――保母代表には「社員のための会社をつくる」というポリシーがあります。なぜその考えに至ったのかを聞かせてください。
私自身30年ほど情報関係やIT関係に身を置いていますが、紆余曲折があり何度も転職を繰り返しました。一時期、勤め先の経営不振で未収入の状態が3年続き、その状況下で「家族を守らなきゃいけない」という厳しい経験もしました。
また、人材派遣的な会社で職を失うエンジニアの姿を何度も見てきました。会社は案件と人材の紐づけはしますが、そこから外れた場合に雇用契約がなくなるためです。私は営業職や管理職の立場でしたが自分自身に置き換えて考えると、仕事を続けながらも契約を打ち切られてしまうことに対する不安が生まれているだろうと感じていました。似たような状況を体験したことがあるからこそ自分が経営者として雇用する上では、正規雇用を前提に社員の暮らしのレベルを上げていきたいと思いました。「家族を守る」という、一番大事なことを自社では全ての社員に対して果たしたいです。
――社員インタビューでは、アークグローを選んだ決め手として「保母代表だったから」と話されていました。「社員のための会社をつくる」という理念に向かって行動し、実行力を発揮されているだと感じました。
私に共感を持って集まってくれた人たちと共に、会社をゼロから作り上げていきたいです。個人の会社として数字を上げるのであれば、人を雇わなくてもアルバイトや外注とのつながりで売上を伸ばすのは可能です。しかし、それは先ほど話したような「契約」だけの関係。「仕事で対価を得て生活を豊かにしていく」という価値観は誰もが思っているはずなので、アークグローの仕事を通じて社員の人生が豊かになってほしいという思いが私は一番大きいです。
――業務内容だけではなく、社員の人生そのものを良くしていきたいという思いが強いのですね。
そうですね。人生100年時代と言われますが、ずっと右肩上がりの人ばかりではないですよね。仕事のパフォーマンスにしても、どこかで成長のカーブは落ち込んでいきます。その上でどういった関わり方があるのかを考え続けなければいけない。
過去の会社でも、普通に元気に働いていた人が突然精神的につぶれてしまうケースを見てきました。それぞれ事情が違うにしても、私は復帰までのプロセスをどう積んでいくかを社員と一緒に考えていかなきゃいけないと思う。会社として社員に何ができるのか。仕事が今まで通りできなくなったとしても切り捨てるのではなく、未来に向かってどう進んで行くのかを一緒に考えられる会社になれたらと思います。
――さまざまな状況下において、一時的な休職は決して珍しいことではありません。そういうケースに対しても柔軟に対応し、社員の考えや思いに伴走していくのでしょうか?
IT関係はリモートが浸透しているので、多様な働き方が活用できます。そして、何か問題が起きる前にコミュニケーションを取りながら予兆が見えるようにしたい。メンタル面や家庭の事情にしろ、予防策や解決策を社員と共に考えていきたいです。
――リモートでの働き方において、そのコミュニケーションは上手く取れるのでしょうか。
日頃から喜怒哀楽も含めて、豊かに仕事や人生を進んでいるかどうかが確認できるといいですね。決して、仕事だけうまくいけばいいわけではない。やはりみんな仕事以外の悩みやプライベートの問題も抱えていますよね。だからこそ、普段の雑談の中で思いつめている状況が垣間見える関係性が築けていれば、その人に対するフォローの仕方が変わってくる。良いことだけの報告もいらないし、悪いことだけの報告もいらないと思っています。
――社員の皆さんには、会社に対する不満もどんどんぶつけてほしいと思いますか?
そう思います。今後、就業規定を決める際も、私が考えた内容を踏まえて意見を交わしながら議論して変えてもいい。そこは臨機応変にいきたいですね。
経営者としての一本筋は通しますが、その中で何が有効的なのか、社員にとってどういうものが必要なのかを共に考えることは必要になると思う。私の考えや方針を社員に説明し、その上で意見を言ってもらいながら取り入れていけるといいかと思います。
――いろいろな人が社員として関わるほど会社としての幅が広がりそうです。
私が以前勤めていた社長から教わったのは、「社長が馬鹿であれ」ということ。「分からないから教えてほしい」と言えるかどうかで受け入れ方が全く変わります。経営者と社員の間に壁を作ってしまうのではなく、下手に出ていろいろなことを吸収する。そういう視点では、IT技術の専門家が在籍する会社において、「こういうことを始めたいからどうしたらいいのか」「技術的な側面は分からないから教えてほしい」と私から投げかけられる関係性でありたいと思っています。
――そういった考えの根底には、営業職や管理職として勤めてきた保母代表のエンジニアに対するリスペクトがあるのでしょうか?
そうでしょうね。私も技術を学校で習いましたから難しさはわかっている。だからこそ、技術者に対しては一目置きますよね。僕の役割であった営業職からすると、全く異なる領域です。ユーザーとして使うイメージを全て体系立ててシステムとして成立させるのは、すごいことだと思います。
――そういった技術者が、年齢を重ねるにつれて現場の最前線から外されていくのは本人にとって辛いことでもあると思います。長いスパンでどのように社員と関わっていきたいと考えていますか。
その時になってからでは遅いので、入社した当初からキャリアプランを聞いていきたいと思っています。ある程度の目標値が出た上で、目標に対しての評価をしていきます。
中途採用で経験者も入社するので、この先のライフステージや仕事の技術面で想定されることも包み隠さず話をしていかなければいけないですね。良いことばかり言っていてもどこかでギャップは出てしまうので。それぞれの立ち位置やスキル、思いが異なると理解した上で、本人の思いを踏まえてキャリアプログラムを考えていきたいです。いずれどんな働きをしたいかを知っていれば「現段階ではこういう仕事に挑戦できないか」といった内容も計画を立てて進められると思います。
――今後、アークグローをどんな会社にしていきたいですか?具体的なビジョンを聞かせてください。
活気がある会社にしたいです。いわゆる上から仕事を落とす形ではなく、社員から新しい技術や「こんなものを作りたい」「こういう関わりを持ちたい」などのアイデアを更新していき、いろいろ発信していけるような組織になっていけたらと思います。そのためにも、エンジニアが新しい技術に触れる機会や自由に開発できる環境はつくっていきたいです。人と交わりながら技術を高めていく環境を想定しています。
―――社員が主体となって変化し続けられる組織ですね。
やはりIT業界ではずっと同じ形態の会社はほとんどありません。変化に対応していかないと会社として生き残っていけない。たとえば、業務ノウハウを精通していく中で、さまざまなツールを加味して、その時に合ったものを提供できれば変化に対応できるはず。ITはツール・道具なので、それをどう有効に使えるかは時代によって異なります。そのノウハウが無いといけない。
そして、プログラマーとしてずっと同じ言語で突き進むのは赤信号だと思う。言語も道具なので、情報をどうアレンジしてシステムにするのか、または安心なものにしていくのか。データやシステムの仕組みをどうアップデートするかが大切だと思います。そういう柔軟な対応ができる会社になって、どんどん新しいものを取り入れていける組織にしたい。システムをつくるだけが全てじゃない。どうやったら有効に使えるかも一つのノウハウなので、IT全般を有効に活用する専門集団にしていきたいと思います。
――時流を察して変化をし続けるためにも、社員教育についてはどう考えていますか。
会社の財産としてナレッジとノウハウを蓄積していきたいです。一個人のエンジニアの頭の中に入っているだけではなく、会社のノウハウとして共有・伝承していかなきゃいけない。ですので、一つは先輩社員から後輩社員など人から人につなぐ教育です。
もう一つは、外部の教育も会社としてフォローしたい。いまスタートしているのがオンライン学習ツールの「Schoo」を会社負担で活用したいと思っています。また、技術者の集団なので資格取得の支援もしていきたいです。試験料や学習費用の補助、もしくは取得に対する報奨金などを制度化も考えています。
――福利厚生なども含め、社員の生活を豊かにする制度についての展望はありますか。
まず残業は極力減らしていきたいですし、どうしたら減らせるかということはクライアントと労務管理をした上で常に考えていきたいです。
そして、社員とのつながりを大事にしたいです。たとえば、eスポーツを活用した社内交流や同好会のように趣味での集まりも生まれてくるでしょう。強制ではない形で親交が深めていけたらいいかと思います。
――アークグロ―として他社と差別化できるポイントを教えてください。
今は自由度でしょうか。私としても、社員自身が興味のあるものをこの会社で生き生きと表現する姿を見るのはワクワクします。今はいろいろな方向に、どう進むかを決めていくことを楽しめる状況です。
――社員の皆さんの成長を感じる機会はありますか。
試行錯誤しながら乗り越え、一つ一つが経験になっていると感じます。自分の幅が広がっていると思うので、そこに価値を見いだしてほしいです。
――どんな人がアークグローに集まってきてほしいですか。
能動的に自分の思いをどんどんぶつけてくれる人ですね。やはりゼロベースから会社をつくり上げていくことは興味がないとできないので。上司から「これやって、あれやって」と言われるより、「これがやりたい、あれはどうですか」と能動的な動きをできる人がたくさん集まるといいですね。
それはスタートアップ期の今だけではなく、アークグローの文化として変わらないでいたい。会社の形が固まったら安定ではなくて、どんどん新しく活性化していくようにしたい。それがどういう領域なのか、拠点が増えるのか、そのやり方は未知数だと思う。でも、一つ一つの可能性には「人」がいないと成り立たないと思っています。
――1年後、5年後……この先のアークグローのビジョンを教えてください。
まず、3年で社員を40名にしたいと思っています。拠点は複数考えていますが、多治見本社のオフィスをいずれ個性的にできるといいですね。たとえば、古民家に本社機能、もしくは研修センターのような開発拠点をつくりたい。
多治見は自然が豊かで陶磁器産業など歴史と文化のある街です。首都圏では2時間近くかけて通勤する人も多いですが、そういった時間を惜しまず遠隔で仕事ができるので、プライベートと仕事の充実を多治見という街でも実現できたらという思いがあります。多治見をエンジニアが集まる街にしたいので多治見市の行政との連携も強めたいですね。
――最後に、今後アークグローに入社する方にメッセージをお願いします。
会社として立ち上がったばかりで、まだまだ小さい会社です。これから踏み出すものに関しては未知の世界ですが、不安よりも希望の方が多いと思います。自分の思いを強く持って来ていただければいろいろな形で結果につながると思います。