書籍【絶対成果の出るオドロキの社員研修】読了
私自身、会社の中で研修担当を約4年間超担当した。
グループ内の関連会社同士が合併してできた会社のため、過去の様々な文化をどうやって新しい文化にアップデートしていくかが一番の課題だったのを思い出す。
合併前は比較的規模が小さな会社ばかりだったために、定期的な社内研修を行っていない会社がほとんどだった。
なんと「入社以来一度も研修というものを受講したことがない」という社員が多かったために、研修自体に対する反発も大きく、まずは出席をお願いするところから始めるという状況だった。
研修を全くやらずにどうやって社員を育成していたのかと思ってしまったが、先輩からのOJTだけで仕事を習うということが当たり前の慣習だった。
これは日本国内の中小企業であれば、どこも似たような状況だったのかもしれない。
どの先輩に教わったかで、ビジネスパーソンとしての運命が決まると言っても過言ではない。
今風に言えば、配属ガチャならぬ、「先輩OJTガチャ」そのものである。
もちろん目の前の仕事のやり方は先輩から伝承されるとしても、「ビジネスの普遍的な基礎」は誰から教わるというのか?
どんな仕事においても必要とされる、社会人としての当たり前のスキルやマインドについても、その先輩が手取り足取り全て教えてくれるというのか?
部門単位の特徴的な仕事は、おそらく明文化されていることも少なく、諸先輩方の暗黙知に頼ることも多いだろう。
体系的に教わるというよりは、仕事を進めながら都度学んでいくイメージかと思う。
これはこれで否定するつもりもない。私自身同じように諸先輩方から教わったのも事実だ。
しかし「ビジネスの普遍的な基礎」については、先輩方から正しく教われたのか?
今でこそ「普遍的な基礎」については「ポータブルスキル」という言葉で言語化された。
そもそも、これこそ様々な書籍や研修などで、とっくに体系化がされているものでもある。
教えてもらうよりも、「これらの項目を、自ら学べ」ということを先輩が後輩に指導すべきだ。
私自身はまさに先輩にこの言葉を言われ、大量の基礎スキルを浴びせられたが、今となれば恵まれたとしか言いようがない。
実際にスキルを取得することも大切なのだが、「学ぶこと」を習慣化させることの方が、効果としては大きいように感じる。
習慣化されないままに40歳・50歳を迎える人もいると思うが、後から意識を変えるのは相当に難しい。(まさに当社の社員たちはこの状況であった)
さらに言えば「学び続けること」は、もっと難しい。
だからこそ、本当に大事なことなのだと思う。
当然、全員が全員、不勉強という訳ではない。
自主的に学習している人は確かにいるし、意欲が高い人もいる。
目の前の仕事を一生懸命先輩から学んで、エース社員として活躍している人もいる。
ただ、社内で全体を見回してみると、レベル感がバラバラなのである。
それこそ「普遍的な基礎」がレベルとして揃っていないために、部門を超えたやり取りをしようとすると、途端に噛み合わない部分が出てくるのだ。
これは役員間、部長以上の幹部レベルでも同じことが起きていた。
(合併会社の「あるある」なのかもしれない)
本人は丁寧なつもりかもしれないが、社内文書にも関わらず、文中に妙な敬語が使われていたり。
(誰に対しての忖度なのか?)
稟議などの申請書に、なぜか個人的な感情が込められていたり。
(稟議書に「必ず成功すると思います」などと書く必要あるのか?)
箇条書きで簡潔に記載する方法を習っていないために、一文が長過ぎ、何度読み返しても内容が意味不明なことが多い。
(相手に伝わるように、文章をきちんと書くのは、本当に難しい)
Excelなどの表計算についても、信じられないことに、簡単な関数すら使用せずに、数字がベタ打ちになっていることが、今でも起きている。
(当然だが、そんな状態では計算間違いが頻発する)
上記は極端な例かもしれないが、この令和の時代でも、現実的に起きている話である。
ほとんどの書類は正しく記載されているが、例え100件中1件でも上記のことがあると、「何とかせねば」と思ってしまうのだ。
スキル不足の人は、「ITが苦手」など、関係ない言い訳で逃げようとする。
そして「できなくてもしょうがない」という一括りで済まそうとするのであるが、そういう話ではない。
もちろん、今ではそれなりのITリテラシーがないと仕事にならないのも事実。
苦手な人たちに、SNS運用・データマーケティング・ブロックチェーン・生成AIなどが伝わる訳がなく、逆に「一体あなたは何の仕事ができるのですか?」と聞き返したくなってしまう。
現場があって、身体を動かすことがメインの仕事であればそれでもよいかもしれない。
しかし、そんな身体を動かす仕事も、近い将来AIやロボットに代替されていくと言われている。
代替が起きた瞬間に職を失う訳だから、その前に準備しようというだけの話である。
さらに言えば、ホワイトカラーの仕事の方が、AIに代替される速度は圧倒的に早い。
煽るつもりはないのだが、会社が研修プログラムを用意してくれるという余力のある内に、さっさと学んだ方が本人にとっても得なはずである。
一方で、今の時代だからこそ「普遍的なスキル」を取得することが、より複雑化していると感じてしまう。
例えば、多少無茶苦茶な日本語の指示でも、生成AIはかなり意図をくみ取って文章を生成してくれる。
そんな時代に「相手に伝わるような文章をきちんと書く」というスキルは本当に必要なのだろうか。
この問いに対し、一人一人がどういう結論を出すのか。
一体、何をどう学んでいけばよいのか。
今では、オンラインセミナーやeラーニングなど手軽な方法もあるために、学びのハードルは相当に下がっているように思う。
提供する側も非常に切磋琢磨しているため、内容を理解しやすくするための工夫がされている。
この状況にも関わらず、社員のスキルが向上しているとはなぜか思えずに、モヤモヤしている自分がいる。
研修ですべての能力が身に付くとは、確かに思えない。
個人の自主学習だけに頼っても、それこそスキルレベルがバラバラになってしまう可能性もある。
どうすれば最小のコストで、最大の効果を出せるか。
今よりももっと効果的な研修を、探し続けなければいけないと思っている。
(2025/5/15木)