書籍【パーフェクトな意思決定~「決める瞬間」の思考法】読了
その場で決められず「検討します」と返事することは最も恥ずかしい行為。決めるのは簡単なようで実は難しい。
本書の内容は、一貫して「あなたが決めろ」と説く内容だが、現代は特に「決めること」が出来ない人が多い。
若手が将来マネジャー職になりたくないと言っているのも、この「決めること」から逃げたいことが一つの要因だろうと思う。
なぜこんなに決めることが難しい行為になってしまったのか。
社会が複雑化したことで、唯一の正解が出しにくくなったことは、確かだと思う。
この考え方も実はおかしな話で、「唯一の正解」があるのであれば、誰が意思決定しても同じ答えになるはずじゃないか。
それではなぜ昔も、意思決定する人を分けていたのか?
判断には責任が伴う訳で、そういう意味で、例え同じ答えであったとしても、平社員やマネジャー職や社長が各々の立場で「結果同じ答えにも関わらず」判断していたということだろう。
(この行為を「判断」と言ってよいのかどうかも、疑問の余地はあるのだが)
意思決定に責任が伴うのは、昔も今も同じことだ。
しかしながら、昔と今とでは状況が大きく異なっている。
今の時代は、とにかく複雑で不確実だ。
「唯一の正解」どころではなく、どんな選択であっても、メリット・デメリットが存在して、自分たちにとって「最適解は何なのか」という判断基準で意思決定をする以外に方法がない。
だから悩む。A案もB案も、何ならC案も、それぞれ「アリ」だし「ナシ」だからだ。
昔は結果的に「唯一の正解」に収束されることが分かっていたから、責任の重い軽いはあったとしても、中間管理職のマネジャーは気が楽だったのだろう。
今はそんな状態でないために、特にマネジャー職は悩んで決められなくなってしまう。
社長ならば全責任を負っている立場なので、決めるしかない。
平社員ならば、責任が非常に軽いため、決める側になることはほとんどない。
課題なのはマネジャー職なのだろう。
決めたいが、自信がない。
その割に、責任はそれなりに重い。
だから今は、マネジャー職が意思決定することがしんどくなっている。
ついつい「検討します」と持ち帰ってしまいたくなるのも、すごく理解できる。
しかし本書では「それでも意思決定せよ」と厳しい言葉で説く。
もし選択に失敗したとして、責任を取らされるとしても、そこまで酷いことにはならないからだ。
大きなミスをしたのならそれは問題だが、ミスではなく「判断した結果、失敗だった」ということであれば、それは会社の機能として許される範囲のはずだからだ。
決められた決裁範囲の中で判断しただけなので、必要以上に重い責任を負わされることは、普通の会社であればあり得ない。
給与の評定などは一時的に下がるかもしれないが、そんなことは一時のことであるし、その内周囲も忘れるくらいのことだろう。(概ねそういうものだと思う)
だからこそ論理的に考えてみても、マネジャー職が意思決定をしないで先延ばしすることは、意味がないということなのだ。
周囲からアレコレ言われることが嫌であれば、それこそ決断する立場から退くしかないが、それで万事が解決するとは到底思えない。
決断する権利を有していることは、それだけで主体的である。
逆に、権限を持っていなければ、決定されたことを実行するだけの、受動的な立場でしかない。
そういう状態を好む人もいると思うが、本当にそれでよいのだろうか。
物事を自分の力で、自分の考えで決める方が、間違いなく良いことではないか。
もしマネジャー職になりたくないと思っていたとしても、こんな風にポジティブに考えていくことが大事なのだと思う。
本書にも記載されているが、分からなくて迷った時は「勘」に頼って判断してよいのだという。
これも本書を読み進めていく内に、非常に腹落ちした。
「勘で判断する」とは、「今までの経験則で判断する」ということに他ならない。
コインの表裏で判断することは「勘」ではない。それは「運」だ。
「勘」の場合は、きちんとメリットデメリットを考えて、それでも判断がつかない場合の時だ。
どちらに転んでも、良し悪しがあるのだから、決めていいということ。
逆に、決めるしかないということ。
その決裁権限を持っているのが、マネジャー職ということなのだ。
(もちろん金額の多寡や内容にもよる)
これには説得力がある。
会社ではさすがに「勘で決めた」とは言えないだろうが、物は言いよう。
その言い方も指南してくれているが、「メリットデメリットの双方あるが、自分の経験則でA案だと判断した」と正々堂々と言うことは、正しいと思う。
そのためにも勘を磨かなくてはいけない。
「経験がないからマネジャー職になりたくない」と言う人もいるが、当たり前過ぎて、突っ込みたくなってしまう。
マネジャー職にこれからなるのだから、経験があるはずがない。
前述の通り、平社員の時はほとんど決断する立場になかったのだから、余計に「決めた」という経験を過去に求めるのには無理がある。
時には失敗しながら、それでも判断していくしかない。
失敗したら、そこで全て終了ではなく、次の機会に活かせればいい。
失敗を恐れず、小さなことから「決めること」に慣れておくことが大事なのだ。
本書では「情報不足・即断即決を避けよ」と、テクニカルな面も説いている。
意思決定の精度を高めるためにも、メリット・デメリットを冷静に分析できる状態にはしておきたい。
「決めること」から逃げなくて済むように。
こういう心構えでいられればと思っている。
(2025/1/12日)