こんにちは、1PAC. INC. の桑原です。
6月にサンフランシスコで開催された「Config 2026」(Figma主催の大規模カンファレンス) に現地往訪させていただきましたので、本稿ではそこで得た桑原視点の気づきや学びをレポートにしてみたいと思います。
※やや長い記事となってしまいましたが、各チャプターの内容は疎結合なので、目次から気になった項目だけでも読んでいただけると嬉しいです!
目次
参加にいたるまで
振り返ると2025年は、「Maker Collective Tokyo」参加 → Makeで「短冊ジェネレーター」制作 →「Autumn Walk」渋谷ビルボード上映 → Figmaイベント登壇など、Figmaによる自分の可能性の拡張が連鎖した1年で、Config 2026 のお声がけをいただいたとき「これは行かねば」と、迷いがなかったような記憶です。

Config2026参加までの1年、やったことを書き出してみた
まずは、渡航のきっかけを作ってくれた方々と、渡航をサポートしてくれた会社やチームに、無限の感謝をお伝えしたいです。
Config本編|デザインの現在地を見に
「Figmaの新機能の発表だけと思ったら大間違いだぞ !!!」という事前情報を得ていましたが、想像以上に多くの視点や視野のセッションがあり、とても刺激が多かったです。その中でも印象強かったいくつかを紹介したいと思います。

Config 2026 会場の様子。とにかくスケール感に圧倒され、人の多さに驚く。
絵とロジックを横断する
Opening Keynoteでは、Code LayersやFigma Motion、Shaders、Weave、Generative Pluginsなど、コードや動きをキャンバス上で扱うための新機能が発表されました。

発表された新機能。詳しい解説はFigma公式サイトへ
発表の中でFigma CEOのDylan Fieldは「Code is material for design. (意訳:コードはデザインの一部)」という言葉が印象的で、「デザイン=絵」という狭義の用法はいよいよ過去になったなあと感じました。
Flash没後、分離してしまった「絵」と「ロジック」を横断でデザインできるプラットフォームが帰還したような、しかしとはいえ、単に昔へ回帰するのではなく、別々に進化してきたデザインとコードが、AIを介して再び同じ制作空間で交差し始めるような気がして、ワクワクを感じました。
優れたUIは縁の下で物語を支える
「The hidden craft of interface design in modern film」は、数々の映画のスクリーンに映る架空UIのデザインを手がけてきたデザイナー、Jayse Hansenによるセッション。

映画Tronのコックピット用のUIデザイン。
Figmaコンポーネントがレスポンシブに作られていてすごい
映画の中のUIであれば作中で「そのUIを操作する登場人物」をユーザと捉えてデザインするのがセオリーと思いきや、Jayseは「これらのUIは映画館でポップコーンを食べている観客のために作られている」と語った。つまり作中のUIは映画の重要な世界観を醸成するものの、観客がストーリーに集中/没入する体験を最優先に考えられデザインされ「引き立て役」であることが重要ということでした。
優れたUIとは、単体で美しい画面を「見せるもの」ではなく「体験を支えるもの」だと改めて認識することができました。
もうひとつ印象に残ったのは、Jayseが子供向けに単純化されながらも雰囲気のあるUIパネルのデザインを得るために、現代作家ジェームズ・タレルのインスタレーションから着想を得たという点。

ジェームズ・タレルの光の表現に着想を得たUIデザインの例
自分も大学生の頃、直島で「光そのもの」によって空間の知覚を作るジェームズ・タレルのインスタレーションを見てからはファンになり、瀬戸内・金沢・バンクーバーなど多くの場所に見に行きました。制作会社のデザイナーとして働き始めた頃は、どこかでデザインとアートを心のなかで切り離してしまっていた自分がいましたが、Jayseがタレルを引用したエピソードを聞いて、それらがいつでも交差し、接続できる事柄ということを再認識し、励みを感じました。
どんなに便利でも人は出番がほしい
「Writing for Humans」は、Anthropicでコンテンツデザインを率いるChelsea Larssonによる、主に「Claude」などのプロダクトにおけるUXライティングに関する話。
印象に残ったのが、もともと「Agent Mode」と呼ばれていた機能を「Cowork」(≒協業) と名づけたエピソード。ユーザーが求めていたのは、自律的に動くエージェントを管理することではなく、自分の能力を広げてくれるツールと一緒に働くことだったからです。名称一つをとっても、機能を体現すれば良いわけでは必ずしもなく、エンドユーザがそれに対しどう接してほしいか(「どのような存在でありたいか」) を名付けるという考え方はとても学びになりました。

「Give users a meaningful role」 (≒ ユーザーが意味ある役割を担えるようにしよう)
終盤に紹介された「Give users a meaningful role」 (≒ ユーザーが意味ある役割を担えるようにしよう) という理念も印象強かったです。これはAIがすべてを置き換えてしまうのではなく「人間が関わる余地 (出番) を残す」という意味合いで語られていましたが、AIの文脈に限らず、体験設計全般においてどんなに機能的に便利でユーザの手間を排除できる状況であっても、人は「自分も関与している (自分の出番がある)」という自覚を得たいものなのだなと考えました。
手を動かすことの楽しさ
Configには、セッションを聞くだけでなく、実際にFigmaを操作しながら学ぶ「Learning Lab」があります。(今年から加わったそうです)

Learning Lab の様子
今回私は、デザインと実装をつなぐワークフローや、Generative Plugins、Shader Effects、Figma Drawを扱うLabに参加しました。機能の説明を聞いていると理解できたように感じますが、実際に触ってみると、思いどおりに動かなかったり、別の使い方を思いついたりします。講師や周囲の参加者と試行錯誤しながら進める時間には、ハンズオンならではの学びと楽しさがありました。
Figma Draw のワークショップ
参加者が好き好きに描いたDrawを寄せ集めている
私が初めてFigmaに触れたのも、2020年1月のDesign Matters Tokyo のFigmaワークショップでした。複数人が同じファイルをリアルタイムで編集する体験が新鮮で、そこから仕事で使うようになりました。
「学ぶ」というインサイトではなく「触ってみる」という小さな体験からエ徐々に可能性が広げられる体験設計が素晴らしいなと感じています。
サイドイベント|街全体がコミュニティ化する一週間
Config開催期間中のサンフランシスコでは、デザインスタジオやテクノロジー企業、クリエイターコミュニティが主催するサイドイベントが、朝から夜まで街のさまざまな場所で開かれて、街全体が一週間のデザインウィークになったように感じました。

今回参加したサイドイベント。
ある場所で出会った人から次のイベントへ誘われ、そこで知り合った人と翌日にConfigの会場で再会する。公式プログラムとサイドイベントが別々に存在するのではなく、人とのつながりを通して連続していきました。
その中でも特に印象に残った体験を紹介します。
AIと「人間らしさ」
Contra LabsとAI Circleによる「Creative Intelligence」では、OpenAI、Quiver AI、Figma、Kreaのメンバーが、AIと創造性について議論しました。

Creative Intelligence at Config co-hosted by Contra and AI Circle · Luma

Creative Intelligence トークセッションの様子
登壇者の一人、FigmaのRodrigo Daviesは、クリエイティブツールの役割を「ユーザーの意図を、できるだけ忠実に形にすること」と話しました。AIが一定の品質を支えることはできても、どこへ向かうかを決めるのは人間です。実際、完成形に対するイメージの強いユーザーほど一度で完成させず、文脈や参考資料を加えながら何十回も試行するといいます。
AIによって増えるのは、完成品ではなく選択肢です。だからこそ、つくる速さ以上に、自分の基準を持って選び続ける力が重要になると感じました。
終盤のQ&Aで、「機械から生まれた、最も人間らしいものは何か」と聞かれたRodrigoが、すぐには答えられず考え込んだ場面も印象に残りました。その後、初期のLLMやFigma Makeで感じた驚きに触れましたが、最先端のAIをつくる本人でさえ「人間らしさ」を簡単には定義できない。その短い沈黙に、AIと創造性を考える難しさが表れていた気がします。
イベント後にはRodrigoへ声をかけ、自分がFigma Makeで制作したコンテンツ等も見てもらいつつ、Figma AIが今回の渡航につながったことを伝えることができました。
速いからこそ「つくる喜び」が大事
「The Honest Design Org」は、Hightouchのオフィスで開かれたサイドイベントです。参加のきっかけは、その日の朝のハイキングイベントで出会ったAllie Vogelでした。会話の中で「夜登壇するからおいでよ」と誘っていただきました。

The Honest Design Org: Hightouch @ Config · Luma

The Honest Design Org |トークセッションの様子
パネルでは、AIによって制作速度が上がる中で、デザイン組織に何が必要になるのかが議論されました。
印象に残ったのは、デザインシステムはコンポーネントやトークンの集まりではなく「チームで共有された判断の集合」だという考え方です。AIによって作る時間が短くなると選択肢が増えるため、何を選ぶか、なぜか、どう説明するかという判断の基準や役割分担が重要化していくという点でした。
Allieは、同僚デザイナーがテック業界を去る際、「自分のデザインしたオリーブオイルの瓶が、実際に棚へ並ぶところを見たかった」と話した例を引き合いに出しつつ、「作ることの喜びまで削減してはいけない」と語っていました。効率だけでなく、つくった実感や手応えを持てる過程まで設計することが、ものづくりの文脈には必要だと感じました。
小さな実験が自分のスタイルになる
Config本編の終了後、tiatで開かれたZach Liebermanのワークショップ「Body Is the Interface」に参加しました。

Body is the Interface workshop (Zach Lieberman tiat) · Luma

Body Is the Interface|Zachによるワークショップの様子
p5.jsと姿勢推定を使い、カメラが捉えた手や身体の動きを、文字や図形、アニメーションへ変換していくプログラミングのワークショップ。
完成形をそのまま再現するのではなく、用意された短いコードを少しずつ改造し、参加者それぞれの表現へ発展させるハンズオンでした。
私も学生時代にはProcessingやリアルタイムメディアに触れておりましたが、仕事を始めてからは、目的を決めずにコードで遊ぶ時間が減っていました。今回あらためて、コードは機能を実装するためだけでなく、考えたり試したりするための素材でもあると思い出しました。
Zachは、長年ほぼ毎日のようにコードによる小さなスケッチを続けています。色や動き、数値を少しずつ変えながら試すうちに、自分なりの方法が生まれ、それがやがてスタイルになっていくという話が印象に残りました。
いきなり大きなものを描くのではなく「小さいトライの積み重ねで自分が見えてくる」というスキームを参考にしていきたいです。
ネットワーキング|世界のデザインリーダーとの交流
Configを中心に「デザインウィーク」化したサンフランシスコでは、多くのデザイナーやデザインリーダーと出会いつながる機会があります。私はこれこそ現地参加の大きな恩恵の一つだなと考えています。
「Civic Tech Meetup」で出会ったFelipe (フェリペ) とはSF滞在中、何度か会う機会がありました。Felipeはブラジルサンパウロ出身で、現在はニューヨークのRunyon Designでデザインリーダーとして働いており、クライアントのブランディングやデジタル表現を手がけています。
会社としてやっていることも、組織の中でのポジションについても自分と似るところが多かったことから意気投合し、お互いにワークスを見せ合ったり、Configセッションのオススメを言い合ったり、感想や意見を交わしたりすることができました。

W杯ブラジル戦から目が離せないFelipe
また「Brex Design Config After Hours」には世界中の様々な組織で活躍しているデザインリーダーが多く集まっており、そこでも一過性の表面的な会話ではなく、お互いのインサイトを等身大で話し関係性を深めることができるのはとても貴重な体験と感じています。
リトアニア出身のEivinasは懇親会で、自身が以前日本を訪れた際のエピソードとして「東京で行ったロボットカフェが印象的」と話してくれた。
聞くにそのロボットカフェは、どこかに居て、様々な理由で外出することが困難な人がロボットを遠隔操作することで接客勤務を行うという形式のものでした。Eivinasが訪問したときは アレルギーが理由で外に出られない人がロボット越しに会話してくれたとのことで、彼自身の経験を聞きながら、東京に住んでいながら知らないことがたくさんあるな(何なら海外の人の方が詳しいことも多い)と感じ、興味を抱き、帰国後に実際に訪れてみました。

Brexのイベントに集まったデザインリーダーたち
ネットワーキングとは、名刺やSNSを交換することではなく、相手の仕事や考え方に興味を持ち、自分のことも伝え、次に会ったときに自然と会話の続きを始められる関係をつくることが本質だと感じました。
今回出会ったデザイナー/デザインリーダーには「また日本行きたい」と言っている人も多いため、自分の会社に招き交流を深めるなどの機会につなげていきたいと思いました。
サンフランシスコその他
デザインとアートの交差
Configの会場であるMoscone のすぐ近くにSF MoMA(サンフランシスコ近代美術館)があり、常設コレクションやマティスの展示を鑑賞しました。
SF MoMAはとにかく巨大で展示規模が大きく、ありとあらゆる美術ジャンルが展示されており、全フロアを順番に見ていると近現代のアートの歴史をたどるタイムマシンに乗っているような気分でした。

SF MoMAの外観とフロアガイド。
フロア別さまざまな企画展があり、現代アートの百貨店のような場所
Google Arts & Cultureによる、マティスの表現を題材にしたインタラクティブな展示も印象的でした。生成AIは新しい画像をつくるためだけでなく、既存の作品を別の角度から見たり、鑑賞者が作品の世界へ参加したりする入口にもなっていました。

Google Arts & Culture が生成AIで作成した
マティスの絵の世界をインタラクティブに体験できるコンテンツ
今回サンフランシスコでは デザインの文脈にアートが引用される例を多く耳にしました。上述の、映画用のUIグラフィックにジェームズ・タレルのインスタレーションが着想につながった例や、Config 2日目の「Designing Math」では エッシャー (数学家でもあり版画家) の平面幾何学とグラフィック表現の連関が語られていたり、Processingなどのジェネラティブアートがセッションの題材になっていたり…と。
UIやWebサイトだけでなく、アートや空間、身体感覚も、デザインを考えるための参照元にすることができ、自分の中で不意に「別ジャンル」としてカテゴライズしてしまっていたものたちが脳の中で合流していくような体感でした。
「透明な運転手」の存在
無人で走行する自動運転タクシーの「Waymo」にも初めて乗りました。

WAYMOタクシーと無人の運転席
同じ無人のロボットタクシーである「zoox」は向かい合う座席しか無いので、いわばロープウェイやモノレールに乗っている感覚に近いかも知れませんが、Waymoの場合は「そこに運転席があるのに居るはずの運転手がいない」という「不在」の状況が強調された構図になっているように感じます。
そこに自分は最初「不気味」という感情を抱きました。
しかし不安は5分で消え去りました。乗車していると社内画面の表示や音声案内、サウンドによる示唆、リラックスさせる車内のアンビエントミュージックなど、Waymoで移動する際の体験がすべて緻密に設計されており、無人でありながら信頼できる何かにエスコートされている気分に不思議となっていく。最終的に何度かWaymoに乗りましたが、無人を楽しむというより「透明な運転手」にナビゲートしてもらう体験というように認知しました。
身の回りにも、セルフレジ、モバイルオーダーなど実際に人が介在しない無人の顧客体験は多く存在しています。しかしこれらは「機械を操作している」という範囲を超えていないような気がします。
AI時代の顧客体験の発達や進化において、Waymoにおける「ゴースト運転手」のように、そこに対話相手が「存在」し、「対話している」という体験を人間に感じさせることは、一つの大きなキーのように感じました。
まとめ|ものづくりの交差点から
今回のConfigでは、Figmaの新機能だけでなく、映画、数学、ライティング、現代アート、自動運転、身体を使った表現など、さまざまな領域からデザインを考える機会がありました。
デザインとコード、人間とAI、アートとテクノロジー、画面と身体、イベントと街。サンフランシスコでは、以前は別々に存在してように感じていたものが、何度も同じ場所で交差していました。
異なる経験やバックグラウンド、国籍を持つ人たちと出会い、話を重ねる中で、自分が考えていた「ものづくり」の範囲も少しずつ広がっていったように思います。
これからは、新しい機能を知識として持つだけでなく、まず手を動かして試していきたいです。小さな実験を続けながら周囲と共有し、AIによって制作を速くするだけでなく、人間にどのような判断や手応えを残すのかも考えていきます。現地で出会った人との会話も、一度きりで終わらせず、これからの関係へつなげていきたいと思います。
サンフランシスコという「ものづくりの交差点」で得たものを、自分だけの刺激として終わらせず、次の制作やチーム、コミュニケーションへつなげていきたいと思います。
