デザインを経営資産にする ―デザインは、「問い」から「共創と対話」へ進化する
こんにちは。
LsizeDesignの井上 大器(いのうえ たいき)と言います。
UXデザイナー/サービスデザイナーとして、企業の事業開発・DX・組織変革の現場を中心に「問いを軸にしたデザイン支援」を行っています。
このnoteでは、デザイン支援の現場で感じたことやお伝えしたいことを発信しています。
僕が大切にしているのは、“デザインを経営資産にする”という視点です。
つまり、見た目を整えるツールや付加価値としてではなく、経営や意思決定そのものを支える思考の装置としてデザインを活かす――そんな考え方です。
この記事では、そんな井上のスタンスや活動について、自己紹介を兼ねてお伝えします。
「デザイン=正解を示すこと」ではない
「赤くしてくれませんか?」
「ボタンを大きくして」
――依頼者からそんな要望を受けたとき、まず考えるのは「なぜそうしたいのか?」ということです。
その背後には、ユーザーの行動、期待、業務フロー、あるいは未解決の課題が必ずあります。
だからこそ、見栄えを整える前に「問い」を立てることが重要です。
それは、ユーザーが抱える違和感かもしれないし、経営者が言語化できていない仮説かもしれません。
僕は、そうした曖昧さを含んだ情報を「問い」として持ち寄り、対話に導くことで意味を共創するプロセスを設計することを仕事にしています。
AI時代が進む中で、UIの役割や情報の接点は大きく変わりつつあります。
だからこそ、ますます重要になるのが「問い」を持ち寄るための設計だと感じています。
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生成AIの普及によって、目に見えるユーザーインターフェースが最小化されつつあります。そんな今の時代、デザインという営みは「正解を示す」ことから「問いを設計する」へと変化しています。
この前提は、AI時代のデザインを再定義する ─ UIがなくなる時代における「意図」と「意味」を共創するUX設計論で論じています。
さらに、「AIの出現でプロトタイピングデザインは不要になるのか? ─プロトタインピングの本質とv0プロトタイプの役割」では、AIと人間のプロトタイピングの違いを明らかにし、人間ならではの「問い」を起点としたデザインワークがどのようなものかを整理しました。
チームを橋渡しする「デザインファシリテーション」
経営と現場のあいだには、仕様書やKPIだけでは埋まらない「対話の空白」が想像以上に存在します。
そこで、両者を橋渡しするための「場づくり(ワークショップやレビュー会)」と「共通言語(構造図や物語)づくり」を担うこともよくあります。
さらに、僕は、デザインを媒介としてチームの対話をファシリテーションする「デザインファシリテーション」を実践しています。具体的には、以下のような効用があります。
- 経営の抽象的な要望を構造やナラティブへ変換し、判断のものさしをチームで共有できる
- 現場の違和感を図解やプロトタイプに落とし込むことで、検証の観点を揃えることができる
- 部門や立場を越えて、同じテーブルで「問い」を出し合える土壌をつくることができる
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デザインファシリテーションの設計思想と実践は、想像のすれ違いを乗り越える方法論 ─デザインファシリテーションで詳しく紹介しています。チームの議論がすれ違ってしまう「評価の非対称」を解体し、対話を導くためのプロセスをデザイナー視点で解説しました。
プロトタイプは「問い」を差し出す装置
デザイナーがつくるプロトタイプの役割は「完成イメージを見せること」ではありません。
むしろその逆で、「問いを生み、対話を促すための仮のカタチ」であると、僕は考えています。
事業の初期フェーズでは、ほとんどの事業は曖昧な仮説です。このときに必要なプロトタイプは、紙芝居のようなストーリーボードや、簡素な画面モックでも十分。
「体験として語り合えるもの」として可視化することが重要なのです。
プロトタイプがあることで、「こんな使い方をする人が本当にいるのか?」「ここで判断が分かれるのはなぜか?」「理想的な体験とは何を意味するのか?」といった「問い」が浮かび上がってきます。
その問いをチームで話すことで、合意形成が進み、仮説が強化され、事業の方向性が具体的になっていくのです。
僕にとって、プロトタイピングとは「完成品を作るため」ではなく、「問いを考えるため」のデザイン行為だと思っています。
そこで対話が生まれることこそ「デザイナーが参画」する意義なのです。
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プロトタイプの役割を詳しく解説しているのが、プロトタイピングデザイナーという仕事 ─ プロトタイピングの完成度とデザインワークの在り方です。「完成度」というキーワードを軸に、プロトタイピングとデザイナーの役割を整理しました。
経営の現場に「デザインの思考」をインストールする
僕が一貫して行ってきたのは問いと意思決定を結ぶ導線づくりです。
これまで、以下のようにスタートアップから大手企業まで幅広いプロジェクトに携わってきました。
- 新規事業の0→1立ち上げ(構想からUIまでの伴走)
- DX領域での業務可視化/体験改善/現場巻き込み
- 企業研修・社内育成(UX、問いの立て方、プロトタイピング)
- 組織横断の共創ワークショップ/合意形成デザイン など
以下のように様々なフェーズ・期間でプロジェクトに関与するなかで、「デザイナー」という職能に求められる役割が広がっていることを実感します。
期間別の関わり方の例
最近では「デザインをどう経営に活かせばいいのか?」というテーマでの講演・研修も増え、「ピンとこない経営層」と「モヤモヤしている現場」のあいだに立って、言葉と構造でつなぐ役割を担っています。
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デザイナーを「思考のパートナー」として迎えるための視点は、デザイナー採用で失敗しないための「思考の軌跡」の見極め方 ─ 共創のパートナーをどう選ぶかにまとめています。
問いを持ち寄り、ともに考えるために
僕がデザインを通じてやりたいことは、正解を示すことではありません。
あなたの違和感や未言語化の思いをきちんと受け止め、一緒に考えること。そのための「問い」を、会話や構造、プロトタイプとして立ち上げていくこと。それが、僕が提供している「デザイン」です。
もし目の前のプロジェクトに違和感や不安があるなら、ぜひお気軽にご相談ください。ちょっと背中を押す、お力になれるかもしれません。「問い」から始める一歩を、共に踏み出せたら嬉しいです。
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本記事の内容にご関心を持っていただけた方や、お仕事のご相談がありましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
- UX設計支援/プロトタイピング支援
- 経営・事業構想のデザインファシリテーション
- 社内研修/デザイン組織づくりのご相談 など
LsizeDesign 合同会社 井上大器(いのうえ たいき)
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プロフィール
井上 大器(いのうえ たいき)
UXデザイナー / サービスデザイナー / ファシリテーター
LsizeDesign 合同会社代表
連絡先:t_ino@lsize.design
facebook:https://www.facebook.com/lsize.design
詳しい経歴:https://www.wantedly.com/id/taiki_inoue
経歴
16歳でデザインを志し、アパレル事業会社・印刷会社・制作会社を経て2014年にメガベンチャー企業へ参画。複数デザイン部署の立ち上げや採用ブランディングを始め、mvno領域、VR領域などの新規事業の立ち上げに従事。その後独立し、DX領域でプロトタイプやコンサルティング、組織設計など数十社で上流工程の支援を行なっている。
活動実績
デザイン顧問、アドバイザーとして、主にデザイン思考浸透、UX設計、UI制作、DX導入などを、企業サイズ・業界業種問わず提供しています。
- ベンチャー企業の0→1支援
- デザイン顧問
- SaaSプロダクトの開発PdM・企画
- SaaSプロダクトのサービスデザイン、UIデザイン
- 事業会社向けDX支援・既存サービス改善
- Webメディア:立ち上げ支援、会員増加施策
- 金融機関向けデジタルサービス開発
- 交通量調査自動化
- 製造業・工場DX:危険予測、エネルギー消費適正化
- 新規事業サービスデザイン:植物工場、自動運転、創薬データベース
- 国内動画配信サービス:事業決済に向けたプロトタイピングデザイン
- 組織立ち上げ・採用支援・教育設計
- 採用ブランディング
- デザイナー採用支援
- エンジニア採用支援
- 行政向けAI教育ワークショップの企画・実施
- 企業向けDX教育ワークショップの企画・実施
- 大学・企業研修での講師
- nests Digital Creative Academy:UIデザイン講師
- 横浜南高校:自動運転ワークショップ授業
- 九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 ストラテジックデザインコース:UX講師
大切にしている考え方
- 「デザインの本質は良い問いにある」
- デザインとは、正解を示すことではなく、問いを投げかけること。
- そして、問いを通じて意味を共創し、「合意」をつくること。
見た目や画面をつくること以上に、「なぜそれが必要か?」「誰に、どんな変化を届けたいのか?」といった問いをチームで共有し、対話を通じて考え方を整えていくことに価値を置いています。
このnoteでは、こうした考え方やメソッドを週1本ペースで発信しています。気になった方は、ぜひフォローいただけたら幸いです。