ゲーム開発でよく起きる「最適化したのに速くならない」問題|プレイヤー体験と処理構造の関係
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ゲーム開発では、処理を高速化してもプレイヤーの体感にほとんど影響しないことがあります。プロファイラ上では数値が改善しているのに、実際に遊んでみると違いが分かりにくい、というケースです。
この記事では、
- なぜ「最適化したのに速く感じない」ことが起きるのか
- 技術的な最適化とプレイヤー体験の関係
- 開発現場ではどのように判断されることが多いのか
という点を、ゲーム開発の現場視点で整理します。
最適化しても体感が変わらない、という反応
以前、Xで「処理をかなり真面目に高速化したが、体感としてはほとんど変わらなかった」という話を書いたところ、同じような経験をしているという反応がいくつかありました。
ゲーム開発の現場では、
- ループを整理する
- 分岐を減らす
- メモリアクセスを整える
- プロファイラでボトルネックを探す
といった形で、コードレベルの最適化を行うことがあります。
そして実際に、プロファイラの数値は改善します。しかし、その結果がプレイヤー体験として分かりやすく現れるとは限りません。
この「数値は良くなったのに体感が変わらない」という状況は、開発現場ではそれほど珍しいものではありません。
表面上の問題と、水面下の問題
この問題を整理すると、次のような構造があります。
表面上の問題
処理が遅い
↓
コードを最適化する
↓
体感が改善するはず
一見すると、この流れは自然です。
しかし実際の開発現場では、次のようなケースがよくあります。
水面下の問題
- 問題の処理がプレイ中にほとんど発生していない
- フレーム時間全体に占める割合が小さい
- プレイヤーの体感とは直接結びついていない
つまり、
「処理が重いこと」そのものより「その処理がどの頻度で発生するか」
の方が体験に影響する場合があります。
ゲームの体感速度は、個々の処理の速さだけではなく、
- どこで処理が走るか
- どの頻度で起きるか
- プレイヤーがそれを知覚するか
といった構造によって決まるためです。
処理を速くするより「起きにくくする」
以前関わった現場でも、似たようなケースがありました。
あるゲーム中の処理を、かなり真面目に最適化したことがあります。
- ループ構造を整理する
- 分岐を減らす
- プロファイラを見ながらボトルネックを削る
という形で調整した結果、数値としては確かに改善しました。
ただ、実際にプレイすると体感としては
「言われてみれば少し速いかもしれない」
という程度でした。
そこで発想を少し変えて、プログラムをさらに詰めるのではなく、企画側で“その処理が頻繁に走らない流れ”に変更するという調整を行いました。
たとえば、
- プレイヤーの行動導線を変える
- イベント発生頻度を調整する
- 処理が集中する状況を減らす
といった形です。
すると結果として、コードの最適化よりもプレイヤー体験の改善効果ははるかに大きくなりました。
技術的には「処理を速くしたわけではない」のですが、プレイ体験としては明確に改善したわけです。
なぜこの構造が生まれるのか
このような状況が生まれる理由は、ゲームというシステムの性質にあります。
ゲームは、
- プログラム
- データ
- 企画
- プレイヤーの操作
が複雑に組み合わさって成立しています。
そのため、体験の質は「コードの速さ」だけでは決まりません。
むしろ、
- どの処理がどのタイミングで走るのか
- プレイヤーがそれを体感するか
- 遊びの流れがどう設計されているか
といったゲームデザイン側の構造が、体感に大きく影響します。
このため、エンジニアリングの最適化が重要である一方で、企画や設計の変更の方が効果が大きい場面も少なくありません。
私が判断するときに見ている軸
こうしたケースに出会うとき、私は次のような軸で判断することが多いです。
- その処理はプレイヤーが体感できる場所にあるか
- フレーム時間の中で本当に支配的な要素か
- 構造を変えた方が影響が大きくないか
つまり、
「速くするべき処理なのか」
それとも
「起き方を変えるべき処理なのか」
という視点です。
どちらが正しいという話ではなく、ゲームではこの二つのアプローチを行き来しながら調整していくことが多いと感じています。
まとめ
ゲーム開発では、コードの最適化が重要であることは間違いありません。
ただし、体験の改善という観点では、
- 処理速度
- 発生頻度
- プレイの流れ
といった複数の要素が絡み合っています。
そのため、
「処理を速くする」より
「その処理が起きる構造を変える」
方が効果的なこともあります。
このあたりを整理して考えておくと、最適化にかける時間や、企画との調整の方向が見えやすくなることがあります。
現場でよく見かける構造として、ひとつの視点として共有しておきたいと思いました。
おわりに
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