日銀新指標とIMFの利上げ勧告。金利・債務・GDPの国際比較 日本の現在地 お金③
4月初旬、日銀はエネルギーなどの補助金等の影響を取り除いた「独自のコアCPI」と、中立金利・需給ギャップの再推計を公表した。
IMFからも、日本の財政構造を踏まえた利上げ勧告が出ている。
「年度も変わったことですし、ちょっくら現状確認といきますか。」
本稿では、経済の状態を「基礎代謝」「贅肉=BMI(太り具合)」「運動量の推移」の3つに置き換え、以下の指標で比較する。
上記項目は以下の指標を用いて見ることにする。
- 「基礎代謝」=政策金利と長期国債金利(10年国債)の乖離
- 「贅肉=BMI」=発行国債残高の対GDP比
- 「運動量の推移」=名目GDPの基軸通貨換算(米ドル)
各指標は、日本・米国・ユーロ圏(ドイツ)の3銘柄を用いる。
①政策金利/10年国債金利
(2026年4月11日時点)
- 日本 : 0.728%/2.438%
- 米国 : 3.75%/4.321%
- ドイツ: 2.15%(ECB)/3.054%
政策金利は短期金利なので、10年国債と単純比較はできないが、(政策金利ー10年国債金利)の差を見ると、日本は1.7%と突出して大きい。他の2国は1%未満にとどまっている。
これは日本国債が市場で低く評価され、割安に取引されていることを意味する。
一方で、国内金融機関の金利は、政策金利に引っ張られ全体として低金利にとどまる。
つまり、貸すときは低金利、借りるときは高金利という、体力を消耗しやすい構造になっている。
人間の体に置き換えるなら、「老化のスピードに対して代謝機能が追いつかず、体が年齢以上に弱っていく」ようなものだ。
同じ年齢でも、体質によって老化の進み方が違うように、日本は他国よりも疲れやすく、回復しにくい体質になりつつある──そんな状態だと言える。
政策金利と10年国債金利の比較
②発行国債残高(対GDP比)
(参照:世界経済のネタ帳 - 世界の経済・統計 情報サイト)
日本:約 236%
➡ 世界最高水準の債務比率。ただし国内保有が多く、危機は表面化しにくい。
米国:約 122%
➡ IMF基準では「危険水域(100%超)」に入り、金利上昇が財政を圧迫。
ドイツ(ユーロ圏代表):約 63%
➡ 主要国の中では財政健全性が高いグループ。
この指標は収入に対する借入額を示す。
つまり一切の支出が無い状態を仮定した場合、ドイツが半年ほどで借金を完済するのに対し、日本は2年以上の期間を要することを意味する。
本稿の比喩に則ると、贅肉を落とすダイエットに要する期間のようなものだ。
この比較からはドイツ=健全、アメリカ=やや不健全、日本=不健全という構図が見えてくる。
国債発行残高の対GDP比
つぎに過去五年の経済成長率の推移を実質GDP(米ドル換算)で見ていく。
③経済成長率推移(米ドル換算)
(参照:世界経済のネタ帳 - 世界の経済・統計 情報サイト)
◇日本
名目GDP(USドル)
- 2020:5,054
- 2021:5,039
- 2022:4,263(円安)
- 2023:4,204
- 2024:4,019
- 2025:4,280(推計)
ドルベース成長率(年次)
- 2021:−0.3%
- 2022:−15.4%
- 2023:−1.4%
- 2024:−4.4%
- 2025:+6.5%(推計)
◇アメリカ
名目GDP(USドル)
- 2020:21,375
- 2021:23,725
- 2022:26,054
- 2023:27,811
- 2024:29,298
- 2025:30,616(推計)
ドルベース成長率(年次)
- 2021:+11.0%
- 2022:+9.8%
- 2023:+6.7%
- 2024:+5.3%
- 2025:+4.5%(推計)
◇ドイツ
名目GDP(USドル)
- 2020:3,938
- 2021:4,358
- 2022:4,204(ウクライナ危機)
- 2023:4,564
- 2024:4,684
- 2025:5,014(推計)
ドルベース成長率(年次)
- 2021:+10.7%
- 2022:−3.5%(ユーロ安)
- 2023:+8.5%
- 2024:+2.6%
- 2025:+7.0%(推計)
名目GDP推移(米ドル換算)
米ドルベース成長率の累積推移
名目GDPを米ドル換算した「国際的な経済規模」の推移を見ると、3国の体力差がさらに鮮明になる。
日本は2021年の約5兆ドルから2024年には約4兆ドルへと大きく縮小し、4年連続でマイナス成長となった。
なお、日本のドル換算GDPは2025年に一時的に反発しているが、これは石破政権発足後の円高方向への修正が主因であり、国内の実質的な成長が急回復したわけではない。
これは実質GDPが横ばいである一方、円安によって国際的な経済規模が急速に縮んでいることを意味する。
一方、米国は2020年以降、毎年5〜11%の高い名目成長を続け、2025年には30兆ドルを超える見通しである。
ドイツは2022年にユーロ安で一時的に縮小したものの、その後は回復し、2025年には5兆ドルを超える推計となっている。
この比較から、日本は「成長しないうえに通貨価値が下がり続ける国」であり、米国は「成長力で規模を拡大し続ける国」、ドイツは「財政健全性と一定の成長を両立する国」という構図が浮かび上がる。
購買力平価(PPP)という指標もあるが、今回はあえて「名目GDPのドル換算」を採用した。 PPP は物価水準を揃えて各国の“生活圏での筋肉量”を比べる手法だが、実際には次のような問題がある。
まず、国ごとの環境差が大きすぎる。
中国やフランスのように国内格差が大きい国では、国家単位で平均化したPPPは実態を捉えにくい。
次に、バスケット(多様な品目の集合)の内部整合性にも無理がある。 サービス価格や外食価格は国ごとの差が極端で、同じ品目でも比較が成立しにくい。 たとえばカット料金は日本1500円〜、パリ1万円〜、ベトナム500円〜。 ビッグマックは日本約500円、米国900円、スイス1200円と大きく開く。 「同じ商品を入れているから比較できる」という建前とは裏腹に、実際には品目ごとの乖離が大きすぎる。
そして、PPPには「地の利・不利」が強く乗ってしまう。
ケニアでサッカー大会を開けば北欧勢がコンディション調整に苦労するように、PPPにも地域特性によるバフ・デバフがかかる。 そのため、国際比較の基準としてはどうしても歪みが残る。
「実質GDPの米ドル換算」での指標を探したが見つからない。名目GDPを米ドル換算した指標を用いた理由はこれに尽きる。
④まとめ
以上、基礎代謝(金利)・贅肉量(国債残高)運動量の推移(GDP推移)をみてきた。
たしかに3つの指標全てにおいて日本は弱体化している。
名目GDPをドル換算で比較すると、日本は2025年時点で約4.3兆ドル、アメリカは約30.6兆ドル。 すでに日本の経済規模はアメリカの約8分の1にまで縮小している。
依然として世界第5位の経済規模ではあるものの、 かつて上位を独占していた「企業の時価総額ランキング」でも入るのはトヨタ一社。 一人当たりGDPも OECD の中で下位に沈み、 最盛期には世界GDPの1/6を担っていた日本も、今や数パーセントに過ぎない。
しかし、ここで声を大にして言いたいのは「希望が無いわけではない」という事だ。
日本の基礎体力は弱っている。
しかし、すべての分野が衰えているわけではない。
むしろ、世界の最先端を走っている領域も確かに存在する。
日本発であるへブロスカイト太陽電池や人工ダイヤのパワー半導体への活用研究では日本の技術は最先端を走っていると言える。
まだまだ、小さなマーケットではあるが、こういう分野で他国に先んじる地位を確立していくことが活路になるかもしれない。
現状は厳しいかもしれないが、まずは状況を正確に認識して、勝ち筋を見出していくことが肝要と考える。
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」
という先人の言葉をもって結語とする。