商業施設プロジェクト施工監理ノウハウ
商業施設プロジェクト施工監理ノウハウ
基礎・構造監理編
1. 基礎工事の確認ポイント
商業施設における基礎は、建物全体の安定性を支える最も重要な要素です。
特に今回は大開口を伴う計画だったため、以下の点を重点的に確認しました。
- 根切り深さ・位置:設計通りのレベルを確保しているか。
- 地盤改良の状況:支持層にしっかり到達しているかを写真・数値で記録。
- 配筋検査:主筋・補強筋の径・ピッチ、定着長さが図面通りか。かぶり厚さ確保も必須。
- コンクリート打設:スランプ試験・圧縮試験を実施し、打込み時のジャンカ防止にも注意。
👉 教訓:基礎段階での不具合は後の補修が極めて困難。現場で「施工者に任せきりにしない」姿勢が重要。
2. 構造体(鉄骨)の監理ポイント
今回の建物は鉄骨造を採用。商業施設特有の「大空間」「フレキシブルな間取り」を実現するため、鉄骨精度と耐力壁の配置が肝でした。
- 建て入れ精度:柱の鉛直精度をミリ単位で確認。誤差が後のサッシ・仕上げ納まりに直結。
- ボルト・溶接部:本締めのトルク管理、溶接外観検査を必ず実施。
- 耐力壁・ブレース:大開口を確保しつつ耐震性を担保するため、配置のバランスを現場で再確認。
3. 現場での実際の事例
事例:鉄骨柱の建て入れ誤差
施工段階で、柱が数ミリ傾いていることを確認。放置すれば大開口部のサッシ取り付けに支障をきたす可能性がありました。
→ 解決策:初期段階で是正を指示。建て入れ直後に修正できたことで、仕上げ段階への影響を最小化。
学び:構造精度のズレは“早期発見・早期修正”が鉄則。後工程に進むほどコスト・時間ともに手戻りが大きくなる。
4. まとめ
基礎・構造監理において大切なのは、「数値で確認する」姿勢と**「現場での即時判断」**です。
設計図は理想を示しますが、実際の現場では微細な誤差が積み重なり、最終的な空間の質に直結します。
監理者は「設計意図を守る番人」であると同時に、「現場と設計をつなぐ通訳者」でもある。
基礎・構造段階での一つひとつの判断が、完成後の建物の信頼性を決定づけると感じています。