう理由でお怒りです」という前情報付きで担当者に渡す。この一次対応だけでも、人の心理的な負担は大きく減ります。AIがワンクッションになって、人につながる頃には少し落ち着いていらっしゃるケースもあります。
── マネジメント側にも変化はあるのでしょうか。
菅沼:電話業務の可視化ですね。導入前は電話がブラックボックスで、「最近どういう問い合わせが多い?」に現場の感覚でしか答えられない会社が多いんです。AIなら会話をすべて文字起こしして、要約して、タグを付けられる。「今月はこの問い合わせが何件」と見えるようになると、マネジメントの打ち手も具体的になります。これまで見えていなかった業務データを作ってくれる存在として、AIは電話応対の外側でも会社の力になれると思っています。
4. 現場が変わる瞬間── 「この業務は、もうAIに任せていいんじゃないか」
── お客様に言われた言葉で、印象に残っているものはありますか。
菅沼:最初はAIにかなり懐疑的だった現場の方から、「この業務はもうAIに任せていいんじゃないか」という言葉が出てきたときですね。AI導入に一番慎重なのは、経営層よりも現場の方なんです。毎日オペレーションを回している方たちなので、「自分ならこう判断するけど、AIにできるのか」をリアルに見られる。長年電話対応をしてきた方たちに「今のAIはすごいので任せてください」と言っても、全く説得力はありません。
── では、どのように信頼を得ていくのでしょうか。
菅沼:最初はAIに任せる範囲を狭くして、実際のログを一緒に見て、改善のプランを立てます。10件のログがあったら、「この7件は問題なし」「この2件は言い回しを変えましょう」「この1件は人に転送すべきですね」と。
そういう改善を続けていくと、慎重だった現場の方から「この問い合わせもAIに追加しましょう」と、任せる幅を広げる話が出てくるようになるんです。
今のAIは頭が良いのですが、会社特有の言い回しや事情は知りません。優秀な新入社員と同じで、うまく使うには会社のことを学ばせてあげる必要がある。私たちが一緒になって対応履歴を見ながら、「ここは直したほうがいい」「御社のポリシーではどうですか」と日々相談しながら、AIを一緒に教育していく。ここが実は大事な部分です。
5. 導入の実際── テストに通るAIと、本番で使えるAIは違う
── 導入は、どのような流れで、どのくらいの期間で立ち上がるのでしょうか。
菅沼:平均1.5か月ほどです。課題をヒアリングして、AIと親和性のある業務を絞り、実際の業務を想定したデモで「この会話ならワークする」と確認いただいてから、PoC、本番導入と進みます。一次受付のようなシンプルなものなら最短2週間ほど。CRMや基幹システム、PBXなどとの連携が入る場合でも、API連携は1か月程度で立ち上がったケースがあります。
── お客様が事前に想像されていることと、ギャップはありますか。
菅沼:導入前は「AIを育て上げるのが大変そう」と心配されるのですが、実際に導入したお客様からよく出るのは「自分たちの業務の棚卸しが一番大変だった」という声です。「AIが分からなかったら担当者に転送します」「では担当者が出なかったら?」「そこは決めていませんでした」──これがよくあるんです。
でも悪いことではありません。今まで人が暗黙的に処理できていたから、ルール化する必要がなかっただけ。AIに任せるために初めて整理して、結果として会社の業務が明確になる。これはAI導入の副次的な価値だと思います。
── 日本のお客様と向き合うからこその手応えは、ありますか。
菅沼:要求の細かさですね。私たちは月1,000万件を超えるグローバルの通話データを活かして製品を進化させていて、日本のお客様からの細かな要望は、日本のエンジニアチームのチューニングを通じて速いサイクルで反映されています。
「AIから人に転送できますか」に「できますよ」と答えると、「転送先が全員対応中だったら?」「転送中に切れたら?」というところまで確認が入る。本番環境で本当に必要になることばかりなので、非常に重要だと思っています。
次回の最終回は、導入した企業がどうやって成果を出していくのか、「契約後こそ本番」の現場をお話しします。
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