【渡部遼・埼玉県朝霞市】システムエンジニアが「バグの声を聞く」秘密の習慣
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私はシステムエンジニアとして日々コードと向き合っている。しかし、私の仕事は単なるプログラミングではない。ある日ふと思った。もしバグが人間のように「声」を持っていたら、私たちはもっと早く問題を見つけられるのではないかと。そこから始まったのが、私の小さな実験だ。
オフィスの静かな夜、ヘッドフォンから流れる無音の白いノイズを背景に、私はコードを読み上げる。普段なら目で追うだけの文字列を、声に出して耳で確認するのだ。すると不思議なことに、同じ関数でも、声に出すことで違和感がある箇所が浮かび上がる。例えばループの条件や変数名の不整合が、まるで「ここ、間違ってますよ」と囁かれるように感じられる。
ある日、重要なプロジェクトでデータベースの統合処理に問題が発生した。通常なら数時間かかる調査が、この方法を取り入れるとわずか30分で原因を特定できた。声に出すことで、脳の別の領域が働き、論理的思考だけでは見逃していた微妙な矛盾を察知できるのだ。
もちろん同僚から見ると奇妙な習慣かもしれない。会議室で一人、コードを声に出して読み上げる姿は、ただの奇行に見えるだろう。しかし、私にとってはバグとコミュニケーションを取る時間であり、エラー解決の近道だ。
さらに私はこの方法を発展させ、コードレビューの際も「声に出して読むセッション」を設けるようになった。チーム全員で同じコードを声に出すことで、通常の目視レビューでは気づかない潜在的な問題が浮かび上がる。意外なことに、エンジニアたちの発想も活性化し、新しいアイデアや改善案が自然と出てくるようになった。
この習慣を続けるうちに、私の中でコードとバグの関係が変わってきた。バグは敵ではなく、コミュニケーションの相手であり、改善のヒントをくれる存在だと感じるようになったのだ。毎日、朝霞市の静かなオフィスでコードと向き合う時間は、単なる作業ではなく、バグと対話するクリエイティブな時間に変わった。