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インタビューVol.2「“苦労”をやめたら見える世界が変わった」どんな自分も変化できる/ニート講演家・矢菜樹孝明(中本孝明)

大阪を拠点に活動するニート講演家・矢菜樹(やなぎ)孝明(中本孝明)氏。2020年5月に電子書籍「ドMは最強の法則」(出版社:まんがびと)を出版。同年9月22日(火)には、サンクチュアリ出版が主催するイベントで自身初の東京講演が開催予定だ。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの矢菜樹孝明(中本孝明)氏だが、実はとても消極的で自己否定の強い人間だったという。

そこで今回は、自身が経験した数奇な体験とともにターニングポイントになった出来事、東京講演への意気込みについても伺った。

「僕はめちゃくちゃ運がいい」矢菜樹(中本)氏の壮絶な人生


矢菜樹孝明(中本孝明)氏の人生を一言で言い表すとしたら、まさに「壮絶」のひと言に尽きる。彼の人生全てを語るには、このスペースだけではとても足りない。ここでは、その一部をかいつまんで紹介する。

Twitterのプロフィールでも掲載されているが、虐待・いじめ・パートナーからの逆DV・ホームレス・記憶喪失……。矢菜樹(中本)氏が経験した事柄は、一人の人間が体験するには過酷すぎるものばかりだ。しかし、彼はそれらのことを「僕はめちゃくちゃ運が良い」と笑う。

「僕が経験してきたことを、たとえば一人の人が全て体験することって、なかなかレアだと思うんですよね。そういう考えに至ったとき、あぁ僕って運が良いんだなと考えられるようになりました」

そして、彼はこうも話した。

「皆が思っているような平々凡々な生き方は、世の中には存在しないかもしれない。さまざまな経験をしてきた中で、僕は『普通』というのが一番難しい生き方なんじゃないかと感じています」

数奇で壮絶な人生を運が良いと思えるようになるまでに、どんなことがあったのか。そこには、いくつかのターニングポイントがあった。

「つまらない男ね」目が覚めた看護師の一言

矢菜樹(中本)氏は20歳の頃、バイク事故で両腕骨折し、入院している。自由に動けない入院生活の中で、彼は今の考えに至る転換点を迎えた。

入院するまで、出会う人すべてから「大変な苦労をしてきたんだね」「壮絶な人生を送られてきたんですね」といった同情ばかりされていたという矢菜樹(中本)氏。気づかぬうちに、「自分は世界一不幸な人間」というレッテルを自分に張っていた。

あるとき、入院先の看護師が矢菜樹(中本)氏に同情した。それは、これまでとは違うものだった。

「若いんだから、早くけがを治して外で遊んだり、色々としたいことがあるでしょう」

この言葉に彼は腹立たしさが込み上げた。若いからなんだというのか、自分は不幸な人間なんだから、もっと可哀想がれよ!と。自分がこれまでに送ってきた壮絶な人生について、看護師に叩きつけるように言葉を浴びせたのだという。

ところが、看護師は予想外の言葉を返してきた。

「あんた、ほんとつまんない男ね」

これまで同情してくれる人しか身の回りにいなかった矢菜樹(中本)氏にとって、看護師の言葉はあまりにも辛辣で心をえぐるものだった。だが、そのおかげで目が覚めた。

「過去にあった不幸や出来事は、全部過ぎたこと。過ぎたことは全て体験なんだ。今まで何があっても生き残って乗り越えてこられた。つらいとか苦しいとかは全部、自分の思い込みなんだ」

この答えに辿りついた矢菜樹(中本)氏は、それ以降「“苦労した”って言葉を使うのをやめよう」と心に決めた。

「原点は俳優・岸谷五朗」見て見ぬふりしていた夢


今でこそニート講演家として活動している矢菜樹(中本)氏だが、以前の自分は夢をずっと見て見ぬふりしていたという。消極的で、自己否定感情の塊だった彼は、憧れがあっても「自分には無理だ」と諦めていたのだ。

自分に期待できない大人になった背景には、自身の身に起きた苦難の数々があった。そのなかでも子供時代の虐待やいじめによる心の傷は根深いものだった。

小学校時代に始まったいじめは、終わりが見えぬまま中学生になっても続いた。その救いになっていたのが、数少ない友人とラジオだった。

姉の影響で聞き始めたラジオにどハマりし、中学から高校まで、俳優・岸谷五朗氏がDJを務めるラジオ番組「岸谷五朗の東京RADIO CLUB」(TBSラジオ)に夢中になったという。

岸谷氏が舞台俳優として活躍されていることに憧れ、いつしか「舞台っていいなぁ」と思うようになっていった。

だが、夢は夢のまま、その後、およそ30年にわたって胸の奥にしまわれた。夢が現実味を帯びるようになってきたのは、40代になってから。気持ちが変わるきっかけの一つになったのが、自身が「宇宙一の嫁ちゃん」と呼ぶ奥様の存在だ。

「人生の価値は自分で決めていい」諦めなかった奥様の存在

奥様とは同棲を経て結婚し、2020年6月に1周年を迎えたばかり。『ニート講演家・矢菜樹孝明(中本孝明)』は、奥様と矢菜樹(中本)氏自身の多くの気づきによって形作られているといってもいい。

矢菜樹(中本)氏は、彼女との関りの中で多くのことを学んだという。その一つが「自分の人生に価値があるかどうかは自分で決めていい」ということだった。

恋人時代、奥様とは10回以上も別れと復縁を繰り返している。その原因になっていたのは、矢菜樹(中本)氏自身の心の奥にヘドロのように蓄積した自己否定感情だ。

「自分と一緒にいても幸せになれない」

そう言って、当時恋人だった奥様を実家に帰らせたこともあるという。だが、奥様は諦めなかった。矢菜樹(中本)氏を説得し、決して見捨てることはしなかったのだ。

そんな奥様の印象について、矢菜樹(中本)氏に聞いてみた。

「彼女もいろんな経験をしてきている。けれど、すごく受容力が高くて、相手を認めよう・好きになろうという気持ちが誰よりも強い。一般的に考えたら相手を恨みそうな場面でも、彼女は『この人のおかげで、今はこうなれた』と言い切ってしまう人。そんな彼女を前にしていると、簡単に人をすぐに恨んだりするのが恥ずかしくなりますね」

そうした奥様の粘り強い愛情もあり、矢菜樹(中本)氏は少しずつ変化していった。

「あなたの体験も貴重なのだと伝えたい」講演家としての使命


壮絶な人生を体験しながらも、それを乗り越えてきたことを誇らしげに話す矢菜樹(中本)氏。講演家になるのは、自身曰くとても自然な流れだった。

岸谷五朗氏に触発されて舞台への憧れを抱いていた矢菜樹(中本)氏は、40代を迎えて炎の講演家と自らを名乗る鴨頭嘉人氏の存在を知る。鴨頭氏は、愛媛県出身の講演家で、Youtubeにチャンネルを持つYoutuberでもある。

そんな鴨頭氏の動画を視聴するうちに、矢菜樹(中本)氏は気づいた。

「僕の経験がレアなものなら、それをみんなに伝えて元気になってもらいたい」

そうして矢菜樹(中本)氏は『ニート講演家』として歩き出した。もちろん、これまで一介の会社員をしていた彼が、すぐに講演家として活動できるほど世の中は甘くはない。

まずTwitterやFacebook、Youtubeなどで、少しずつ自分の経験を伝えることを始めた。すると、少しずつ「矢菜樹さんの言葉で元気になりました」という反応が返ってくるようになっていった。そのコメントに嬉しさがこみ上げたと話す。

「僕の経験を伝えることで、『そうか、そういう考え方もあるんだな』『つらい体験も、そういう乗り越え方があるのか』と感じてほしいんです。自分が持っている体験って、みんな、それが貴重なものとは思えない。隣の芝生は青いって言葉がありますけど、経験についても同じです」

自身を振り返り、矢菜樹(中本)氏は続けた。

「お互いに理解が及ばないのは、経験を伝え合わずに表面ばかりを見てるから。こんなことは人に知られたくない、怖いっていう思いがあると、自分を見せられない。もっと深く話し合えば分かり合えるはずなのに。僕はその可能性を信じたいんですよね」

その思いを胸に、矢菜樹(中本)氏は今日も講演家として発信を続けている。

「トリプルwinでありたい」東京講演への意気込み

2020年9月22日(火)に自身初となる東京講演を控えて、矢菜樹(中本)氏に意気込みを聞いてみた。

「出版社・参加者・講話者みんながトリプルwinになるような講演をしたいですね。せっかく会場に来てもらう参加者さんには、少しでも「自分を認められる」きっかけを持ち帰ってほしいですね」

矢菜樹(中本)氏は、日本人は自分を認められない人が多いのではないかという。子供の頃は毎日何かに挑戦していたはずが、大人になるにつれて諦めが先に出る。年齢だったり、親のためだったり、パートナーや子供のためだったり。裏を返せば、それらは「何かのせい」や「誰かのせい」になっている。

「もっと自分のために生きられる環境が日本に広がれば、今よりもずっとみんなが生きやすくなるはずなんです。だから僕は、参加者さんに『自分が本当にやりたかったこと』『本当に求めていたこと』に気づくきっかけ、夢をかなえるためのツールとして僕の存在を使ってもらいたいと考えています」

■矢菜樹孝明(中本孝明)さんプロフィール


虐待・いじめ・閉鎖病棟で3年間の入院生活・逆DV・離婚後出産300日問題(無戸籍児問題)・住民票を抹消されホームレス生活・解離性権謀による2年分の記憶喪失ほか、貴重な経験を積み重ねてきたことで「どんな人生も諦めなければ必ず再生できる」と確信。

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電子書籍「ドMは最強の法則」(出版社:まんがびと


(画像=矢菜樹孝明(中本孝明)さん、Unsplash/インタビュー・文=浜田みか)

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