学会発表と受賞,VRの発展
1. はじめに(Introduction)
こんにちは,福知山公立大学 情報学部の山口です. 普段は橋田光代研究室にて,「情報技術で人の体験をどう豊かにするか」をテーマに研究を行っています.
今回は,2025年夏に開催されたエンタテインメントコンピューティングシンポジウム(EC2025)にて,私が開発したVRシステム『CatcherX』が一般セッション優秀賞をいただいた話をさせてください. 単なる開発記録ではなく,「エンタメを工学する」とはどういうことか,私の視点を少しだけ共有できればと思います.
2. なぜ「キャッチャー」なのか?(The "Why")
私は大の野球好きであり,同時に様々な野球ゲーム(パワプロやプロスピ等)を遊び倒してきました. しかし,いちゲーマーとして常に感じていた「物足りなさ」がありました.
それは,「守備」の要素です. 既存の野球ゲームの多くは「打撃」や「投球」にフォーカスが当たっており,守備,とくに「キャッチャー」というポジションは,投球操作の付属物扱いであったり,オート処理されたりと,ゲーム内ではかなり不遇な扱いを受けています.
「扇の要とも言われるキャッチャーが,これだけでいいのか?」 「あの投手との駆け引きや,ボールを止める泥臭いかっこよさは,もっと体験として深められるはずだ」
そして何より,私自身がキャッチャーというポジションを心から愛しているからこそ,「キャッチャーが主役になれる守備コンテンツ」を自分の手で創り出したい. そんな「愛」と「既存コンテンツへの反骨心」が,開発の原動力でした.
3. 技術的な挑戦とこだわり(The "How")
開発にはUnityを使用しました. 一番の課題は「リアリティと爽快感のバランス」です.ただ物理演算でボールを飛ばすだけでは,ユーザーは「怖い」と感じたり,うまく捕れずにストレスを感じたりします.
- 視覚的工夫: 投球の軌道をVR空間でどう認識させるか.
- 体験的工夫: 捕球成功時のエフェクトや音の同期.
- ハプティクス(触覚): コントローラーの振動を制御し,「重い球を受けた」錯覚をどう脳に与えるか.
これらを調整するために,何度もプロトタイプを作っては被験者に体験してもらい,「気持ちいい」と感じるパラメータを探り続けました.コードを書いている時間と同じくらい,「体験」と向き合っていたと思います.
4. シンポジウムでの評価(The Result)
迎えたEC2025当日. 多くの研究者や学生がひしめく中でデモ展示を行いました. 不安もありましたが,体験してくださった方々から「うわ,今の本当に手ごたえがあった!」「これなら野球未経験でも楽しい!」という声を直接いただけた瞬間は,何にも代えがたい喜びでした.
結果として,その新規性と完成度を評価いただき,一般セッション優秀賞を受賞することができました. 技術的な実装力だけでなく,「ユーザーを楽しませる」というエンタテインメントの本質を評価いただけたことが,私にとって大きな自信となりました.
5. これからやりたいこと(Future)
この経験を通じて,私は「技術は,人の心を動かすためにある」と再確認しました. コードを書くことは手段であり,目的は「その先にある体験」を作ることです.
現在は,この経験を活かし,より広いフィールドで「クリエイター」や「ユーザー」を支える仕事がしたいと考えています. VR/AR技術はもちろん,日々の業務を効率化するツール開発(研究室では備品管理アプリ『Monono』も開発・運用中です)など,「技術の力で,面白いことをもっと加速させる」. そんなエンジニア(兼プランナー?)を目指して,現在は就職活動中です.
「ちょっと話を聞いてみたいかも」と思ってくださった方,ぜひオンラインでもお話ししましょう! 野球の話でも,技術の話でも,Vの話でも大歓迎です.