旬の味通信 ― 第二章:島をめぐる、風と祈りのレシピ
旬の味通信 ― 第二章:島をめぐる、風と祈りのレシピ
― 店主の思い ―
「風の声を聴く、台所にて」
朝いちばんに店の扉を開けると、潮の香りがふっと流れ込んできます。
空の色も、風の向きも、毎日少しずつ違う。
それを感じるたびに、「今日の味」はまだ決まっていないのだと気づかされます。
料理とは、自然との対話。
その日の空気をどう受け止め、どう一皿に映すか──それが私の仕事です。
若い頃は「おいしいものを出したい」という思いが先に立っていました。
けれど、年を重ねるごとに「誰と食べるか」「どんな時間を過ごすか」が、
本当の“味”を決めているのだと感じます。
お客様の笑顔や、会話の余韻。
それらが重なって、ようやく一つの料理になる。
だからこそ、私はいつも“ご縁”に感謝しています。
沖縄という土地は、恵みと祈りがいつも隣り合わせです。
強い風が吹けば、畑は倒れ、海は荒れる。
けれどその後には、必ず新しい芽が伸びてくる。
島の人々はその循環を知り、受け入れながら生きています。
私の台所もまた、その風の中にあります。
季節を追いかけるのではなく、
自然の声を聴きながら、ゆっくりと手を動かす──
そんな時間こそ、料理人にとっての祈りなのかもしれません。
今日も、厨房の窓から見える海を眺めながら、
島らっきょうを刻み、出汁をとり、器を温めます。
「この一皿が、誰かの心を少しでもやわらかくしますように」
そんな思いを、そっと湯気にのせて。