クラウドネイティブ開発で得た3つの教訓
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クラウドネイティブ開発で得た3つの教訓
――変化に強いシステムを支える「設計思想」と「文化」
ここ数年、オリエンタルヒルズでは複数のプロジェクトでクラウドネイティブアーキテクチャを採用してきました。
マイクロサービス、コンテナ、IaC(Infrastructure as Code)、そして継続的デリバリー。
これらは単なる技術トレンドではなく、「変化を前提とした開発文化」を実現するための基盤です。
実践を重ねる中で、私はクラウドネイティブ開発における3つの重要な教訓を得ました。
1. 「小さく設計し、大きく育てる」アーキテクチャ思考
クラウドネイティブ開発では、最初から完成を目指さない勇気が必要です。
初期フェーズでは最小限の機能を小さなマイクロサービスとして構築し、利用状況やデータをもとに継続的に最適化していく。
たとえば、私たちの社内プロジェクトでは AWS ECS + Fargate + Aurora Serverless を採用し、スモールスタートから段階的にスケールさせました。
このアプローチにより、初期コストを抑えつつも、ビジネスの変化に合わせて柔軟に拡張できる構造を実現。
「完璧を目指すより、変化に対応できる設計」が結果的に最も安定したシステムを生み出す──これが最初の教訓です。
2. 「自動化は効率化ではなく、品質保証の文化」
CI/CDパイプラインの整備は、クラウドネイティブ開発における基盤そのものです。
私たちは GitHub Actions × Terraform × AWS CodeDeploy を活用し、インフラ構築からデプロイまでを完全自動化。
これにより、ヒューマンエラーを防ぎ、リリースのたびにチーム全体の心理的負担を軽減できました。
しかし、真の価値は「効率化」ではありません。
自動化によって“人の判断”がクリアになり、**「なぜその変更が必要なのか」**を対話できるようになったことです。
つまり、自動化は単なる技術手法ではなく、チームの品質文化を育てる仕組みなのです。
3. 「技術は変化する、だからこそ学びを仕組みに」
クラウドネイティブ技術は進化が速く、3年前のベストプラクティスが今は最適でないこともあります。
そのため、私たちはプロジェクト内に「技術レビューウィーク」を設け、
インフラ構成・セキュリティ設定・運用フローを定期的に棚卸しする体制を構築しました。
この仕組みを通して気づいたのは、“技術力”よりも“学び続ける力”が競争優位になるということ。
クラウドは「環境」ではなく、「常に進化する学習対象」であると認識しています。
終わりに──変化に強い組織をつくるために
クラウドネイティブ開発は、単にインフラを最新化することではありません。
それは、変化を前提とした組織文化を築くことでもあります。
小さく始めて育てる勇気、自動化で品質を守る姿勢、学びを仕組みにする知恵。
この3つの教訓は、これからの技術経営においても変わらない指針になると確信しています。