【前嶋拳人】システムの『成長期』と向き合うということ
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この季節、ふと電車に乗っていると、学生さんたちが大きなカバンを背負い、部活動の練習に向かう姿をよく見かけます。彼らの背中からは、これから始まる試合や、仲間との練習に臨む熱意が伝わってきます。その姿を見ていると、僕が現在関わっているシステムの「成長期」について、ふと考えさせられます。
SIer時代に携わっていた大規模な基幹システムは、いわば「完成された大人」でした。もちろん、法改正や業務要件の変更に合わせて機能を追加することはありましたが、基本的には、決まったルールの中で安定して動くことが求められます。それはまるで、長い歴史を持つ伝統工芸品のように、すでに確立された美しさがあるようでした。
一方、現在、フリーランスとして関わっているスタートアップ企業のWebサービスや新規事業のシステムは、まだ「成長途中の子ども」です。ユーザーからのフィードバックや、市場の変化に合わせて、毎週のように新しい機能が追加され、時には大規模な改修も必要となります。僕たちは、その成長を間近で見守り、サポートするコーチのような存在です。
たとえば、あるECサイトのシステムを構築していたときのこと。当初はシンプルな機能でスタートしたのですが、予想以上の反響があり、機能追加の要望が次々と寄せられました。当初の設計では追いつかなくなり、一時はシステム全体が不安定になることもありました。
この時、僕が心がけたのは「ただ要望に応える」のではなく、「このシステムがどう成長していきたいのか」をクライアントと一緒に考えることでした。まるで、思春期の子どもが進路に悩んでいる時、ただ答えを与えるのではなく、一緒に未来を考えるような感覚です。
どうすれば、このシステムがもっと多くのユーザーに使ってもらえるようになるか? 拡張性を保ちながら、どのように新しい機能を組み込んでいけるか? クライアントのビジネスの未来を想像しながら、技術的な判断や設計を行っていきました。
その結果、システムは安定性を取り戻し、今では当初の想定をはるかに超えるトラフィックにも耐えられるようになりました。そして何より、クライアントのビジネスも順調に成長しています。
この「成長途中のシステム」と向き合う仕事は、決して楽なことばかりではありません。しかし、クライアントのビジネスという「子ども」が、僕たちが提供した技術という「栄養」を吸収して、どんどん大きくなっていく姿を間近で見られることは、何物にも代えがたい喜びです。
これからも、一つ一つのシステムが、その秘めたる可能性を最大限に発揮できるよう、全力でサポートしていきたいと思っています。