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提携から1年、デザイナーとSIerが肩を並べてユーザーと向き合う理由

※この記事はURAGAWAにて、2019年10月31日に投稿された記事の転載です。(https://uragawa.work/media/17337/

コミュニケーションデザインからサービスデザインまで、広範の“デジタルデザイン”を提供する、株式会社フォーデジット。

創業から18年の歴史の中では、業務領域の拡大や分社化・合併などさまざまな岐路を経験してきた。そんな同社は、2018年3月デザイン会社として希有な選択をした。長年協業してきた株式会社NTTデータとの資本業務提携だ。

日本において、デザイン会社が大企業と資本業務提携を結ぶことはまだまだ珍しい。加えて、デザイン会社とSIerでは、背景にある文化や事業の進め方などさまざまな違いが存在するはずだ。この意思決定の背景には、どのような狙いがあったのか。

提携から1年を経た今、この意志決定の背景と業務提携を経て同社が描く未来を取締役の末成武大氏に伺った。

よいものづくりを、より深い関係性でともにするため

—はじめに、資本業務提携の背景を教えてください。

元々、NTTデータとフォーデジットは、サービスデザイン領域を中心に長年一緒にお仕事をしてきました。SIerとデザイン会社が協業することで、どのような価値を発揮できるか、トライアンドエラーを繰り返してきた関係性です。

資本業務提携の話は、こうした協業案件の実績が積み上がり、お互いが足りないピースを埋めあえる関係性だと明確になったタイミングで持ち上がりました。

—元々、パートナーとしてよい関係を築かれていたんですね。フォーデジット側としてはどのような心持ちでその話を受け止められたのでしょうか?

よい関係を築けるだろうという確信がありました。無論、これまでさまざまな案件を通し、お互いを知ってきたというのもあります。それに加え、私自身NTTデータグループ出身で、お互いの「ものづくりに対する姿勢」の近さを強く感じていたんです。

フォーデジットは、さまざまな領域のデザインで「よいものづくり」にこだわってきました。徹底的に「やりきる」からこそ、その熱量のようなものが周りに伝播し評価をいただける。ものづくりと真摯に向き合うことを大切にしてきた会社です。

この姿勢は、NTTデータももともとの強みとして大事にしているところでした。我々も、ある意味“路地裏の名店”。メインの通りにあるお店のような派手さはないけれど、ものづくりと真摯に向き合うことで、人が人を呼び、お客さんが来てくれる。「やりきる」文化が根付いていたからこそ、共鳴する部分があったのだと思います。

—ただ、日本でデザイン会社が外部資本を入れるのは、珍しい印象があります。

国内のデザイン会社という視点で見ると、おっしゃるとおりかも知れません。ただ、NTTデータグループ視点で見るとそうでもないんですよ。同社はグローバルでは数多くのデザイン会社と提携しており、スペインではeveris Groupを子会社化していますし、北米ではStarと資本業務提携を、日本でも2019年2月にネットイヤーグループを子会社化しました。

彼らにとっては、「デザイン」というピースを補完してくれるパートナーと、より強固な関係を築く手段として資本関係は珍しい話ではない。逆に言えば、さまざまなデザイン会社と関係値がある同社だからこそ、我々も話が早かった部分はあります。

—外部資本は、経営の意思決定にも関与していきます。経営陣の中ではどのような議論があったのでしょうか?

経営的な観点で言えば、正直、外部資本を入れる必要性はそこまでありませんでした。経営もうまくいっていましたし、キャッシュフローに不安があったわけでもありません。両社の関係性をより深め、推進力を高めるため資本をというイメージです。

経営の意思決定でいうと、今回の資本はあくまでともに「よいものづくり」にむけ関係を強固にする手段。資本関係によって意志決定にブレが生じることがあれば、むしろ「よいものづくり」ができなくなる可能性もある。それはNTTデータも望むところではありません。実際、この一年を振り返っても、意志決定に変化はなく、肩を並べる機会が増えてきたという印象です。

強いていうなら、「中立性が担保できるのか」という議論はありました。結果、資本比率を低く抑えてもらい、自立した形で経営できるようにしています。

デザインは、誰よりも顧客と向き合えなければいけない

—なぜ、“中立性”を重要視したのでしょうか。

デザイン会社にとって、欠かせないと我々は考えているからです。我々が一番向き合うべきは顧客やユーザーです。彼らにとって本当に必要なものは何かを考え抜かなければいけない立場だからこそ、その思考にバイアスがかかるような力からは距離をおく必要がある。資本の力もそのひとつだと思っています。

たとえば、社内の業務効率化をデザインの力で解決しようという案件があったとします。そのとき、資本関係のある親会社がERPなど何かしらのソリューションを作っていたら、そのソリューションにつなげようというバイアスがかかる可能性があるかもしれない。それが本当に必要であればいいのですが、バイアスを避けるためにも、中立性を維持すべきと考えているんです。

—顧客やユーザーを一番考えるべきデザイン会社だからこそ、“中立性”は外せない要素だったと。

「中立性が担保できなくなったら、僕たちは経営陣であるべきじゃない」と、田口(代表取締役の田口亮氏)ともよく話しています。

幸い、我々は昔から協業してきた関係もあり、NTTデータからの提案でもダメな時はダメと伝えますし、逆に彼らもダメだと思う時は伝えてくれる。時には衝突することもありますが、それくらい腹を割って話せる関係性と信頼もある。だからこそ、今回は不安なく進められたのだと思います。

——デザインとの向き合い方という点では、さきほどお話しされた「よいものづくり」を追求するという姿勢にも近いかと思います。フォーデジットの考える、理想のデザインとはどのようなものなのでしょうか。

前提として、我々が捉えているデザインは、単にビジュアルの話ではありません。それを踏まえた上で、基本的には「用の美」つまり「使われることを前提とした美」の追求だと考えています。誰かに使われて価値を享受するまでの一連のプロセスすべてを担う、連続的な営みというイメージですね。

たとえば、Appleは「かっこいいから」「使いやすいから」という理由だけで事業が伸びていったかというと、きっとそうではありません。マーケティングはもちろん、通信キャリアとの交渉、ストアスタッフの接客やアフターサービス……。そういったプロセス一つひとつがしっかりと行われていたからこそ、成果に繋がっているはずです。我々はそのすべてを考える必要がある。

—かなり、ビジネス広範におけるデザインを捉えていらっしゃるように感じます。

デザインはビジネスの一部ですから。デザインを語る以上ビジネスを抜きにして語ることは基本はありえません。これは経営陣も現場も同様で、田口もデザイナー出身ですが、デザインのことを考える上で、ビジネスのことを誰よりも考えています。

世の中のエンドユーザーに、向き合い続ける

—提携から1年。その間にはグループ3社の合併もあり、組織の目指す姿にも変化があったのではないでしょうか。今改めてフォーデジットが目指す姿を教えてください。

事業面は、田口からもお話ししたとおりグローバル展開が本格化してくるでしょう。タイでは先日現地法人を立ち上げましたが、僕個人の意見としては、この勢いのままアジアNo.1のデザイン会社を目指していきたいと思っていますね。

ただ、それを実現するためには、ものづくり、組織作りとも、まだまだやらなければいけないことがあります。

組織面では、合併や採用の加速もあり、どんどん規模や人材の多様性を追求していくフェーズです。最近は大手SIerやグローバルコンサルティング会社出身のメンバーも参画するなど、より上流の案件や複雑性の高い案件に対応する体制も整ってきました。この変化をよい方向へ導くのが、経営側にも求められていると感じています。

一方で、我々は不動産領域のサイト制作から始まり、UXやサービスデザインまで領域を広げるなど、ものづくりにおける強みを常にアップデートし続けてきました。この姿勢を大切に、新領域を切り開きながら、常に目の前のデザインと真摯に向き合う意識は徹底していかなければいけません。

—規模の拡大と変化、ものづくりへのこだわり、双方を追求し続ける、と。

冒頭でもお話ししたとおり、我々は徹底的にやりきる「よいものづくり」を通し社会に価値を提供してきました。どんな案件・体制でも、顧客やユーザーを第一に考え、真摯に向き合う。分社化・合併や資本業務提携といった経営側の変化や、組織規模や事業領域の変化があっても、この芯はぶらさず突き進んでいかなければいけません。

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